がんと暮らす

腫瘍内科医に聞く【がん最新事情】抗がん剤、標準治療、正しい情報収集の仕方

LEE編集部

日本人の2人に1人ががんになる時代。

治療法などは大きく変わっていると言いますが、「一般的ながんの情報は数十年前からアップデートされていない」と話すのは、がん専門医の勝俣範之さん。

抗がん剤の現状や、正しいがん情報の集め方についてなど、お話をうかがいました!

この記事は2020年7月7日発売LEE8月号の再掲載です。


専門医に教えてもらいました
今知っておきたい「がん」にまつわる最新事情

教えてくれたのは・・・
日本医科大学武蔵小杉病院 腫瘍内科教授 勝俣範之さん

日本医科大学武蔵小杉病院 腫瘍内科教授 勝俣範之さん

腫瘍内科医としてがん患者の治療、悩みの相談に乗る。日本の抗がん剤治療の第一人者。共著『世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療』(ダイヤモンド社)では、科学的根拠に基づいた効果のあるがんの標準治療法を紹介。

2020がんの最新事情 01
今は、がん=死ではない!手術・抗がん剤・放射線治療。がんと共存する時代に

がんは怖いもので、ステージⅣ=末期がんで死の目前……という認識は時代遅れ。がん治療は数十年前よりもかなり進歩していて、ステージⅣの診断後でも10年、20年と生きる方がたくさんいます。

がんは根治はしませんが、もはや生か死かの二者択一ではない。がんの標準治療と呼ばれるのが、手術・抗がん剤・放射線治療。

この保険適用される標準治療を、がんの種類やステージによって着実に行うことで、がんと共存できる時代になっているのです。

2020がんの最新事情 02
がんの専門医である“腫瘍内科医”の必要性とは?

抗がん剤の専門家で、がんを総合的に診断、治療するのが「腫瘍内科医」。手術を行う外科医ががん専門医だと思われがちですが、腫瘍内科医は、抗がん剤に詳しいことはもちろん、抗がん剤の副作用を軽減するための緩和ケアの知識も豊富。内科医としてがんを包括的に診ることができます。

海外に比べると、日本には腫瘍内科医が非常に少なく、現在は全国に1330人。病院に腫瘍内科医がおらず、手術を行った外科医がそのまま担当医として抗がん剤を処方していることも多いのが現状です。

日本のすべてのがん患者に腫瘍内科医が抗がん剤を処方するとなると、5000人は必要とも言われているので、今後さらに増えていくことが期待されます。

ただ、万が一がんと診断されて、かかった病院に腫瘍内科医がいなくても、あらかじめリサーチをしておいて、セカンドオピニオンを取ることも可能。ぜひ腫瘍内科医という存在を知っておいてほしいと思います。

2020がんの最新事情 03
仕事をしながらでも治療できる?「抗がん剤」最新事情

全身に薬を巡らせてがんの治療を行う「抗がん剤」。副作用が強い、効果が疑問視されるなど誤解が多い抗がん剤ですが、現在150以上の種類があり、新しいものも開発されこれまでできなかったがんへの治療も可能になっています。

抗がん剤を投与するために入院することも多いのですが、だんだんと通院で仕事をしながら続けられるように。

抗がん剤は免疫力を下げるので生ものを食べるのはNGと言われていましたがこれも誤解。治療中に何を食べてもいいし、旅行に行っても大丈夫。仕事や普通の生活をしながら治療ができるようになっています。

2020がんの最新事情 04
つらい抗がん剤の副作用…痛みを軽減するさまざまな対処法が

個人差はあるものの吐き気、脱毛、免疫力の低下などつらいと言われる抗がん剤の副作用。最近では副作用を抑える薬も増えています。

腫瘍内科医が、抗がん剤と一緒に副作用に効く薬も処方する支持療法が一般的に。痛みを我慢してこそ効果があると思いこんでいる人もいますが、副作用を抑えても抗がん剤の効果がなくなることはないので我慢しないでほしい。副作用の状況についても隠さず、できるだけ主治医に相談を。

ステージⅣで全身に遠隔転移のある患者さんでも、20年以上抗がん剤と副作用とうまく付き合いながら仕事を続けて、がんと共存しているケースもあります。

2020がんの最新事情 05
ドラッグラグが以前よりも改善。海外との違いについて

日本では海外と比べて、腫瘍内科医が少ないことは大きな問題。欧米諸国では外科医が抗がん剤を処方することはほとんどないので、今後の課題です。

また、日本はこれまで、薬の認可に時間がかかりすぎて、海外で承認された薬がなかなか使えない“ドラッグラグ”と呼ばれる期間が長かったんです。日本の製薬会社は優秀で、日本で開発されたにもかかわらず、先に海外で承認されるなんてことも。これは、厚生労働省の薬の認可機関に医師を増やすなどして対応してきました。

現在は海外とのドラッグラグは1年以内に短縮され、ほぼ解消されています。

2020がんの最新事情 06
日本人の2人に1人ががんに。がんになっても慌てないためには?

誰でもがんだと診断されれば動揺します。「何とか治したい」と考える人は多いのですが、「がんと共存を目指していく」という考え方が大切です。

つまり「がんとうまく付き合っていく」と考えてほしいと、患者さんにはいつもお伝えしています。そのうえで、がんと診断されても慌てないためには正しい情報を知ることです。これに尽きます。

標準治療の重要性などを知らずに「何でもいいからやってみよう」という状態はとても危ない。あやしい民間療法に手を出しかねません。

3つの「あ」を心がけて

勝俣さんががん患者に話す治療に大切な3つの「あ」。冷静な判断のためにも、この3 つの「あ」を心得ておきたい。

2020がんの最新事情 07
根拠のない民間療法も多数!正しいがん情報の集め方

がん治療には、民間療法、自由診療などとうたった数多くの治療法が存在します。その多くがエビデンスがなく、自費診療。なぜか自費診療は、最新の治療でまだ認可が下りていないものというイメージがあるようですがこれは間違い。

また、先進医療も誤解が多く、研究的な治療で、治験が進まないので政府が認めた機関のみで行っていい自費の診療のこと。特別に最先端の医療ではないことも多いので注意を。

厳しい審査で保険承認された、標準治療が最良だと肝に銘じてください。

国立がん研究センター がん情報サービス

https://ganjoho.jp/public/index.html
日本のがん専門政府機関である国立がん研究センターが運営するサイト。がんの種類などの基礎知識のほか病院の紹介も。

NPO法人キャンサーネットジャパン

https://www.cancernet.jp/
がん患者、および医療従事者に対してのがん医療情報サイト。信頼できるがん情報が掲載されるほか、がんを学ぶ講座も開催。


イラストレーション/二階堂ちはる 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
この記事は2020年7月7日発売LEE8月号『がんと暮らす』の再掲載です。

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