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飯田りえ

コロナ関連情報満載「おうちチャンネル」【#StayAtHome】

  • 飯田りえ

2020.04.17

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家族全員での、おこもり生活が始まって早3週間(休校要請があってからはもう2ヶ月)。これまでいかに工夫して「子どもたちにとって充実した時間にするか」を考えて過ごしてきました。ジョギングしたり、ミシンをしたり、一緒にボードゲームをしたり、オンライン授業をあれこれ試したり…(前回記事参照)。もちろん楽しかったのですが、正直言って心身ともに疲れてきました。

いつまで続くのかわからない不安の中、家族みんなが(少しずつストレスを抱えながら)四六時中家にいる。仕事も家事もある。勉強も見なくてはならない。様々な不安も入り混じって、爆発しそうになった私は、外に飛び出し家の周りの雑草を無心で抜いていたことも…(苦笑)。

要は、最初に気負いすぎて疲れちゃったんですね。

おうちチャンネルってどんなメディア?

長期戦になるのだから、方法を変えなければもたない。そう思い始めた矢先に、SNSを通じて「おうちチャンネル」というメディアが開設されたことを知りました。

「こどもと学ぶ、おうちチャンネル」は、新型コロナ感染症の影響を受けながらこどもに向き合う人たちが少しでもラクになるように、多様な視点からお役立ち情報を掲載していきます。

ん?ラクに?そこでハッとしたのです。

そっか、私に今必要なのは、気負わずもっとラクに考えることなのでは?!

サイトを開いてみると、まずは「オンライン学習のためのお役立ちサイト集」。未就学児〜高校生(はたまた親向けも!)までが年齢別、用途別に紹介してあるので、この中からわが子に必要そうなリンクを探せば良い仕組みに。しかも学年別というのが兄弟のいる家庭には嬉しい限りです。あとNOTEを開いてみると、チャイムの音と同時に始まる音声コンテンツがほぼ毎日更新中。今、親たちが抱えている不安なこと、知りたいことを、専門家にインタビューして届けています。「どうしてイライラしちゃう?家族とのやりとり」「本当に運動不足なの?」など素朴な疑問や身近な内容ばかり。10分ほどの放送なので、メールをしながら、料理をしながら…ながらで聞けるラフさもあって、すっかりハマってしまいました。

この絶妙すぎるタイミングでこのメディアを開設されたのは川辺洋平さん。2014年【こども哲学・おとな哲学アーダコーダ】を立ち上げ、昨年、代表を交代されてからは早稲田大学の博士課程で教育学を学ばれています。どうしてこの「おうちチャンネル」を立ち上げたのか、オンラインで取材をお願いしました。

川辺洋平さん◾️株式会社アール代表取締役。広告代理店、出版社をへて2014年より現職。また同2014年より特定非営利活動法人こども哲学・おとな哲学 アーダコーダを設立し、代表理事を2019年まで務めた。現在は早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程所属。保育士、幼稚園教諭、小学校教諭、中学校教諭(美術)、高等学校教諭(美術)の資格をもつ。

学習・遊び・オンライン授業など教育サイトが年齢別に

__4月9日にリリースされたばかりのおうちチャンネルですが、まさに私が欲していた内容で驚いています。どのタイミングでこの必要性を?

川辺洋平さん(以下、敬称略):4月5日、緊急事態宣言が「おそらく出るな」というタイミングの時に「学校が休校になる」=「家庭はさらに混乱する」…と思いました。とにかく、今は親たちが学校の休みの間にしなきゃいけない・やりたいと思っていることだけをまとめたサイトが必要だと感じたので、その翌日から3日で立ち上げました。

__3日で…!その危機感というのはどこで感じられたのですか?

川辺:一保護者として必要性を感じました。というのも、学校がいつ再開するかわからないとなると、先生たちも的確な課題が出せません。親たちは、民間のサービスを使って「とりあえずやっておこう」となりますが、いろんな人から「あそこであれやってる」「これやってる」と聞いても疲れますよね。そこで、年齢別・学年別の学習サイトがまとまっていればそこから好きなものを選べるし、終わってしまっても「次はこれをやればいい」と思える。まずは少しでも安心を得られるようなリンク集を!と思い、実際に子どもたちが使って良かったサイトをアンケートで募集して作りました。

