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古川はる香

【ママ起業家・荻野みどりさんインタビュー後編】ママ、妻、仕事……すべてを完璧にこなさなくていい

2018.04.10

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「完璧なママ」は目指さない! 不完全でいいんです

株式会社ブラウンシュガーファースト代表取締役・荻野みどりさん。1982年生まれ、福岡県久留米市出身。2011年第一子出産後わずか4カ月でお菓子ブランド「ブラウンシュガーファースト」を立ち上げる。 撮影:齊藤晴香

お子さんが生後4カ月のときに「ブラウンシュガーファースト」を立ち上げ、ママ起業家として活躍している荻野みどりさん。著書『こじらせママ 子育てしながらココナッツオイルで年商7億円』には、現在も会社の主力商品である「有機エキストラバージンココナッツオイル」を商品化するため、当時生後8カ月だった娘さんを日本に置いて、フィリピン出張をしたエピソードが描かれています。

 

億単位の年商を稼ぐ起業家というと日々とても多忙なイメージ。子育てとの両立はどうしているのか気になります。荻野さんの子育ての信条は?

 

「仕事をするうえでも共通しますが、完璧にしようと気負いすぎないこと。不完全なお母さんであることを受け止める! お風呂だって毎日入らなくていいし、ご飯だって毎食一汁三菜作る必要ない! うちの場合は、娘が忘れ物したときも“ごめん。ママ忘れん坊だから。自分で覚えておこうか?”って言ってます」

 

「自分のことは自分で」も子育てで荻野さんが心がけていること。

「私がやってあげたほうが、その瞬間は早いし楽ですが、自分でやれる方法を教えて見守るほうが、長い目で見ると私も助かるし、娘も自信がつくと思うんです」

2歳半からは食器洗い、3歳ごろからは包丁を使うことにもチャレンジさせ、現在6歳になった娘さんは、朝からピザトーストを作ったり、そうめんをゆでたり、自分で食事の用意もできるほどとか。

 

“依存しない”ということは日ごろから意識してますね。親に依存しないように子どもを自立させるということはよく語られていますが、一方で親も子どもに依存しがち。子どもの世話を焼くことが、やがて自分の存在意義とすり替わってしまって、親が子離れできなくなることが。そこは気を付けながら子育てしています」

 

娘にはいわゆる「勉強」よりも、やってほしいことが

ブラウンシュガーファーストのサイトには荻野さんと小さい頃の娘さんの写真も。(画像は「ブラウンシュガーファースト」公式サイトより)

 

娘さんも4月から小学生に。働くママとしては「小1の壁」も気になるところでは……?

 

「姉の子どもの話を聞いたりしてると大変だとは感じますが、“小1の壁”で命を落とすことはないと思うので、どーんと構えています(笑)。命にかかわることや、いじめにかかわるようなことは、しっかり対応していきたいですけど、それ以外のことはそこまで神経質にならなくてもいいかなと。その代わり、もし命やいじめにかかわることが起きたときのため、コミュニケーションがきちんと取れる学校がいいと思ったので、学校は選びました」

 

娘さんが年中の頃から、公立・私立問わずさまざまな学校の情報を収集。子育ての先輩たちにもたくさん話を聞くよう心がけたといいます。

 

「自分の意見をしっかり持っている娘なので、最終的には娘が行きたいというところに決めました。でもいわゆる“お受験”をしたわけではなくて、塾に通うなど特別なトレーニングをしなくても入れるようなところを選びました。

私、勉強系の習い事はしなくてもいと思っているんです。私自身が宿題のプリントを裏山に捨てた苦い思い出もあるんですよ(笑)。子どもたちが大人になる頃には計算も記憶もコンピューターがやってくれるようになるだろうから、ドリル的な勉強をするより、イマジネーションを広げていけるとか、自分がワクワクすることを見つけられるとか、自分を励ますことができるとか、そういった能力を伸ばすほうがよっぽど大事だと思うんです」

 

多くの親が小学校入学前に習得させたいと考えがちなひらがなの読み書きも「できなくていい!」ときっぱり。

 

「なんなら“右”と“左”もわかってなくていい。”小学校に入る前に、右左を覚えるべき”って、誰が決めたんだろうって思います。ひらがなの読み書きができないとか、右と左がわからないとか、そういうところで自己肯定感下げる必要ないですよ。本人にとって必要だと思うときが来たらすぐに身に着くでしょうから」

