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新型コロナ緊急特集

スーパーで警官が監視…アメリカ・ボストンの読者が「新型コロナウイルス流行」に感じたリアルとは?

  • 高見澤恵美

2020.04.13

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【30代・40代】海外で暮らすLEE世代の一般女性は「新型コロナウイルスの流行拡大」に何を感じているの?(6・米国<マサチューセッツ州ボストン>編)

ボストン、大病院前の通り。通常は通勤ラッシュで混雑するはずの道も無人状態。

新型コロナウイルスの流行が私たちの暮らしに大きな変化をもたらしています。海外に生活の拠点を置くLEE読者は、どのような日々を過ごしているのでしょうか? 第6回は、アメリカ・テキサス州ダラスで暮らす読者のリアルな体験談をお届けします。

■年代:30代
■職業:会社員
■場所:アメリカ(テキサス州ダラス)
■永住

(※4月4日《日本時間PM13時》までの、読者への取材による内容です)

子どもが遊ぶ公園も封鎖、スーパーに警官が…徹底的な自粛生活へ

ーー新型コロナウイルスの流行拡大は、生活にどのような影響を与えましたか?

「中国で感染が報告されだした1月当初、政府としても誤報か自然消滅するものという認識で対応はなし。それよりアメリカ国内でのインフルエンザの死亡数のほうが問題だという印象。

2月、アメリカンの間では日本でのクルーズ船での対応と感染拡大で話題が持ちきりに。

2月初めマサチューセッツ州に初コロナ陽性者の報告。国全体では一桁代の感染者報告がありました。いずれも感染経路のわかる感染例で武漢からの帰国者でした(武漢からの帰国者は自宅謹慎の方針、強制力なし)。

若者は感染しても無症状でしょう? 老人だけが気をつければいいじゃないといったムードでインフルエンザみたいなもんなのに大げさな、という意見でした(夫も含めて)。

春節祭前後(日本人にとっては年末帰省のようなもの)で中国の人の行き来が増えるシーズンだったので、大げさと言われてもすぐに鎖国にすればいいのにと。またマスクをする人を差別したりある嘲笑ったりというムードにハラハラしてました。アジア人である私もマスクはつけたいけれど、つけれないというジレンマでした。

2月下旬、ある会社のカンファレンスでイタリアからの入国者に陽性、その後カンファレンス参加のアメリカ在住者から陽性者報告がでて、自主的に自粛ムードが広がりました。同時に土曜日の日本語学校が閉校しました。卒園式も入園式もできませんでした。アメリカの現地校と比べてボストン日本語学校の対応の早さにその時はびっくりしました。

マサチューセッツ州の主たる病院の手術は中止、延期になり、手術室や救急などでも集中治療が行える様に準備体制に入りました。

3月13〜16日、ようやく各市の休校要請が始まる。大学生は休校につき寮も閉館となり緊急引越しを余儀なくされました。遠方の大学に子供がいる親は迎えに行ったりと大騒ぎ。

翌週には必需品以外のビジネスが閉まりました。空いているのはスーパー、薬局、病院。レストランはテイクアウトのみ。歯科などの医療は閉まっています」

「スーパー店内に入れる人数制限のため店外に距離を開けて行列ができます。入店の際には手を消毒してくれる係が立っています」

「スーパー、レジ前にはラインがひかれ、人同士の距離が2メートルとなるように張り紙と放送が流れています。店内に混んでるエリアが出てくると店長から『お肉コーナー、距離とってください』とアナウンスが流れます」

「一般家庭では、外出は不要不急以外は控えるようにとロックダウンが厳しくなり、すべての公園の遊具にロープが張られ使用できないように。スーパーなどのイートインコーナーもおまわりさんが立っていて店内での飲食を取り締まるようになっていました」

「スーパーのイートインコーナーで飲食する人がいないかおまわりさんが立っています。テイクアウトのみ可能です」

「5人以上の集合は禁止になり、警察の見回りによりお葬式も解散。公園で遊んでいる子どもたちも見つかれば解散という状況です」

「だいたいの公園には侵入禁止のテープが貼られています」

「3月下旬、医療者が必要とするマスクやエプロン、手袋が手に入らなくなり、民間や個人からの寄付をお願いするようになりました。十分な防衛策が足りず、病院関係者の感染者が300人越えという報告。通常ですと勤務できない州外のドクターや、退職医療者にもボランティアの募集がかかり始めています。

