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新型コロナ緊急特集

【コロナショックから学ぶ】地域や社会との関わりを、身近なリーダー・ママ区議に教えてもらいました

  • 飯田りえ

2020.05.21

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グラフィックレコーディング 湯朝かりん

39県で緊急事態宣言が解除されましたが、以前東京都や大阪府の大都市圏や北海道では以前、制限が続いています。
ウィルスとの新たな共存生活へ向けて、生活の仕方や物ごとの価値観が大きく変わりつつあります。そして社会との向き合い方も変えていかないといけない、今回のコロナショックでそう感じた方も多いのではないでしょうか?

顕著だったのが「住む地域や所属する学校によって、こんなにも対応が異なるのか」ということ。地域に至っては若い首長がリーダーシップを発揮し、市民に対して情報開示や、将来どうありたいかを見据えた上での危機管理を見聞きしていると、地方自治体と市民・区民との信頼関係ってものすごく大事ですよね。これだけ急速にリモートワークが進み、教育もオンラインで可能なのであれば、自分の信頼できる地方自治体や地域を選んで住む、という選択肢も確実に増えてくるだろうな、と思っています。

子育て世代の声は、誰が届けてくれているのか

しかし、これまでの自分はと言うと、政治や社会は遠い存在。選挙へは行くけれども、その時以外は「誰かが何かをやってくれている」ぐらいの”人ごと”市民でした。全ては自分たちの生活に地続きなはずなのですが、政治と聞くだけで「面倒くさそう…」と避けてしまいがち。でも、今回のような未曾有の事態では、ダイレクトに影響が跳ね返って来ます。休校要請があった時に、一番肌身で感じました。あまりにも突然すぎる休校、子どもたち、働く親たちの状況を、子どもたちの状況を把握できている人が誰かいたのだろうか…。

苛立ちや、諦めを抱きつつ「どこにこの思いを伝えれば?」悶々としていた中、ニュースメディアを通じて知り合った母たちが立ち上げた「母親アップデートコミュニティ(HUC)」主催でオンラインイベントがあるとのこと。同じ母親という立場でありながら、東京都の区議会議員をしているお二方を囲んで、「コロナをきっかけに地域との関わり方を見直そう」という企画。なるほど。区議というのは一番、身近なリーダーであり、同じ母親であるなら入りやすい…と言うことで、参加してみました。

板橋区議会議員●南雲由子さん(写真左)
文化芸術によるまちづくりと空き家活用を実践。3歳児子育て中。2015 年初当選、無所属。現在2期目。子どもの貧困対策調査特別委員会 副委員長、都市建設委員会・区民環境委員会 副委員長などを歴任。

渋谷区議会議員●神薗まちこさん(写真右)
昨年の統一地方選で区議会議員に当選、現在1期目。元ベネッセコーポレーション。「渋谷papamamaマルシェ」実行委員を企画運営、「渋谷をつなげる30人」の4期メンバー、拡張家族Ciftのメンバー、小学2年生の娘の母でもある。

*各対応策などは内容はイベントが開催された4月12日時点のもととなっています。

どうして区議に?区議ってどんな立場ですか?

本題に入る前にまず、どうして区議という地域政治の世界に入られたのでしょう。

渋谷区議・神薗まちこさん●前職のベネッセでは、「子ども達の未来をどう作っていくのか」を考えていました。学校を通じて中高生の支援をしていましたが、やればやるほど「0歳〜10歳の子ども達の土台がどれだけ重要か」という事に気がつきました。土台作りは、変化の激しい社会の中で、家庭・学校(保育園等も)・行政・地域・民間企業などの持っている力をすべて合わせていかないと難しいと感じています。区議は、様々な立場の人たちをつなげることが出来る役割だと思い、キャリアチェンジをしました。

板橋区議・南雲由子さん●元々はまちづくりの一環として、地域の方と作品を作るアーティスト活動していました。政治家のチラシのデザインなども手がけるようになり、ある日ものすごく巨大な何かに腹を立てている自分に気がつきました。そこで「選挙に出よう!」と出馬。当選後は「投票率を上げたい」「政治をわかりやすく伝えたい」との思いから、政策のチラシは気合を入れて作るよう心がけています。区議としての仕事は正しく税金を使っているかを、子育て中の区民代表として自分目線でチェックすること。区が会社なら、区長=社長、区議=外部取締役のような立場です。

区議という仕事は…ワーママとして働きやすいですか?

なかなかイメージがつかない区議という仕事ですが、ワーキングマザーとして働きやすい環境なのでしょうか?

