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映画ライター折田千鶴子のカルチャーナビアネックス

【小松菜奈さん、門脇麦さんインタビュー】 青春音楽映画『さよならくちびる』は2人の歌声に切な泣き!

  • 折田千鶴子

2019.05.28

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魅惑の女優、小松菜奈さんと門脇麦さん2人が登場です!

うわ~、もう、たまらなく大好きな青春映画がまた出来ました! その名も『さよならくちびる』。これ、青春ど真ん中のティーン世代よりも少し上、まさにLEE世代の人の心にドンピシャに響く物語ではないでしょうか。しかもキャストが魅惑的すぎる!

美貌と存在感はまさに天性のものと崇めたくなる小松菜奈さんと、演技力がズバ抜けている上、スクリーンでの吸引力がスゴすぎる門脇麦さん。そして瞬く間に超売れっ子となった成田凌さん。まさに旬の中の旬の3人の起こす化学反応が、ものすご~く素晴らしいのです。

そんな3人が揃っただけで、映画『さよならくちびる』はもう鉄板の面白さをお約束という感じですが、これまた作品を彩る諸々の要素がいちいちステキ! 監督についても含め、それは後々ご紹介させていただくとして……。ウルウルしながら“たまらんわ、これ”と興奮冷めやらぬ中、W主演の小松菜奈さん&門脇麦さんが登場してくれました!

小松菜奈(右)1996年、東京都生まれ。2008年よりモデルとして雑誌を中心に活動開始。中島哲也監督に見いだされ『渇き』(14)でスクリーンデビュー。その他の代表作に『近キョリ恋愛』(14)、『バクマン。』(15)、『黒崎くんの言いなりになんてならない』『ディストラクション・ベイビーズ』『溺れるナイフ』(16)、『恋は雨上がりのように』『来る』(18)など。『閉鎖病棟(仮)』が19年11月に、『さくら』が20年初夏に公開待機中。
門脇麦(左)1992年、東京都生まれ。2011年にTVドラマで女優デビュー。NHK連続テレビ小説「まれ」(15)で注目を集める。その他の代表作に、『太陽』『二重生活』(16)、『こどもつかい』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』『花筐/HANAGATAMI』(17)、『ここは退屈迎えに来て』『止められるか、俺たちを』(18)、『チワワちゃん』(19)など。2020年の大河ドラマ「麒麟がくる」でのヒロイン役が控える。
写真:細谷悠美

 

スクリーンで強烈な存在感を放つ2人だけに、ご一緒にお話ししていただくってどうなるのだろう……と正直、考えていたのですが(笑)、すご~く和やかで楽しそうで、女優としてリスペクトし合い、人間として慕い合っている空気が漂っていて、とても楽しいひと時になりました。

これまで何度かインタビューの機会があった門脇さんは、常に知的で自然体で率直な物言いをされる気持ちのいい女性、という印象は変わらず。初めてお会いした小松さんは、“きっと近寄りがたい雰囲気に違いない”と勝手に抱いていた印象とは真逆で、とても親密な空気を纏っていて、素直に言葉を紡いで伝えようとしてくれる姿勢が好感度莫大な女の子でした!

さて、『さよならくちびる』で2人が演じたのは、突然解散を決めた人気デュオ<ハルレオ>のハル(門脇)とレオ(小松)です。付き人のシマ(成田)と共に3人で、全国7都市を回る解散ツアーに出るのですが――。ライブの道中に過去の逸話が飛び込んできて、今の“解散決意”に至らしめる事情が少しずつ見えて来るのです。すると切なさが段々と募ってきて……。

『さよならくちびる』
監督・脚本・原案:塩田明彦出演:小松菜奈、門脇麦、成田凌ほか
うたby ハルレオ 主題歌 Produced by秦 基博 / 挿入歌 作詞作曲 あいみょん
2019年/日本/配給:ギャガ GAGA
© 2019「さよならくちびる」製作委員会
公式サイト:https://gaga.ne.jp/kuchibiru/
5月31日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

 

