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高見澤恵美

【プロのすき焼きレシピ】「伊勢重」店主が作り方のコツまで伝授!

  • 高見澤恵美

2019.12.30

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実はお正月に食べる家庭も結構多い! すき焼き

気付けばお正月も目前。人が集まる日の料理に頭を抱える人も多い時期ですね。おせちは用意するとして、その後の夕食には何を食べますか?

私の実家では、三が日といえば、おせちのほかに、すき焼き、自然薯料理、(いつもより豪華な具材の)鍋が定番で(あとは刺身盛りなど)。中でもすき焼きは華やかさもあり、めでたいお正月にピッタリ。奮発していいお肉を買い、おせちに飽きてきた3日くらいにいただくのがベストと思っています。

とはいえ、自宅でおいしいすき焼きを作るのって結構難しいものですよね。途中で水っぽくなってきたり、味に飽きたりしがち。私は甘い割り下があまり得意ではないので、市販の割り下をあまったるく感じたりも……。かといって、適当にしょうゆを足しても「なんかすき焼きっぽくない!」残念な味になってしまったり……。

スペシャルな時期に、いいお肉を買ってすき焼きを作るなら、おいしい作り方をマスターしたい! ということで、キッコーマンの「KCC食文化と料理の講習会」で、おいしいすき焼きのコツを教わってきました。

おいしい“お正月すき焼き”が食べたい!家庭でもおいしいすき焼きを作るコツとは?

テーマはズバリ! 「老舗にならう ごちそう!すき焼き」。講師は日本橋の老舗すき焼き屋「伊勢重」七代目の宮本尚樹さん、ナビゲーターは老舗鰻店「日本橋 いづもや」三代目の岩本公宏さん。なんとも贅沢な顔ぶれです。

「伊勢重」七代目店主の宮本尚樹さん

楽しい掛け合いで会が進む中、宮本さんが、家庭ですき焼きをおいしく作るためのポイントをレクチャーしてくれました。

トークはすき焼きの歴史から。古くから使われている木の看板には、「牛鳥」の文字が。明治に入っても、初めの頃は牛肉を食すことを非難する風潮があったため、「牛鳥(ぎゅうちょう)」という鳥、という体で提供していたそう。すき焼きを食べつつ披露したいウンチクです。

1・しょうゆ、みりん、砂糖のみ! 割り下の作り方【「伊勢重」流】

まずは、割り下の話から。「うち、割り下は秘伝なんですけどね(笑)」と言いながらも、すき焼きの味を決める割り下の調味料配分を披露してくれた宮本さん。

みりん1:砂糖1:しょうゆ3:水6

「『使う調味料は3つだけ。肉がダシなので、割り下にだしはいれません。うちは、しょうゆがたつ味です」と宮本さん(甘さ控えめな割り下が好みなので、うれしい!)

講習会で使ったみりん&しょうゆはコレ! 「マンジョウ 米麹こだわり仕込み 本みりん」(左)、「キッコーマン いつでも新鮮 特選 丸大豆しょうゆ まろやか発酵」(右)。おふたりとも、キッコーマンの調味料を愛用しているとか。「みりんは、本みりんを使うことをおすすめします。料理人は、みりん風調味料ではなく本みりんを使っています。料理がおいしくなりますよ」(岩本さん)



<割り下を作る 手順>

今回は、3~4人前の材料ということで、まず、水(360CC)、しょうゆ(180CC)、みりん(60CC)、砂糖(60g)を鍋にいれ、ひと煮たち。沸騰するまでアクをとる。このとき、沸騰させすぎるとしょうゆがたってしまうので注意。

(完成した割り下は、一晩冷蔵庫で寝かせるとカドがとれておすすめとのこと。「味が全然違う」そう!)

2・具材選びにも奥深い理由あり。野菜やしらたきの下ごしらえ【「伊勢重」流】

下ごしらえの手順を紹介するとともに、すき焼きへの疑問にも答えてくれました!

<野菜を切る・盛る 手順>

ねぎは、断面が多いと味がしみるので、斜めに輪切り。ねぎを枕にしてカットした春菊を乗せ、カットした豆腐を乗せ、白滝で春菊の茎を隠す(各食材の量は好みで)。

Q:野菜をなぜザクと呼ぶの?

A:「もともとはザクザク切る長ねぎのこと。本来、すき焼きは割り下、牛肉、長ネギだけいれていたので、野菜といえばザク=長ねぎだったんです」

Q:白菜をいれると水が出る……。かわりにいれる野菜のおすすめは?

A:「すき焼き屋では、水が出る白菜は入れないお店のほうが多いですよ。甘いのが好きならたまねぎもいいし、しいたけ、にんじん、お麩もいい。酸味が好きならトマト、春菊が苦手ならばクレソンもおすすめ。四国では大根を入れる地域もありますよ」

Q:豆腐はなぜ焼き豆腐がいいの?

