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【文学座の子ども向け防災劇】一流の舞台を間近で!親子で遊びながら学ぶ、災害と復興とは?

  • 佐々木はる菜

2020.02.27

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日本を代表する劇団でもある「文学座」が、“全てはちびっ子の為に!!”をモットーに2012年から毎夏開催している「ぶんがくざ なつやすみ こどもフェスティバル」。我が家も毎年夏休みに足を運ぶことを楽しみにしています。
先日、その新しい試みである「桃太郎防災・復興シアター」へ7歳息子と出かけてきました!3.11を前に、今回はその体験レポートをお送りしたいと思います。

「防災・復興シアター」って何をするの?

1937年に創立された文学座。舞台、映画、TVはもちろん、ラジオ、アニメ、吹き替えなど多方面で活躍する人材を輩出し、附属演劇研究所卒業生には数多くの大物俳優陣が名を連ねています!

文学座のこどもげきの魅力は、なんといっても一流の舞台を親子一緒に間近で楽しめること!3歳以上を対象に作られた子どものためのお芝居ですが、大人でも充分に楽しめる素晴らしい内容です。(私達家族が以前参加させていただいた、夏の舞台の様子はコチラ

更に今回は、桃太郎のお芝居や紙芝居、遊びを通して「防災・復興」について学ぶことができ、大切だけど伝えることが難しいテーマに、親子で改めて向き合う良いきっかけとなりました。

文字通り「目の前」にある舞台!

ミラーボールが輝く素敵な会場内の装飾や座席の設置も、全て文学座の皆さんの手で行っています。舞台スペースのすぐ前、可愛い座布団の並ぶエリアが「子ども席」。後方に大人用の椅子も用意されていますが、自分の子のすぐ後ろに座ることもできるので、小さいお子さんの場合でも安心!毎回、赤ちゃんやよちよち歩きの子の姿もたくさん見かけます。

受付でいただくコインと交換する「手作りメダル」も楽しみのひとつ。想いのこもった恒例の風物詩となっており、毎年参加されているお子さんの中には、その年数分、首に下げて来場する方もいるそう!

開演前の20分は、劇場の壁にチョークで自由にお絵かきすることができます。こんなに大きなスペースに絵を描ける機会は滅多にないと思いますが、息子はもちろんどのお子さんも本当に楽しそうで、やはり今回は桃太郎や鬼関係のイラストをたくさん見かけました。
また、避難所でひとりあたりに割り当てられるスペースを再現したブースや、防災にまつわるオススメ図書なども展示されており、息子は興味深く読んでいました。

避難所再現スペースに横になってみる息子。「誰も来てくれなかったけど、初めて寝転がってくれる子がいた!」と言われており本人はなぜか誇らしげでしたが、なんとなく遠巻きに眺めていた私…(笑)

子どもたちと一緒に創り上げる、参加型の舞台が魅力!

舞台は大きく3つのパートに分かれており、まずは「鬼ヶ島での戦いを終えた桃太郎たちが、金銀財宝を抱えておじいさんおばあさんの待つ家へと向かう途中、災害が待ち受けている」という内容のお芝居が始まりました。

華麗に登場する桃太郎一団!

舞台を牽引する役目でもある「防災おねえさん」を務めるのは、今回の防災シアターを企画された千田美智子さん。

「ぶんがくざこどもげき」で毎回感心するのは、必要最小限のセットで私達の想像力を最大限かきたててくれること!
まず、文字通り「目の前」で役者さんたちの演技を見ることができるため、臨場感と迫力があります。音楽や効果音は舞台の端に用意された楽器などで生演奏し、使用する大道具や小道具もごく限られたものだけなのですが、場面が次々と目前に浮かび上がってくるようで目が離せません!
毎回、想像力がかきたてられる舞台のこの感覚ってすごくいいなぁと思うと同時に、生まれた時からテクノロジーに囲まれている現代の子ども達にとって、様々な感性を刺激される何よりの経験になるのではと感じています。

個人的には、後ほど登場する紙芝居についていた桃太郎がツボでした…手作りの衣装なども凝っていて、細部まで可愛い!

水にまつわる災害から始まり…

続いては地震が起こり、どんな風に行動すれば良いかお客さんたちも巻き込みながらみんなで考えます。

お供の「動物たち」を上手に活躍させ、災害時のペット問題について問題提起するシーンも。

まず印象的だったのは、災害が起こる場面で必ず「どうやって身を守れば良いか」ということを客席に問いかけ、子ども達の答えを受け止めながら具体的な避難方法を提示していたことでした。

水害のシーンでは「まず川から離れる」ということに加え、街の中で豪雨にあったらどうするかを一緒に考えました。そして、周りの様子を確認しつつ一番近い避難場所に逃げるため、普段から家族と避難場所について話し合っておく重要さを伝えてくれました。

地震のシーンでは、登場人物たちのセリフの中に「窓から離れて!」「机の下に入って!」「火の元を確認して」「戸を開けっぱなしにして出口を確保して!」といった具合に必要な避難方法が含まれており、小さなお子さんでもわかりやすいと感じました。
そして地震がおさまった後は部屋がぐちゃぐちゃだから、家の中でも怪我をしないように靴を履こう、枕元に靴を用意しておこうという言葉と共に、鬼ヶ島から持ち帰った「鬼の靴」というアイテムも登場していました(笑)