――お互いに、これまでの活躍をどのように観てきましたか。そして今回、初めてガッツリ共演された感想を教えてください。

門脇「実は共通の知り合いが何人かいて、何となく話を聞いていたので、勝手に気が合いそうだな、と思っていたんです。実際にお会いしたら、良い意味で想像以上に普通の人で。女優さんっぽくないと言うか、すごく普通の感覚の持ち主で、そこがすごく素敵だな、と思いました。そういう人って、居そうであんまりいらっしゃらない気がして」

小松「うん、あまりいないよね。お互いにマイペースなので、気を遣わずにいられたというか、いい距離感を保てたというか。私もずっと麦ちゃんの作品を観てきたので、ガッツリ共演できてすごく嬉しかったです。麦ちゃんは、すごくしっかりしていて存在感もあって、もちろんお芝居も素敵だし。自分とは、また全くタイプが違うので、すごく刺激を受けたし、色んなことを勉強させてもらいました。でも、一緒にふざけあえるようなお茶目な部分もあるし、私が思わず甘えちゃうようなお姉さんっぽさもあって、すごく楽しかったです!」

 

デュオと成田凌さん演じる付き人の三角関係!?

 

――本作は、“小松菜奈×門脇麦で映画を作りたい”ということが出発点となった作品です。2人を主演に据えたオリジナルストーリーとは、役者冥利に尽きると思いますが、お話を聞いた時は何を思いましたか?

門脇「最初に2人の主演作と聞き、次に塩田(明彦)監督に決まった、と。“どうやら音楽映画らしい”と聞いた時は、すごい予想外でした。しかもバンド映画ならまだしも、“え、ギターデュオ?”と。どうなるのか、さっぱり想像がつきませんでした」

小松「最近あまり見たことがない“女の子2人の映画”をやってみたいと思っていたし、相手が麦ちゃんと聞いて、すごく面白そうだな~と。でも、音楽映画って難しいだろうなぁ、とも思いました。女の子2人の間に付き人シマという人物も入ってきて、三角関係になるのですが、それも男女間だけでなく、女子2人の間にも気持ちがあるという展開も、すごく新鮮に感じました」

 

――“その美しさでひとを夢中にさせるレオ”と、“その才能でひとの心を奪うハル”という設定です。歌声も演奏も素晴らしかったですが、どのように役に入っていきましたか?

門脇「撮影1か月前くらいからギターの練習を始めました。あとはほぼ、撮影が始まってから監督を交えて。長年2人でやってきた空気を出すため、この歌ではここで目を見合わせようとか、演奏に入る前の呼吸の合わせ方を相談して」

小松「2人の服装が“つなぎ”というのも、デュオ感が出ていて助けられました。伊賀(大介:スタイリスト)さんのおかげだよね(笑)。つなぎ以外の服装で、舞台に立って演奏するなんて考えられない」

門脇「他の服だったら心もとなくて舞台で立っていられないよね(笑)。実際にツアーをしていくように各ロケ地を回り、ほぼ順撮りに近い撮影だったことにも助けられました。そういう時間の積み重ねが、最後のラストライブに繋がったかな、と感じて」

小松「最後のライブである北海道に向けて気持ちが出来て行って、北海道で“これが(ハルレオとしてのライブも、映画の撮影も)最後になるんだ……”という気持ちが自然と出て来た。そこに行きつくまでは、気持ちがどこかでガラッと変わったということもなく……」

門脇「それ(気持ち)を表に出すハルとレオでもないしね。大事でもあり難しくもあったのは、いかに恥ずかしさも不安も感じずに、きちんとパフォーマーとして舞台に立つか、で。というのもPV方式――撮影の録音上、当てフリや当て唄(エア演奏)をする状況に、恥ずかしさを感じたら絶対にダメで。そこも、お客さんとして来てくださったエキストラの方々と、その空気感に助けられました。舞台に立ったら自然と、本当に楽しんでもらわなければ、という気持ちになって。今、ここで私が生で演奏します、と言い出したくなりました(笑)」

 

 

最大の感動シーンは、最大の難所!?