__未就学児のめいろから、小学生のドリル、中高校生向けまで年齢別で、さらに学習なのか遊びなのか、オンライン授業なのか動画なのか…ジャンルを選べるのがありがたいです。どうやってこのニーズをすぐに形にできたのですか?

川辺:私自身、保育士から幼稚園、小中高まで全ての教諭免許を持っているので保育・教育領域に詳しいのと、元々出版社で仕事をしていたのでWEBメディアの立ち上げもできる、このスキルを最速で生かすために、チャンネルを作りました。仮に1年間、この状態が続いたとしても、0歳から18歳まで学年別にサイトをまとめておけば、少しは安心できる。体育や図工や音楽なども関しては、家でできることをYou Tubeであげていらっしゃる方がたくさんいるので、おうちチャンネルのYoutubeアカウントで再生リストにしてまとめてあります。

__「こんな時ほど、充実した時間にしよう」と頑張りすぎたので、こういったサイトがあると気持ち的にすごく救われました…!あと、今回はYouTubeの有効性に触れることができたのも良かったです。

川辺:保護者の中ではあんまりネットで動画を見せたくない方もいらっしゃいますが、新しいものにチャレンジする良い機会になっているようです。、また、今後も「うちの子は家で勉強させてもいいな」と思う保護者も出てくるかな、と思います。そういう方のためにも情報は残しておこうかと。あとは主要4教科以外にもチャレンジできる企画を考え、様々な企画を予定しています。

まずは親である私たちが、もっと肩の力を抜こう!

 

川辺さんは家族でゲームをしたり、ダンボールで工作して遊んで過ごしているそう。

__おうちチャンネルを通じて伝えたいことは?

川辺:”お役立ちサイト”としてスタートしましたが、一番伝えたいのは「もう少し肩の力を抜こうよ!」ということ。ずっと漫画を読んでもいい、ゲームをしていてもいい。このまま小学校の学びが半年、もしくは1年オンラインになったところで、取り戻せないことはないので、「そんなに心配しなくていいよ」と伝えたい。そうすると、もう少し保護者が安心できて、視野が広くなると思います。

__「本当はこの時間、学校で勉強している時間なのに…!」と思っちゃいます。

川辺:小学校の授業で覚えている内容って、ありますか?あんまり思い出せないのですが、それぐらい簡単に取り戻せるはず。数ヶ月自宅で勉強したからといって、人生が大失敗することなんてありませんから(苦笑)!「何をそんなに焦っているんだ」って話ですよ!

__確かに!笑 本当ですね!

川辺:その”焦り”の背景には「保護者自身の時間が持てなくなった」「子どもと一緒にいなければならない」など、保護者自身の困り感があると思っています。そこは親子がお互い、慣れることで解消することもありますよね。もしテレワークしている場合でも「ママは家にいるけれども大切なお仕事をしている」というのが次第にわかってくるので、慣れればそこは変わってくるだろうと思います。

__とはいえ、人との交流もないですし、自分の気持ちにゆとりがない。どんどん考え方が膠着してきてしまいます。

川辺:例えば、家での過ごし方で時間割を作るにしても、その日の天気やその子の体調でどんどん変えても良いはず。そこをガチッと固めて決めるから疲れてしまう。やることだけ決めて、あとは子どもに任せてしまえば良いと思います。

うちには新小5と新小3の娘が二人いますが、時には勉強したふりをしたりすることもありますよ(笑)。そういうことに、すごくイライラする人と、「わたしと一緒だなぁ」って思える人と、ストレス度合いが違ってきます。「そんなに肩肘張っていたら心壊しますよー!」というのを、とにかくおうちチャンネルとしては伝えていきたいです。

__音声コンテンツのBGMがゆるい感じなのもその効果ですね!

川辺:あんまり緊急事態を伝えるニュースにはしたくないので(笑)。



学校で学ぶことの意味を、もう一度考え直す機会に

__学校が始まらないことでの一番の懸念点は?

川辺:本来、学校における教科学習の機能は半分ぐらいで。残り半分は、自分と違う人の意見を聞き、違う家庭環境の子どもたちと交流することで「人には(勉強だけでなく)多様な価値がある」ということを知る機能。それが今、欠如した状態で、学校を理解する保護者が増えると…、思いやりや優しさがないがしろにされてしまうのではないかと。

__学校なき状況が続くと、親も子も家族以外の人との深い交流がほぼありませんからね…。

川辺:特に受験にしか興味がない保護者は学校を重視しておらず、塾が基本となっています。そして今は、保護者自身も自分の家族のことで手一杯。非常に狭い視野で学校を見始めてしまうと「自分の息子や娘さえ良ければそれでいい」となりがちです。話が分かり合える人とだけつながる”SNSの延長線にあるような社会ができてしまうのではないかという懸念があります。