NYではお亡くなりになった御遺体をどう処理するかまで手が回らず、御遺体を収容しておく冷蔵トラックが病院に来ているというニュースをみて、近所の州である私達にもより一層の緊張感が。

スーパーではN95マスクをつけてビニールグローブをつけている人も見かけるようになりました。ここにきてやっと、やっとマスクをつけて外出しても大丈夫な感じになりました。皆手に入らないはずのマスクをどうやって入手しているのか疑問です。

コロナ疲れで子どもが外で遊べない。お友達と会えない、私もママ友と会えない。会えるのは夫と子どもだけ。払った学費や習い事は開催されないなど、なかなかに息が詰まって大変です」

ーー具体的には、どのような自粛生活を過ごしていますか?

「ただ今絶賛自粛中です。買い物は週一回、代表して1人が店内へ。子どもは自宅待機か夫と車の中で待機です。店内でも子連れを見かける頻度はグッと減りました。感染しているかもしれない袋の持ち込みが起こらないよう、個人のエコバッグが禁止されました。帰宅したら即シャワーです。

わが家は買い物の内容は日持ちする食材に切り替えました。具体的には、小麦粉、米、冷凍野菜、缶詰、加工食品、バター、チーズなど。体には悪いかもしれないけれど、突然食品販売を含むすべてのビジネスが閉まるかもとという恐れがぬぐいきれません。
売り切れている商品も同じ傾向です。

野菜は日本からお土産でいただいていた乾物があるので、なんとななるかな、と思ってます。ネギなど根っこがあって再生簡単な野菜はキッチンガーデンにせいをだしております(いつもですが)。

鎮痛剤はNSAID系薬剤を使うと悪化するという情報がフランスで報告されてから、フランスでアセトアミノフェン系鎮痛剤の買い占めが起こっている情報を見て、虫歯、腰痛持ちの私のために一個だけ鎮痛剤を買っておきました。他の鎮痛剤と比べるとやや品薄だったので同じことを考える人がいるんだなと思います」

「鎮痛薬、ロキソニンなどコロナ感染時には使うべきでないとされている薬は在庫がありますが、コロナ感染時でも使えるという報道があったアセトアミノフェン系の解熱鎮痛剤の売れ行きが好調です」

「外食はしてません。デリバリーはローカルビジネスサポートの意味で検討していますが、まだトライしていません。

子どもの習い事は3月中旬にアイススケートもジムも閉館してしまいました。返金は……ありません(泣)。ビジネスサポートのための寄付と考えています。

家庭教師型のピアノをお願いしていましたが、3月3週目に必要不可欠の外出にあたらないビジネスに査定されたため、先生の家庭訪問ができなくなり、オンラインレッスンに切り替わりました。6歳がじっと画面の前に座っていられるか、字を書き込んだりまで自分でできない状態でしたので心配でしたが、なんとかなりそうなので継続するつもりです。

わが家は在宅ワーカーなので仕事は変わりませんが、夫の会社は世界中の職員と一緒にオンラインで働く会社ですが、次どのリーダーが倒れても会社が回るように、ひとつのプロジェクトのリーダーを複数人にし、申し送りして、ファイルへのアクセス権を共有しています。

オンライン不可の職種は基本しまっています。高速道路も電車もラッシュアワーがありません。

外出ですが、3月中旬の自粛の時は公園やビーチ沿いに行ったりしていましたが、3週目には厳格自粛となり、公園はロープが張られて入れないようになっていますし、おまわりさんの見回りもあるので、子どもの外遊びは家の庭のみです。

4月に入ってビーチ沿いの歩道もお散歩禁止エリアに指定されました。

個人的には……買いだめた食材を消費するため過食気味だし、運動不足だし、子どもの教育を全部セルフでするためのストレスがいっぱいです」

医療費が高すぎて、感染が怖いアメリカ

ーー新型コロナウイルス対策で、日本とボストンではどのような点が異なると感じますか?