神薗さん●議会が開会しているときは絶対に休めませんが、企業時代と比べても仕事のできる1/3の時間はフリーなので、自由度は確実に増しました。コロナ後も在宅で仕事ができ、街づくりもクリエイティブにできています。一方で、祭りやイベントで地域の人との交流が多いので、土日拘束されることが多くなります。家族の時間が作れず夫からクレームが…(苦笑)・

南雲さん●デザイン業界から、全くわからない世界に突然入ってしまったので、議員1年目は行政の人たちの話す言葉が聞き取れず苦労しました。何よりも驚いたのが、議会そのものが人口比率と比例していない事。そして、世の中より30年は遅れている印象である事。とにかく、今の私の役割は”子育て世代の声を届ける”ことだと思っていて、今回のコロナ対策でも「そこじゃないんだよ!」って思う部分がみなさんたくさんあると思います。子育てしている女性の議員が圧倒的に少ないので、その違和感を伝える人が足りていないのです。仕事自体は家の周りで活動するので子どもに何かあってもすぐ動け、とても働きやすい仕事かと思います。



コロナショック後、区民からは実際にどんな声が?

それでは本題へ。「自治体によってこんなにも対応が違うのか」と言うのが、最も肌身で感じられました。実際に、お二方の元にはどんな声が届いているのでしょうか?

神薗さん●緊急事態宣言前後で全然状況が違いますが、緊急事態宣言前は、学校が突然お休みになることで「学習をどうするのか」「子どもたちの遊び場をどうするのか」と言う声が多く届きました。あと、卒業式に親が出席できないことになっていましたが、区長や教育長、私たちにも声が届いていたので、十分な条件を整えた状態で「保護者一人だけ可能」と区長が政治判断でOKを出してくれました。また、渋谷区はICTタブレットを使って「学びを止めない」を目標にしていますが、実際は学校間格差が大きいです。

南雲さん●コロナ対策においては、区民の人からの声が普段の2〜3倍届いています。最初は休校にまつわる意見が多かったですが、3月末ぐらいからひとり親や離婚前の人からの相談が多くなっています。立場が弱い順に苦しくなってきているのだと思います。家に居場所のない子どもたちに対しても動いていきたいと思います。

23区内でも対応が異なるのはどうして?

休校要請の時、23区内でも方針や対策がバラバラで、卒業式や入学式も地域学校によって異なりました。(それ故、不要な対立を生んでしまったケースも。)都内で統一させるのは難しいのでしょうか?

神薗さん●都は要請できますが、認可保育園や区立小中学校の運営する権限は市区町村にあります。今回そこが難しいところで、首長の差配によって対応が変わりました。それをどう捉えるか、だと思います。

私たち、基礎自治体は権限を持っているものに関しては「自分たちが責任を持って運営するんだ」「区民の生活を守るんだ」と言う気概でやっています。注目されていた千葉市の熊谷市長も「科学的根拠を踏まえ。自治体で責任を持って判断する」と行動されていましたよね。ですので、国や都の決めたことに対して、一斉にやったほうがいいこともあるし、自分たちが判断すべきこと、カバーするべきことはしっかり判断して対応できることが、基礎自治体の首長には求められます。そう言う意味では首長に誰を選ぶか」と言うことが最も大事です。こう言う非常時にリーダーシップを発揮できるかどうかってすごく問われますから。

南雲さん●区役所の人たちや教育委員会の人たちも相当頑張っています。普段だったら個々で言うのですが、今それをすると区役所が止まってしまうので、区議会でメールを集約し、具体的に「こうしてください」と冷静にそれぞれの役所に伝える、という災害時と同じ方法を取っています。また、先進的な首長がいるところは積極的・前向きに動くことができますが、そうではない自治体では現場もパニックしています…。全国的に見ても、そう言う自治体がほとんどじゃないかな、と思っています。

緊急事態宣言後、保育園の対応は?

緊急事態宣言があって、保育園は閉園しているところもありますし、登園自粛の園もある。これもまたジレンマなのですが…

神薗さん●渋谷区では「決まった保育園だけで対応する」というスキームが、発信の翌日から動いたのには驚きました。調整が必要になりますから、利用したい人に申請してもらわなくてはならない。その為に、一刻も早く判断を出さないといけない、との判断で動いていたのだと思います。考え方としては人命が第一。最初は6園でしたが、今は3密を防ぐためにも8園(4月12日現在)に広げ柔軟に対応してくれています。

南雲さん●板橋区は「登園自粛を要請」しています。働いているお母さんからは「保育園は空いているけれど、子どもを行かせるかを迷っている」親として働き方を迷う声が多く寄せられました。もちろん、親としては葛藤があるし苦しいのはよくわかりますが、それはそれでお母さんたちが判断していいのではないか、と思っています。入学式も同様で「行かない選択もあっていいと思います」と答えていました。行政が決めるところと、保護者が決めないといけないところは、難しいですが両方あった方が良いと思います。

現在の行政や議会の動きは?

もちろん議会や委員会、区役所自体の働き方は変化しているのでしょうか。

神薗さん●行政も窓口を一本化し、在宅ワークを推進し通常の6割削減で動いています。緊急事態宣言が出たことにより、対策本部が非常時として改めて設定されました。議会事務局も対策支援本部が設置され、34人議員の声を集め、議長を通じて対策本部に伝えるという、緊急時対応になっています。

南雲さん●板橋区が感染症の対策本部を1月末に立てていたのは早かったと思います。しかし、緊急事態宣言直後も区役所の職員3600人が普通に区役所で仕事している事に驚愕してメールで抗議し、改善されました。飲食店は3月から営業できずにいますし、子ども達も長い間休校になり負荷がかかっているのに。テレワークと言いながら、行政ができていないなんて。

子どもの居場所や虐待についての対策は?

