最初からうまくいく夫婦なんていない。時にはぶつかって、仲直りして、いつの間にか二人の間にルールができて、気がつけば10年。これからも手をつないで、一緒に歩いていくために。
結婚10年目を迎えた、フラワースタイリスト平井かずみさんに、夫婦のルールについてインタビュー!そこには二人の愛と知恵がたくさん詰まっていました。
撮影/露木聡子 取材・原文/石川敦子
※この記事は2016年12月7日発売LEE1月号の再掲載です。
夫婦それぞれが楽しければ、一緒にいても楽しい。「今」が楽しければ、きっと来年も一緒にいると思います
―― 会社の先輩と25歳で結婚、専業主婦に。それから20年。夫婦の形は思ってもみなかった方向に変化していきました。夫が稼ぎ頭だった時代。平井さんの花の仕事が発展していった時代。夫が会社を辞め、平井さんが家計を支えた時代も。
「泣きながら『もっと働いてもいいですか?』と夫に許可を求めていた頃もありましたし、家事がちゃんとできなくて『ごめんね~、ごめんね~』ばかり言っていたことも。
でも『ごめんね』が口グセになってしまうと、言うほうは罪悪感で萎縮してしまうし、言われるほうも実は居心地がよくない。それに気づいてからは『お茶碗洗わせちゃってごめんね』ではなく『洗ってくれてありがとう!』に言い換えるようにしました」
―― そして二人で「café イカニカ」をオープンしたのが’09年。
「二人とも慣れないことだらけ。よくケンカになりました。
私はイカニカで花の教室をしていますが、カフェは基本的に彼の運営。でも最初は私も店に立っていたので、もっとこうしたらいいんじゃないか、ああしたらどうだろう、と探るような目で見ていたんです。緊張でピリピリしていましたね。
口だけあれこれ提案するけど、実際にやるのは彼。彼にしてみれば、『そんなにいろいろ言われても、できないよ』と。そこでいろいろぶつかって……険悪な状態になったこともありました。
そのとき、自分にもっとできることはなかったかな、と考えたんです。
夫につらくあたられるとしんどい。優しくしてくれたらいいのに、と思う。でもそれなら自分がもっと優しくしよう、と。
わざと大げさに『行ってらっしゃ~い!』と挨拶したり、“あなたのこと、気にかけてますよ”という気持ちを伝えるために、ささいなことでも話しかけたり。
そうしたら、不思議ですね。優しい“フリ”をしているうちに、ちゃんと本当に優しくなれたんです。夫の態度も変わりました。相手のせいにしていても、何も変わらない。結局、自分の対処ひとつなんですね」
すべてを共有しないからこそ二人とも居心地よくいられる
―― 夫婦の危機を乗り越えて、「もうカフェのことに口を出すのはやめよう」と決めた平井さん。
「それを“あきらめる”ととらえれば苦しいけど、彼はこのカフェをどんなふうにしたいんだろう、と“思いやる”なら優しい気持ちになれる。
夫婦って、つい相手に期待しちゃうんですよね。身内だからこそ、『もっとこうすればいいのに』と言いたくなることもある。
でも、それって勝手ですよね。余計なお世話ですよね。ここは彼の店。彼にまかせればいいんだな。彼の好きなようにしてもらおう、と。自分の思いを手放したらすっごく楽になって、急にイカニカが居心地のいい場所に変わりました。
今は、夫婦といえどもすべてを共有しようとは思っていません。それぞれやりたいことを持って、自分の責任で『各自楽しく!』が、一番の基本になっています。個々が楽しければ、二人でいても楽しい。今が楽しければ、きっと来年も一緒にいるだろう、と思っています」
夫の康二さんからのコメント
「ごめんね」と言われると「謝る前にやれよ」と言いたくなるけど「ありがとう」だと物事がスムーズに流れる感じがします。
夫婦は探り合い(笑)。でも私利私欲のためではなく、二人の関係をプラスに転じるために、相手がどう思っているのか探る。
それが"思いやる"という言葉になるのかもしれません。
★かずみさん&康二さん<夫婦のルール>
1 | 各自楽しく! 個々が楽しければ 一緒にいても楽しい。 |
2 | 「ごめんなさい」は多用しない。 「ありがとう」に言い換える。 |
平井かずみさん
’71年生まれ。ikanika主宰。
自由が丘の「café イカニカ」を拠点に「花の会」や「リース教室」を開催。全国で出張ワークショップも行う。
"イカニカ"とは、古語で「如何にか(いかがですか?)」。一歩引いた気持ちで素敵なものをおすすめしたいという思いから命名。