 

働き方の選択肢のひとつとして「起業」も考えてほしい

 

起業という働き方とママ業は相性がいいと話す荻野さん。これから起業を考えている女性にも大いにおすすめとか。

 

「子育て中、不妊治療中など時間に制約があって、企業に勤める働き方が難しい人も気負わず起業を考えていいんじゃないかと思います。結婚や出産を機に一旦仕事から離れた人も、自分で稼ぎたいと思ったときの選択肢のひとつとに入れておいてほしです。仕事で東南アジアの国にも行きますが、日本ほど起業しやすい国ってないですよ。自分が動き出しさえすれば、銀行も資金を貸してくれますし」

 

特に女性が起業する際のポイントとして「すすんで銀行で資金を借りるべき!」と荻野さん。

 

「なるべく扶養の範囲でとか、なるべく借金しない範囲でとか条件をつけがちですが、私はやりたい事業が定まったらすぐにでも借金したらいいと思うんです。銀行にお金を借りに行くにあたって事業計画を立てますし、責任だって伴います。最低でも返済分だけは収益をあげる必要があるので、事業のやり方も少し俯瞰して見れるようになるのでは」

 

荻野さんが起業した頃に、ある先輩女性経営者に言われた「女性の起業にはメダカとオタマジャクシの2種類ある」という言葉が今も印象に残っているとか。

 

「メダカはずっと同じ水槽にいて、少し家族を増やすくらい。オタマジャクシはやがて手足が生えて地上にも出ていく。自分がやりたいのはどちらなのか最初に見極めておけって言われたんです。私の場合は絶対にオタマジャクシだ!ってそのとき思いました。ちゃんと規模を大きくしていくことが、世の中をつくることにつながると考えていたので」



「役割」を整理することで、本当に大事なことが見えてくる

結婚して、子どもがいると、仕事をするにも「夫はどう思うか?」「子どもはかわいそうじゃないか?」など自分以外の人の都合や反応を考えがちです。それは「社会人」としての自分だけでなく「妻」「母」「娘」などさまざまな役割があって、それらが絡み合っているから。

 

荻野さん自身も、どれだけ仕事がうまくいっても解消できないモヤモヤを抱えていた悩んでいた経験が。そんなときに荻野さんが実行したのは「役割の棚卸し」。それぞれの役割で「求められていること」、「現状」、「やりたいこと」を洗い出していくことで、モヤモヤが自分のどの役割に紐づいているかが見えてくるのだそうです。荻野さんの場合、これによって元パートナーと円満な離婚につながったといいます。

 

『こじらせママ 子育てしながらココナッツオイルで年商7億円』より引用。

 

「私の場合、役割を明確にしたことによって、傷つけあわず、憎み合うこともなく離婚できたと思っています。日本人女性はまじめだから、期待された役割をすべてこなそうとして辛くなる。悩んだときは、一度すべての役割を書き出して、自分に大事なものは何なのか、どこが滞っているのかを見ることは大事だと思います」

 

役割をごちゃまぜにして、やりたくないことを嫌々続けていると、自己肯定感は下がるばかりです。自己肯定感を上げるためにも役割を明確にすることが役立ちます。もうひとつ自己肯定感アップのために荻野さんが実行しているのが「ほめること」!

 

子どものこともほめるし、自分のこともほめる。うちは毎日娘に“大好きだよ”“あなたは私の宝物”って伝えてます。娘からは“言い過ぎ!”って言われますけど、娘をほめることが、私を肯定することにもなる。自分のことも本当にささいなことでもほめてます。例えば手を見て“いい手だなー。よくがんばってる手だ!”って。そうやって自分の部位をほめることで、病気も減るんじゃないかと思うんですよね(笑)」

 

ママの自己肯定感が高まれば、きっと子どもをはじめ周囲の人もハッピーに過ごせるはず。荻野さんとお話していると、それを実感させられます。「役割の棚卸し」と「ほめること」、今日から実行してみたいですね!

「役割の棚卸し」についての詳しいやり方、実例については、荻野さんの著書『こじらせママ 子育てしながらココナッツオイルで年商7億円』でどうぞ。

 

 

『こじらせママ 子育てしながらココナッツオイルで年商7億円』

荻野みどり・著  ¥1400 集英社

 

ブラウンシュガーファースト公式サイト

https://bs1stonline.com/

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