外出しないことで世界的にも報告されているDV被害と児童虐待について。それぞれの区ではどのような対応が取られているのでしょうか。

南雲さん●板橋区は、子ども自身からの相談は「こどもなんでも相談」で早期にチェックしていました。3月の休校要請の時点でも子どもからの連絡がありました。個別にきた相談に関しては福祉事務所・児童相談所へ行き、専門の相談員につなげている状況です。「オンライン対応はできないのか」と言うお声も頂きますが、区役所への相談は、基本的に電話です。

神薗さん●小中学校は家庭から健康に関するアンケートをとっています。連絡がない家庭に関しては学校から対応してもらっています。
保育園などでは要配慮家庭などを、子ども家庭支援センターが確認する形に。ただ、板橋区のような子どもが直接相談できる場がなくまだ手薄なので、今後声を上げていくつもりです。

区民から行政に声を上げる時はどうすればいい?

「ちょっとここがおかしくない…?」と思ったことがあったとしても、私たち区民は誰に、何を、どう声をあげればいいのでしょうか。

南雲さん●区民が伝える、正式な文章としては陳情書があります。ただ、一般の方が行政に対して「これは変だ」と思っても何をどこからどうすればいいのかわからないし、陳情書の書き方もわからない。そういう時は区議会議員に連絡して、一緒に作戦を立てるのが良いですね。コロナではありませんが、区立保育園が2年先に閉園になる急に決まり、異議を唱える父母の会が陳情を出した例もあります。閉園自体は取り消せませんでしたが、父母としての希望はいくつか通してもらいました。

神薗さん●私の場合は、陳情が当事者としての動きに変わった事例です。以前、数人のお母さんたちから「子ども達の遊び場がない!」と相談がありました。一度会って色々話しを聞くと、いきなり土地を用意して公園を作るのは難しいので「どこでも運動場」という渋谷区がサポートしている企画を紹介し「みんなでやってみよう」と動き出しました。その後も、「学校の校庭が使えないか?」とPTAに働きかけ、問題の当事者として行動していらっしゃいます。
地域のことは行政だけがやるのではなく、住民みんなで知恵を出し合い、行政がサポートして行く形で関わることで、生活の様々な事が変わっていくんだよ、と言う良い事例です。その時に参加してくれたママが「どこでも運動場」の企画が終わった後、「これまで私たちは、文句を言うだけの『消費者ママ』でした。今日『当事者ママ』になれました」と言ってくださったのが印象的でした。

自分が住んでいる地域の議員さんを誰も知りません!

そもそも自分の住んでいる地域に知っている区議さん・市議さんを知らない…。みなさん、どうやって知り合えるのでしょう。

神薗さん●まずは自分の住んでいるエリアの議員のSNSを検索してフォローしましょう。SNSのツールもTwitterやFacebook、Instagramやブログなど…いろいろあって、満遍なくできている議員もいますが「1個しかやっていません」みたいな人もいます。まずは自分の属性と近い人のTwitter、FaceBookを見てみるといいですよ。最近、ママ議員はインスタ使用率も増えているので、人によってツールが違うことを意識して見つけてください。

南雲さん●私だったら比較的話を聞いてくれそうな、そして考え方や政党が違う議員さんを3人ぐらいフォローします。後、議員同士の横つながりもあるので、今日、出ている二人のどちらかにDMもらえればいいですよ!

生活と地域政治がこんなにも身近なところにあったなんて。なんとも濃密、かつ、あっという間の2時間でした。区議さんという仕事・立場や関係性もわかりましたし、このコロナの件で行政の中で起こっていることが非常によく伝わりました。身近な生活の困ったこと・疑問に思ったことは気軽に区議さんに相談して良いのですね。(しかもインスタのDMなどからバンバン相談して良いそうです!)自分が知らないだけで勝手にハードルを上げていた事が、よくわかりました。何よりも子育て世代の声を届けてくれる、貴重な存在のお二方と繋がることがまず第一歩ですね。

無関心ではもう立ち回らない状況がきています。今後、自分も当事者として動けるように、常に地域や行政からの情報はキャッチしていきたいと思います。皆さんも、まずは、ご自身の地域の区議・市議・都議・県議さんはSNSフォローしてみてください。まずはそこから。グッと近くなりますから。

神薗さんFaceBookリンクHPリンク

南雲さんFaceBookリンク HPリンク

飯田りえ Rie Iida

ライター

1978年、兵庫県生まれ。女性誌&MOOK編集者を経て上京後、フリーランスに。雑誌・WEBなどで子育てや教育、食や旅などのテーマを中心に編執筆を手がける。「幼少期はとことん家族で遊ぶ!」を信条に、夫とボーイズ2人とアクティブに過ごす日々。

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