__子どもが学校の行事や友達から学ぶこと、刺激を受けることって本当に多いので、そこは大事にしたいです。

川辺:そういう視点で子どもたちの成長を見られる人が、増えるといいなと思います。親になると友達から得たことや、友達関係で失敗したこと・学んだことって、すっかり忘れてしまって、とにかく「勉強だけをしていなさい」という発想になりがちです。

__一方で、ICTの導入が早い学校などはオンラインで授業を進めていますし、海外も動きが早い。そういう話を聞くと「うち子の通っている学校は遅いなぁ」とがっかりする気持ちもあります。

川辺:オンラインでやっているところも、試行錯誤だと思いますよ。隣の芝生は青く見えるけど、自分の学校は…って思うという事は、やはり教科学習に重きを置いているんですよ。どんな環境でどんな人に育っても、一人一人には同等の価値がある、ということを大人が心得ておかないと人と自分を見比べるばかりです。首都圏中心に緊急事態宣言が出ているので、これまでも子育てという名の競争に揉まれて来た中で、今、困っている人が多いのかもしれません。「こういう子育てをしてもいいのか」と、お父さんお母さんが気持ちを切り替えないと、共倒れになってしまう懸念があります。

__そういう意味では、これからの時代における学校のあり方を、もう一度考えられるようになれればいいですね。今回のことで、ある程度の教科学習は自宅とオンラインで効率よくできる様になると、それ以外の探究学習や、行事や人と関わりの多いことだけを学校でやろう…とか。

川辺:そうですね。そうすれば先生たちの負担も減りますし、先生たちの個性も生かされてくる気がします。今の先生たちはすごく忙しいので、学校にとっても良いことかもしれません。

長期化する中で、ライフスタイルの変化に役立ちたい

__テレビもSNSも、毎日見ていると疲れちゃいます。

川辺:特に、我が子が大事、家族が心配な人ほど、一日中ニュースを見ている傾向にあります。とにかく、自分の家のことと子どもに関係のあるニュースに絞らないと参っちゃいますよね。ほかには、どんな辛さがありますか?

__一人の時間がないのと、家族以外の人と喋って気持ちをほぐす機会がない、この2点がいまの辛いところです。

川辺:そのニーズは多いと思います。今の不安だとか、辛いと思っていることを家族に言えるようになるといいのですが。「お母さんタイムが欲しい」とか。

__夫はそれを察しているのか、子どもたちを連れて夕方走りに行ってくれるので、その時間でだいぶ救われています。

川辺:いいですね!おうちチャンネルのNOTEでは毎日、専門家の話を聞いていますが、もっと身近なお父さん・お母さんの話とかも加えても良いですね。「子どもとこんな風に過ごしている」とか、「一人時間をこうやって作っている」とか。あとは、一方的に情報発信するだけじゃなくて、ある趣味の親だけが集まって…とか、おうちチャンネルとして双方向の企画ができるかもしれませんね。

__コミュニティも生まれそうですね!

川辺:とにかくおうちでの過ごし方、子どもやパートナーとのコミュニケーションの仕方、長期化する感染拡大に備えたライフスタイルを変えるための学びなど…、山積する課題に役に立つ情報を届けていくこと。そして「自宅での、こどもとの学び」を受け入れる新しい社会の実現に向けた情報を発信していくことがおうちチャンネルの使命であると思っています。

__まずは肩の力を抜くことからですね。ありがとうございました!

取材と言いながら、後半はほぼお悩み相談の様な状態になってしまいましたが…(苦笑)。自分自身、疲れてしまったのも、今までのライフスタイルとの変化を、受け入れきれていないんだな、と。どこか短絡的に考えていたのでしょう。ここ1〜2ヶ月で収まる、と。でも、そうも言っていられなくなりました。どこかで腹をくくって、前向きに、そして冷静に。自分たちの本当に大事にしていることを思い返して、これからの変化に対応していきたいな、と思います。

気持ちがざわざわした時に、ぜひおうちチャンネルを。特に音声コンテンツは落ち着かせてくれますよ!

おうちチャンネルHP

飯田りえ Rie Iida

ライター

1978年、兵庫県生まれ。女性誌&MOOK編集者を経て上京後、フリーランスに。雑誌・WEBなどで子育てや教育、食や旅などのテーマを中心に編執筆を手がける。「幼少期はとことん家族で遊ぶ!」を信条に、夫とボーイズ2人とアクティブに過ごす日々。

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