――シマが運転する車に乗り込んでから、各地で何か大きな出来事が起こるわけではなく、何となくウダウダと雰囲気が悪く、何となく揉めながらダラダラとライブを続けていく……という様子が綴られます。それだけに“感情が揺り動かされている”とは全く思わず観ていたのですが、挿入される過去シーンの一つ、自動販売機前で2人が感情をぶつけ合うシーンで、いきなり涙があふれ、止まらなくなりました。

門脇「あのシーンは本当に難しくて、実は、撮影最終日にリテイクしたんです」

小松「諸事情から、絶対にあの自販機前で撮らなければならなくて、動きも難しいし、ずっと3人で話し合って撮ってはみたものの……どうにもよく分からずに上手くいかなくて」

門脇「淡々としたシーンの中に、唐突にああいう鮮烈なシーンが入って来るので、演じる側としては辻褄を合わせたくなるし、何かの繋がりがないと気持ちの流れがつかみにくくて。気持ちもアゲなければならないし……。なぜこのタイミングで、こういうシーンが入るのかと監督に聞いたら、“一連の繋がりがある物語にしたいわけではない”と。“3人のうちの誰かがつけている日記帳をビリビリに破き、かき集めたような物語にしたい”とおっしゃられて」

小松「どう動いたらいいのか、どう離れて、どう触れればいいのかとか、ずっと話し合ってとりあえずやってはみたけれど、すごく難しくて。一番悩んだシーン」

門脇「だから、クランクアップしたのに、終わった~って気持ちになれなかった(笑)。あれで大丈夫だったんだろうか……って」

小松「モヤっとした気持ちのまま上がったよね(笑)」

 



これぞ映画マジック!

――それが予想外のエモーショナルなシーンになるというのも、まさに映画マジックですよね。その他のシーンでも、ポロポロとそういうマジックがありましたから!

門脇「私も出来上がった作品を観て初めて、役者の生理で気持ち悪いとか、そういうこととは関係ない方が、観ている方にはむしろ響くことがあるんだな、と興味深く観ました」

小松「物語も淡々としているし、3人の関係性も過激に描かれているわけでもなく、ただ3人ともすれ違って相手に気持ちが届かない、と。そんな人間関係のリアルがそこにあって……」

門脇「後から段々と反芻するようにジワジワきて、ようやく今なるほどなぁ、と思うようになってきて……。私がハルを演じる上で一番大事にしていたのは、レオや歌に対する繊細な想いなのに、それを出せるシーンがあまりなかったので撮影中は不安でした。決して分かりやすい映画じゃないけれど、後からジワジワくる作品だと思います」

小松「分かりやすくはない物語に、秦基博さんやあいみょんさんの音楽が乗って来ると、分かりやすく盛り上がりはなくても、ジワっと感じる熱いものがあったりするんだね……。だからこの作品って、色んな人に観てもらえる作品になったんじゃないかな、と」

門脇「塩田監督らしさもありつつ、ある種の王道というか、間口の広い音楽とタッグを組むからこそ、こっち(映像表現や語り方)で引き算したのか、とようやく分かって。だから“何となくジワッ”が残るのかな、と」

果たしてハルレオは、仲違いしたまま解散に至ってしまうのでしょうか――。そこは観てのお楽しみですが、終わり方もまたいいのですよ!!

いやぁ、青春ってホント、こうだよなぁ、、、と本作を観て唸る人、きっと多いと思います。気持ちをどこにぶつけていいのか分からない、ハルレオも歌に乗せて思いを表し、届けようとしたけれど……。どうすればいいんだろう、どこへ向かっていけばいいんだろう……と悩んだ青春の日々って、みなさんもきっとあると思います。

こちらが件の“自販機前の感情爆発シーン”。これがもう、意表を突かれて号泣必至になってしまうんです!!