災害が起こった「後」のことにもフォーカス

私が今回心に残ったのが、災害時にどうやって身を守るかということに加え、災害「後」のことにもしっかりと触れている点でした。

地震のあと、桃太郎はおじいさんに電話して安否確認をしようとしますが、何度かけても携帯が繋がらず取り乱してしまいます。
災害用伝言ダイヤル171は、自分の声でメッセージを預け、お互いの安否を確かめられる番号です。不安な中で家族の声を聞くと安心できること、あらかじめ家族と番号などを決めておくことの大切さなどを伝えてくれました。

「安否確認171」 毎月1日と15日、正月3が日、防災週間、防災とボランティア週間は体験利用することができるそう!今度是非家族で試してみたいと思いました。

また、大切な人と連絡が取れず不安な桃太郎をお供たちが支えるシーンを通して「一番大変な時にどれだけ相手を思いやることができるか、優しくできるか、そしてみんなで笑顔でいられるかがとても大切です!」という素敵なメッセージがあり、胸に響きました。

防災お姉さんたちと一緒にみんなで「あわてた行動、ケガのもと!」と読み上げた後、落ち着くための深呼吸の練習も。ずっと座って劇を観るだけでなく参加型なので、小さなお子さんも飽きずに楽しむことができます。



「遠くの誰かの話じゃない。いつ起こってもおかしくない」

休憩を挟んで始まった「復興紙芝居~新しい町づくり~」もまた、災害が起こった後、元の生活を取り戻すためにみんなで何かできるかということについて考えさせられる内容となっていました。

紙芝居の主人公「ももたくん」は、東京で起こった大地震で被災してしまいます。区の職員である、地震で亡くなった親友のお父さんと一緒に、町の復興についての話し合いに参加する…という筋書きでした。

復旧とは「もとに戻すこと」、復興とは「前の思い出も大切にしながら、壊れてしまったものを作り直し、より良い街を目指すこと」だといいます。

地震に強い町づくりを目指して、広い道路や大きな公園を整備する計画に対して、最初住民は自分の店が移動しなければならないことや立ち退きなどに文句ばかり言います。
しかし、ももたくんの「狭い道で消防車や救急車が入れず、友達は亡くなってしまった。僕が作った新しい町の計画を見て!」という言葉を通して、災害に強い町にするためには様々な整備が必要で、ただ元通りに戻すだけではまた災害に弱い町に戻ってしまうことや、子ども達の未来のためにも、一人で考えるのではなく地域に住むみんなで考えることが大切だというメッセージが伝わってくる内容でした。

迅速に救援活動を行うため、町に必要なこととは?みんなで一緒に考えます。

そして最後には住民たちが前向きに話し合いを始めるという展開なのですが、「復興」という難しいテーマについてわかりやすく教えてくれると共に、災害に強い町づくりについてみんなで考えることの大切も学ぶことができました。

紙芝居に続いては、子ども達みんなで前に出て登場人物の皆さんと一緒にゲームをする「あそびのじかん」がありました。声を出したり身体を動かしたりしながら「災害にあったときの対応」について楽しく学びました。

3日間6公演で、410名のお客様が訪れたという今回の舞台。

「防災を取り扱うにあたり様々なことを考え気をつけながら舞台を作ってきたつもりですが、今回私たちがお伝えしたことはあくまで『ひとつの方法』です。防災に関しては、置かれた状況によって選択が変わりますし、知ることや知識もりっぱな備えです!色々と調べてみたり、防災館などに足を運びツアーを体験してみたりすることをおすすめします!」

とても楽しく有意義な内容だったことに加え、文学座の皆さんの言葉からは「子どもたちに大切なことを伝えたい」という真摯な想いを感じました。

我が家では毎年9月、子ども達と一緒に防災セットの見直しなどをするようにしていますが、防災・復興シアターを見た帰り道、息子と一緒に再度チェックしてみようという話になりました。そんな矢先、舞台を訪れた翌早朝に震度3の地震がありました。「防災おねえさんたちの言う通り、本当にいつ起こってもおかしくないんだね」と呟いた息子の言葉を聞きながら、私も今回の舞台で聞いた歌を思い出していました。

「むかし むかしのはなしじゃない
いつ おこってもおかしくない
とおくの だれかのはなしじゃない
それは ぼくのものがたり
それは きみのものがたり」
(桃太郎防災シアター「ぼうさいのうた」より抜粋)

「防災シアター」は出張公演も受け付けているとのこと。ちなみに今年のなつやすみこどもフェスティバルは、8月中旬に開催予定だそうです。
これからもますます目が離せない文学座こどもフェスティバル。気になった方は是非チェックされてみてくださいね!

文学座こどもフェスティバル

こどもげきホームページ

文学座

佐々木はる菜 Halna Sasaki

ライター

1983年東京都生まれ。小学生兄妹の母。夫の海外転勤に伴い、ブラジル生活8か月を経て現在は家族でアルゼンチン在住。暮らし・子育てや通信社での海外ルポなど幅広く執筆中。出産離職や海外転勤など自身の経験から「女性の生き方」にまつわる発信がライフワークで著書にKindle『今こそ!フリーランスママ入門』。

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