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峰典子

漁師を助け、子どもには学びを。MORIUMIUSの食のオンラインプログラムを初体験!

  • 峰典子

2020.05.23

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ワクワクがとまらない!
オンラインで子どもと学ぶ、お魚レッスン

ここ数ヶ月、オンライン会議やオンライン飲み会に参加している方も多いのではないでしょうか。この状況下でも大切な人と顔を見て話せる瞬間は、ほっと安心する時でもありますよね。このテクノロジー、子どもにも使わない手はありません。今回わたしが体験したのは、宮城県にあるこどもの複合体験施設「MORIUMIUS(モリウミアス)」の開催している食プログラムです。

宮城県雄勝町(おがつちょう)は、東日本大震災によって町の8割が壊滅。約4,300人が暮らしていたという町の人口は、震災後1,000人ほどにまで減少しました。そんな中、モリウミアスの立ち上げメンバーがボランティアとして訪れるうちに縁が深まり移住。取り残されていた築94年の木造校舎と出会い、のべ5,000人に及ぶボランティアの尽力により、子どもに向けた学び場に再生されたのです。

ボランティアの一人には、建築家の隈研吾さんも。

子どもに新しい学びの場を。
宮城県から世界に、食を発信する

オープンから5年、毎年約1,500人の家族が滞在しているというモリウミアス。国立公園の一部というぜいたくな自然環境のなか、畑で育てた野菜や漁師と一緒に水揚げした魚介をこども達は自分たちで調理。魚を捌いたり、森で間伐した木材で火を起こし、ご飯を炊いたりと、豊かな食とたくましい暮らしの体験ができる場所なんです。

そんなモリウミアスですが、学校など団体の予約が相次いでキャンセルに。また、地元の漁師にも影響が出てきているといいます。こども達の学びの機会が失われてきていることも懸念して、クラウドファンディングに挑戦、2つの実現を目指しています。

1:モリウミアスが提供している学びを、オンライン上で子どもたちに実施すること。

2:販路の減少に苦しむ地元雄勝の漁師さんの新鮮な食材を届けること。

※2020年5月20日の時点で、4,532,500円を達成

雄勝町は波が静か、かつ水温が生育に適していることから、銀ザケの養殖が盛ん。

スーパーには並ばない、半身の銀サケが届いた

わたしが申し込んだのは、「雄勝産銀サケ半身」をみんなで調理しよう!というプログラム。ダイナミックな生ワカメやタコもあり、とても悩みましたが、そんな間にもどんどんと空席が少なくなり‥、最後は子ども自身に選んでもらいました。

雄勝湾で養殖している新鮮で脂の乗った生食用の銀ザケ。普段食べるサケとは少し違う魚に触れて、半身を捌いて極上のお刺身に。残りはモリウミアスで提供している手作りサケフレークのレシピもお教えしいたします。料理まで仕上げる美味しい2時間。

うーん、到着が待ち遠しい!

申し込み後にもらうメールには、注意事項と本番までに用意しておくことが書かれていました。プログラム毎に異なるのですが、わたしの場合には、銀サケを冷蔵庫で解凍しておくこと、ご飯を炊いておくこと、指定の調味料を用意しておくことなど(塩コショウや醤油・みりんなど定番のもの)。それから、気になる一文が。おこさまが主体的に調理に参加できるようアシストしてまいります。保護者のみなさまには、おこさまのご様子をあたたかくお見守りいただきながら、スタッフからサポートをお願いした際にはお力をお貸しいただけますと幸いです。これは、できそうでなかなかできないところ‥。料理を一緒にする時、ついつい手を出してしまうので、今回こそはじっと見守りたいと決意を新たにしました。

ジャジャーン! オンラインプログラム本番の前日に届きました! ざっと40cmはありそう!



いざ本番!準備も調味料もシンプルでした

いよいよ本番。調味料を並べ、ご飯を炊き、テーブルには iPadとまな板、包丁を用意しました。指定されたオンラインアプリを起動させると、スタッフのお二人がすでに待機してくれています。時間ぴったりにスタートし、まずは参加者全員で簡単な自己紹介。ほぼ全員が小学生でしたが、学年・性別にはバラつきがあり、兄弟姉妹での参加やこれで二回目だというご家族もいらっしゃいました。

モリウミアスがある雄勝の場所をGoogleearthで見てみたり、リアルタイムで施設案内をしてもらって、気分をぐーんと盛り上げてから、いよいよ銀シャケの調理に取り掛かります。

手元カメラで丁寧に教えてくれるから、とってもわかりやすい!

自分でつくる「自由」だから面白い

先生の手元カメラを見ながら、順番に銀サケを切っていきます。最初にカマ、骨の切り落とし、ハラミ、皮ひき、そしてお刺身と切り身。ひとつの手順ごとに、全員が終わるまでしっかり待ってくれるので、慌てて作業しなくてもよく、安心して取り組めました(急ぐと怪我が心配ですよね!)。プログラムの後半になると、大人は魚焼きグリルでカマを焼いたり、切り身に塩コショウ薄力粉をまぶしフライパンで焼いたり。醤油を小皿に注いだり。サポートに徹しつつ、バタバタと食卓の準備を整えていきます。そして、参加者全員で「いただきます!」なんとか無事に完成させることができました!