 

話題に出て来た塩田明彦監督は、『月光の輝き』(変態チックですが、これにも当時すごくヤラれてしまいました!!危ういエロスというか、かなり異色の青春ラブストーリー)や、『害虫』(宮崎あおいさん主演の、これまた鋭いナイフで斬られるかのような痛みのある青春映画)など、“青春”の切り取り方がまさに塩田監督! 珍しく真っ直ぐな(笑)『どこまでもいこう』なんて少年映画もありましたが、『ギブス』『カナリア』など、意欲的な内容の作品を撮られてきた監督さんです。『黄泉がえり』『どろろ』『抱きしめたい-真実の物語-』など、超メジャー映画も手がけられていますが、やっぱり作家性が強く表れた『さよならくちびる』は、待ってました!!と狂喜する映画ファンも多いと思います。

さて、本作の大きな魅力に、話題にも出て来た秦基博さんとあいみょんさんの音楽があります。特に本作のために秦さんが書き下ろされた「さよならくちびる」という曲を、小松さん&門脇さんが歌う、その歌声も必聴です!! 味があって本当に心に染みる!

是非是非、劇場に足を運んで“ジワジワ号泣”を味わって欲しい、絶賛・おススメ偏愛映画です。

 

 

リピーターの方限定、2度目にチェック!

普通は前頁で終わりになるところですが、ちょっと割愛するにはもったいない面白撮影エピソードを、オマケでひとつ。。。

――実際に回ったロケ撮影での思い出は?!

門脇「やっぱり行くところ行くところで美味しいものが食べられた、ということかな」

これを皮切りに、思わず盛り上がってしまった裏話なんです(笑)!!

小松「食べ物で印象に残っているのは、カレー(笑)。シーンとしては、シマの悲しい話を喫茶店で聞いているんだけど、実はあのカレーのシーンは、すごく爆笑した(笑)」

門脇「あぁ、そうだった(笑)!!」

小松「3人ともすごくお腹がすいていて、段取り(本撮影の前に、動き等々を確認するリハーサルのようなもの)の時に“もう食べよう”とか言って、1カット目で食べちゃったんです。でも当然ながら撮影って、方向や角度を変えて何度も撮るわけで。前後の繋がりがあるから、残っている分量とか状態とかも合わせなければならない。本番はもう苦しくて(笑)! 私と麦ちゃんはまだカレーライスだから誤魔化しがきいたものの、成田君はオムライスで」

門脇「最初にみんな勢いよく食べるシーンを撮っちゃったから、それに繋げなくちゃならなくて、成田君、本当に大変そうでした」

小松「私ももう一生カレー食べたくないって思った(笑)。よ~く見ていただくと、やたらスプーンで掬ってはかき混ぜたりしてるんですよ(笑)!!」

門脇「ご飯をよけて、ルーだけちょっと食べたり(笑)」

小松「成田君、変な汗出てたよね(笑)!!」

門脇「あの後、私のマネージャーさんに薬もらってたよ(笑)」

 

さて、最後に。LEEの読者に、この青春映画をどんな風に観て欲しい?と聞いてみました。

門脇「監督が、“夢を追い続けている人や向上心を持ち続けている人は、いくつになっても青春だ”とおっしゃっていました。監督がまさにその言葉を体現されている方で」

小松「少年のようだよね」

門脇「その姿がすごく素敵なので、私も30、40代になってもずっと青春していたいなって思っています」

小松「確かに10代の青春と、20代の青春、30代の青春って、見えるものが全然違うと思う。だからこそどんな年代の人にも、この映画は、その年代でしか分からない楽しみ方をしていただけると思います!」

 

折田千鶴子 Chizuko Orita

映画ライター/映画評論家

LEE本誌でCULTURE NAVIの映画コーナー、人物インタビューを担当。Webでは「カルチャーナビアネックス」としてディープな映画人へのインタビューや対談、おススメ偏愛映画を発信中。他に雑誌、週刊誌、新聞、映画パンフレット、映画サイトなどで、作品レビューやインタビュー記事も執筆。夫、能天気な双子の息子たち(’08年生まれ)、2匹の黒猫(兄妹)と暮らす。

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