「中国からのマスク買取合戦が始まっています。マスク値段が高騰している理由は、日本と違って個人の爆買いのみにあらずです。

自国生産力の弱いアメリカでは、せっかく州で買い取ったマスクを国が持っていってしまったり……ということが起こっているようです。

3月末に州で極秘プライベート飛行機でマスクを中国に買い取りに行く、さらにマサチューセッツ州についたマスクはマサチューセッツ警察で護衛をつけて輸送するなどされているようです。

国と自治体(州)との統制が取れていないばかりか、取り合いになっているという無茶苦茶ぶりです。まだ各家庭に2枚のマスクを配ってる方がマシな気がします。

そして、アメリカはとにかく医療費が高い!そして不透明! 国が決めているのではなく、病院によって違います。同じ検査を受けてもデパート価格だったり業務スーパー価格だったりするのです。勤務している会社が入ってる保険によっても変わります。受診してから請求されるまでいくらかわからないという不安もあります。
値段表示のない寿司屋みたいに、ドキドキしながら注文(受診)するのです。

同じ感染するにしても飛行機代出しても、絶対日本で病院受診したい! アメリカにいる今は、コロナかも?と思っても絶対絶対、重症化ギリギリまで自宅安静にして病院を受診しないと思っていました。

私のように医療費が怖くて病院に来ない人が山ほどいるかもしれないから……という理由で、マサチューセッツ州でのコロナのテスト、治療費は政府が払ってくれることになったようです。

それでもやっぱり、軽症だったら検査を受けて陰性だったから安心、とするよりも、軽症だったら感染してるものと考えて自宅安静が一番な気がします」

ーーアメリカ人が恐れる医療費、具体的にどの程度払っているのですか?

「医療費については十人十色でして……うちの場合はという価格になります。同じ病院を受診して同じ治療を受けても、入っている保険で価格が異なります。なので口コミであの病院は安かった!といって受診しても全然違う価格が提示されます。

高額な保険に入っているほどカバーされる診療が多く、低価格な保険ですと、カバーされない治療(自費)が増えます。また受診できる病院も低価格の保険だと限定されます。急に倒れても、どこの病院にでも運んでもらえるわけではないのです。

救急車ももちろん有料です。倒れて、誰かが救急車を呼んだとしても倒れた人が払えないから、と救急車の乗車を拒否することもあります。

わが家の夫の会社の保険プランがHigh deductible insurance というもので、6000米ドル/年までの治療費は全額自費になります。
毎月自分たちで150米ドル、会社がいくらかを保険として支払っています。6000ドルを超えて保険がおりた年が唯一ありまして、妊娠出産の年でした。

子どもが喘息気味で何日も耐えましたが、夜間呼吸ができずこれは危ない、と受診した際、聴診器で胸の音を診察(レントゲンなどの検査はなし)、ステロイドの内服をしてもらった時が約200米ドル。

私が足の靴ずれを化膿させてしまって、内科に予約診察で(救急じゃないですよ、内科です)、抗生剤をもらいに受診した時、視診と抗生剤処方箋料、再受診合計で約600米ドル。

ちなみに歯科治療は別保険です。私は虫歯で詰め物がいっぱいあるので……プレミアムデンタルヘルスケアプランに入っております。歯の詰め物が取れて、歯医者さんで取れた金属を再接着してもらった時の請求は160米ドルでした。

わが家の話ではありませんが、子供が頭を打ってCTでも取ろうもんなら……数十万円かかってクラウドファンドで寄付を募るなんてことは結構あるようです。

そんなに病院受診のハードルが高いわけですが、処方箋なしでも買えるお薬がたくさんあります。花粉症の抗アレルギー薬、鎮痛薬、感冒薬、喘息のステロイド吸入などは処方箋なしで買えるんです。なので本当に悪化するまで自分でなんとかセルフケアします。

特筆すべきは!予防医療に関してはタダなのです。インフルエンザワクチン無料。薬局でも受けれます。年一回の健診、無料。年2回の歯科検診無料です。

アメリカは病気になる奴が悪い、虫歯になるやつの自己管理が悪い。自己責任という考え方なんです。なので予防医療に関してはバッチリな気がしますが、うっかり怪我したり病気をした時が大変な国だなあと思います。

日本から駐在で来られる方は企業がしっかりした保険に入れてくれると思うので大丈夫ですが、留学で来られる方には最強の保険を自国で買ってくるようにと口を酸っぱくして言われます。私が留学した時も、入国の際、留学保険をつけているかどうかすごく確認されました。

日本はどこからどう見ても優れた国です」

ーーボストンにおける新型コロナウイルス対策で心配なことは?

