民泊(家)やライドシェア(車)から注目を浴びた「シェアリングエコノミー」とは、一口に言うとネットのプラットフォームを介して行う個人間の貸し借りや売買をするサービスを指します。このシェアリングサービスは様々な分野に広がりを見せ、これまでにないシェアのスタイルも生まれています。
新しい旅の形として登場したのが「シェアトラベル」。これまで大型バスを使ってお決まりのコースをめぐるのが定番だった団体ツアーを、ぐっとコンパクト化。少人数用のワゴン車などの観光タクシーをシェアすることで、大型バスでは回らないローカルスポットでの観光や食事を楽しむという旅行スタイルです。
「シェアトラベル」の料金に含まれるのは、往復航空券+宿泊代(二食付き)及び観光タクシーのチャーター代。立ち寄り先での食事や施設利用料は各人で支払います。催行人数は2名~8名で、シェアする人数が増えるほどタクシー代が安くなるという仕組みです。
地方都市へ旅行するさい一番頭を悩ませるのが、移動手段。レンタカーを借りて回ると運転手への負担が偏り、慣れない土地だと時間配分に悩むことも。また、お目当ての観光地に着いてみたら駐車場が満車だった…というがっかりなことも多いもの。
その点、運転手付きの旅ならすべておまかせ。昼間からみんなでお酒を楽しむことだって可能です。とはいえ、観光タクシーを1日チャーターすれば万単位のお金がかかることはざらですから、それを数名でシェアできることのメリットはかなり大きいと言えるでしょう。
参加者はマイクロバスに乗り込んでスタート
「シェアトラベル」を企画したのは、「日本各地で長く続く、その土地らしいデザイン(=ロングライフデザイン)」をテーマに据えた観光ガイドブック“d design travel”を発行するD&DEPARTMENT。まず第一弾として、佐賀県を訪れるツアーがスタートします。
実施される4コースのうち、「続くものと変わるもの」をテーマに佐賀の文化と歴史を学べる、1泊2日の「佐賀のロングライフデザイン定番旅」コースを体験してきました。立ち寄りスポットはd design travel編集部がセレクトし自信を持って勧めるところばかり。8人乗りのマイクロバスには、立ち寄り先の見どころを語る編集長ナガオカケンメイさんの音声ガイドが流れるのもユニークです。
佐賀は焼き物天国。器巡りもドライバーにお任せ
佐賀のロングライフデザインたるものの代表は焼き物でしょう。伊万里焼など日本を代表する陶磁器の生産拠点で、器好きの人ならゆっくり回ってみたい土地のひとつ。今回は2日かけて、陶磁器の歴史や作り手の方に出会いました。
車に揺られてのんびりした田園風景の中を進み、初日に伺ったのは志田焼の里博物館。大正3年から昭和まで実際に稼働していた焼き物工場が、そっくりそのまま残され博物館に。設備はすべて本物、しかもほとんどオートマ化されていないレトロな工場を回りながら、焼き物づくりの全工程を解説していただきました。
実際に使用されていた巨大な窯の中にも入れます。時が止まったような敷地に立つと、まさに今へと引き継がれる「続くもの」の力強さを感じるよう。
若い作り手が生み出す新生有田焼
二日目に伺ったのは有田焼の里。
代々続く窯元の家に生まれた今村肇さんの「今村製陶」が手掛けるのは、まさに「変わるもの」の代表。本来の磁器には使えないからと処分されていた陶石を生かすために考え出したオリジナルの磁器を作陶しています。
「真っ白で高級品の磁器とは違い、きれいなだけではない今を生きる器を作ろうという気持ちを込めました」という今村さんの器は「JICON(磁今)」というブランド名。ほんのりと温かみを帯びた色合いは、和にも洋にもしっくりくる女子好きする器です。
ショップは町屋建築の心落ち着く空間。ついつい買い物熱が盛り上がってしまいます。
この旅では、他にも有田焼の伝統窯「源右衛門窯」や「佐賀県立九州陶磁文化館」、1900年のパリ万博に出品された大花瓶を展示している深川製磁「チャイナ・オン・ザ・パーク 忠次舘」をめぐり、すっかり目利きになった気分に。磁器の歴史に触れ、現在に触れ、買い求める楽しみを味わうことができました。
車がなくては回れない離れたスポットでも、地元のドライバーさんの運転なら時間配分まで全部おまかせ。こっそりうたた寝もOKです。
次回は、もう一つの旅の楽しみ、佐賀の「温泉」と「食」とをレポートします。
「シェアトラベル」の詳細・申し込みは d TOUR share travel SAGA https://d-travel.jp/
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松崎のり子 Noriko Matsuzaki
消費経済ジャーナリスト
消費経済ジャーナリスト。雑誌編集者として20年以上、貯まる家計・貯まらない家計を取材。「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。