A:「水分含有量が少ない豆腐のほうが、水が出ないので味が薄まらないし、煮崩れもしにくいんです。水の含有量は、絹>木綿>焼き豆腐なので、焼き豆腐が最適」

Q:春菊には、茎が太いものと細いものがありますが、どちらを選んだらよい?

A:「太いものは成長しきって、かたく調理しにくい状態。なるべく細いものを選んだほうがいいですね。太い茎と細い茎が混在している場合は、太いものはカットし、他より先に鍋に入れましょう。また、春菊は春に花が咲きます。中につぼみがあるのは、花が咲く前兆。苦くて味が落ちているのでなるべく避けて。夏は、葉に白い筋状の跡がついていないかチェックを。葉を食べるハモグリバエが食べた葉かもしれません」

Q:しらたきはアク抜きが必要?

A:「石灰のえぐみをとるためには必要。『アク抜き不要』と書かれたしらたきであっても、味は残っているので、アク抜きをしたほうがいいです。4等分に切ってから沸騰した鍋にいれ、ひと煮立ち。しょっぱくなるので塩は振らないように」

Q:白滝とお肉、鍋の中で近づけるとお肉がかたくなる?

A:「それは都市伝説。凝固剤が入っているからという理由で言われていますが、それなら豆腐も同じ(笑)。お肉がかたくなるのは、たぶん鍋で煮すぎです」

3・ココが肝! お肉の扱い方・選び方【「伊勢重」流】

いよいよお肉が登場!

「伊勢重」ではお肉はすべて手切り。「スライサーで切るとまっすぐ切れてしまう。手で切ると段々ができ、割り下がうまく絡むんです」

口に残る筋(白っぽい部分)は、一枚一枚丁寧に落とします。これは家庭でも行うべき大事なポイントだそうですよ!

スライスした肉を皿に放射状に並べ、真ん中に2枚重ねたら牛脂を乗せます。

<家庭でのすき焼き、お肉Q&A>

Q:肉の量(1人前)はどのくらいが適量?

A:「すき焼きだけなら150~200gが一般的。他がたくさんあれば、100g程度でも」

Q:スーパーのお肉を買ってすき焼きを作る場合、どんなお肉がおすすめ?

A:「ロース、肩ロース、肩、ももなど、さまざまありますが、ももとロースがおすすめです。肩ロースは筋が多いので避けて。筋のないもも、お値段高めのロース、半分ずつ買うのがバランスがいいと思います」

4・いよいよ! すき焼きタイム【「伊勢重」流】

<鍋に具材を入れる 手順>

鍋に牛脂を乗せ、火にかける。鍋が温まったら薄くひくように割り下をいれる。

具材のうち、まずはお肉を入れる。ポイントは、火を強くしないこと。軽く泳がせる程度に。割り下に肉の出汁が出る→すぐにお皿へ。そのまま食べる。

続いて、ねぎ、豆腐、白滝、牛脂を入れ、

上に春菊を乗せる。

さらに、上に肉を3枚ほど乗せる。その間に卵をとく。

肉を裏返す→卵につけて食べる。

白滝などの具材も同じタイミングで火が通る→食べる。

<家庭でのすき焼き、食べるときQ&A>

Q:すき焼きにはなぜ卵?

A:「具材をほどよく冷ます効果が。また、昔は高級なもの(肉)に高級なもの(卵)を合わせるのがよしとされたんですね」

Q:卵の選び方は?

A:「卵の味が強すぎると肉たちの味が負けます。あえて普通の卵を選んでいます」

Q:味が濃くなってきたら?

A:「昆布だしを加えるのがおすすめ。水だけの店もあれば、水と酒の店もあります」

Q:割り下が余ったら?

A:「うちの店はうどんすきで対応します。割り下を吸っておいしく仕上がります。九条ネギとコショウでおじやにする店や、卵でとじてごはんにかける店も。冷蔵庫で一晩置いて脂をとり、肉じゃがに転用してもおいしいですよ」

講習会では、秘伝の割り下でつくったすき焼きを試食させていただきました。肉、野菜、割り下……すべてが好みの味! 堪能しました~。次回、ちょっと贅沢したいおでかけの日は、「伊勢重」で決まりです。お肉の購入もできるということで興味津々。贈り物にもいいですね。

「小難しいことは苦手。おいしく食べてもらえたらうれしい」と宮本さん。印象的だったのは、具材も調味料も工程もとってもシンプルだということ。これなら、私にもできるかも……!? という気持ちに。勉強になりました。

みなさんも、「伊勢重」流の「みりん1:砂糖1:しょうゆ3:水6」でお正月のすき焼き、いかがでしょうか?

高見澤恵美 Emi Takamizawa

LEEwebエディター・ライター

1978年、埼玉県生まれ。女性誌を中心に女性の性質や人間関係の悩みに迫り、有名無名千人超を取材。関心あるキーワードは「育児」「健康」「DIY」「観劇」など。家族は夫と4歳の息子。

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