「当初NYではアジア人差別は少しあったようです(マスクをしているアジア人が狙われるなど)。その後一気に白人の感染者の数が上回り、さらに外出が禁じられた今、差別は感じません。

貧富の差があってコロナが怖いという以前より、貧しい者は医療にかかることが難しい国なので、それに対する恐怖はかわりません」



在宅ワークになっても出歩かないで家にいてほしい

ーー日本における新型コロナウイルス対策で心配なことは?

「心から日本の医療、学校教育を信頼しています。本当に帰国したいのは山々です。でも、自身の両親を含め働き盛りの高齢者が多い日本。自分がうつしてしまうかもという心配が拭えず、今年の帰国は諦めたという経緯があります。2月ごろ。我らも自粛しなんてちょっと大げさじゃない?と思う中年の1人でした。若者には影響ないんでしょ?インフルくらいの症状でしょ?という認識でした。

若者は感染しても無症状だったり軽症で済むかもしれません。でもそのウイルスのついているかもしれない手で手すりやエレベーターのボタンを触ることで、エレベーターが本当に必要な高齢者や、車椅子の方や妊婦さんが感染してしまうかもしれません。働き盛り世代や子供が出歩く事で、志村けんさん世代の、まだまだ、元気で長生きできるはずの世代を失うかもしれません。この世代、私たちLEE読者世代の親世代、子供にとっては元気な祖父母世代だと思います。

そして、乳児も亡くなっています。赤ちゃんもティーンエイジャーも亡くなっています。これから元気に育っていくはずの子どもたちをなくして泣いている親の映像は見ていて耐えられません。

日本でコロナ疲れで、自粛が進んできて、在宅ワークになったからと地方に旅行に出たりしているニュースを見て、普段お休みがない日本人として、気持ちはわかりますが、今は我慢して欲しいと心から思います。離島や地方は人がいないから安全という思いで行くのかもしれませんが、離島や地方は医療過疎地なんです。地元の人に感染させてしまったら、ヘリや船をとばさなけばいけないかもしれない。船やヘリなど移動手段を担う人も危険に晒してしまいます。在宅ワークになっても、出歩かないを守って欲しいなと歯痒い思いでいます。

医療費が安い日本、感染してもすぐ病院に行きやすい安心な国ですが、一気に重症患者が増えた時のキャパシティはイタリアの半分と報告されているのをみて、もっと真剣に自粛して欲しいなと思います。国の指示やサポートを待っていては遅いのです。あとで国の政策を責めても仕方がないのです。お決まりのように、後で政府に頭を下げてもらっても、どうにもならないのです。

日本はいち早く休校措置を取りました。そんなことして働き手のバックアップなしなんて、どうすんねんって突っ込んでいた当初の自分が恥ずかしいです。

ただの風邪でしょという認識で対応の遅かったイギリス、イタリア、フランス、アメリカの末路を、その結果を見て学んで欲しいです。緊急事態宣言を待たず、国民が自主的に自粛我慢することで、日本だけは、安全に乗り切ったという誇り高い歴史を残して欲しいです。そして、こんな大げさに書いちゃってヒステリーだったな、と後で笑いたいです」


次回はベルギーで暮らしていた読者の声をお届けします。

高見澤恵美 Emi Takamizawa

LEEwebエディター・ライター

1978年、埼玉県生まれ。女性誌を中心に女性の性質や人間関係の悩みに迫り、有名無名千人超を取材。関心あるキーワードは「育児」「健康」「DIY」「観劇」など。家族は夫と4歳の息子。

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