「雄勝産銀サケ半身」をみんなで調理しよう!メニュー

・お刺身
・ハラミ焼き
・カマ焼き
・切り身のバターソテー
・幽庵焼き(タレにつけて翌日焼く)

最初の工程、カマを切り落とす瞬間!

厚さにバラつきはありますが、なんとか切り身が完成・・・

やや独特な並べ方ですが、ここはひとつ最後まで任せることに。

みんな、好きなお皿に盛り付けてみよう!ということで、こんな感じになりました。

家庭で自然を感じてもらう新しいきっかけに

いただきます!と同時に、お刺身を吸い込むように食べていく我が子。ちらっとライブカメラを見てみると、どの家族も夢中になっていて微笑ましかったです。そして、ものの10分もしないうちに全メニュー+白ご飯を完食!「モリウミアスって面白い! 行ってみたい! 泊まってみたい! 」という歓声が上がりました。

わたしとしても、こんな素敵なモリウミアスの取り組みについてもっと知りたい、と、イベント参加後にメールインタビューさせていただくことに。リアルな場で学ぶことがコンセプトのモリウミアスですが、オンラインへの取り組みで、今までと違う子どもへの向き合い方が生まれているといいます。

「リアルな場で体感して学びとなっていたものがオンラインになることで、家でも感じ学ぶ機会となっています。モリウミアスへの滞在だけでなく、日常の家庭や学校での時間の中で、どう自然とのつながりやサステナブルな生き方を感じてもらうか? ということは、コロナ以前からの課題として捉えていました。今回オンラインで学びを届けることで、新しいきっかけとなりましたし、こどもが主体のプログラムだからこそ、普段とは違った親子の協同や、子どもへの向き合い方が生まれているとも感じています。」(公益社団法人MORIUMIUS 理事 油井元太郎さん)

滞在している子どもたち、キラキラした目が印象的なんです。

出かけることが難しい今でも、できることがある

「オンラインで学びを届けるという手法にも、手応えを感じています。在宅で学びの機会が減り、親子でストレスを感じる機会もありますよね。自然が豊かな場所に出向くことも難しいなか、場所や距離を超えてつながりをつくることができます。また、親子のコミュニケーションが深まったり、食を入り口に様々なテーマを探求するきっかけにもなってゆくと感じています。何気ない、でも日々食事をする環境が家庭にあるからこそ親子で感じることは大きいと思います。」

バーチャルでありながら、鮭のにおい、感触、味、モリウミアスの雰囲気…など五感が刺激される内容だった。

普段なら出来ることが出来ない不安な毎日が続く中「美味しく楽しく食べる」という何気ないけど大切な営みの共有が、子供にとっても大人にとっても、とても幸せな時間でした。

食べ物が育った環境に自分の目で見て、それを自分が調理して頂くということは子供はもちろん大人もなかなか出来ない貴重な体験だと思います。

モリウミアスの循環型の暮らしや、雄勝の話など、子供たちの興味をひく話題も話して頂き、ただ料理を作るだけのプログラムではないのが良かったです。

初めはオンラインプログラムって何?と怪訝がっていた子供達でしたが、どんどん引き込まれていくのがわかりました。休校で時間があるため最近料理を覚えさせているところでしたので、とても良いタイミングで、産地直送の美味しさ、楽しさを理解できたと思います。

これらは、今回のオンラインプログラムの参加者が、アンケートに記載されていたという回答を少しだけ拝借させていただきました。どのご自宅でも楽しまれている様子が伝わってきますよね。

オンラインプログラムは6月中旬まで

今回のオンラインプログラムは6月中旬までですが、今後もオンラインを活用した企画を検討しているそうです。気になる方はぜひチェックを。わたしは、遠出ができるようになったら現地に遊びにいきたいと考えています。

「地域とこどもを結び、豊かな学びを届ける機会をつくろうと思います。それがモリウミアスに足を運び、学びを深め、地域とのつながりを育む機会になると感じています。いつも毎日食べている食べ物がどこで、だれによって、どうつくられているか・とられているか? を考えるだけでなく、やってみることができるので、食べるのが好き、料理が好き、自然が好き、魚が好きな人はぜひ参加してください。」

モリウミアス公式サイトはこちらから
オンラインプログラム他、クラウドファンディングはこちらから

 

峰典子 Noriko Mine

ライター/コピーライター

1984年、神奈川県生まれ。映画や音楽レビュー、企業のブランディングなどを手がける。子どもとの休日は、書店か映画館のインドアコースが定番。フードユニットrakkoとしての活動も。夫、5歳の息子との3人家族。

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