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【7月のおすすめ映画】死と隣り合わせの豪華な食事『ヒトラーの毒見役』。在日コリアンの少女の青春『トロフィー』他2本
2026.07.10
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折田千鶴子さん
映画ライター
端艇部の息子Bのため鶏ハムを作り続けて約1年。いろいろ試してきた結果、電子レンジ調理法に定着。
『ヒトラーの毒見役』

死と隣り合わせの豪華な食事。若い女性たちの不条理な運命は
もはや語り尽くされたと思いきや、またも驚きの実話をもとにした映画が登場した。いや、独裁者ほど暗殺を恐れる人種はないと歴史が証明しているように、ヒトラーに毒見役がいてもさして驚きはない。だがキャッチコピーの〝食べて死ぬか、撃たれて死ぬか〟が示すように、拒絶が許されぬありがた迷惑な大役を命じられた若きドイツ人女性たちの運命に、動悸を速めずにいられない。世紀の悪行を背景にしながら「ナチス関連の映画に名作が多い」という、その系譜をまたも更新してしまった。
第二次世界大戦末期の1943年。ローザはベルリンの爆撃を逃れ、出征中の夫の両親が住む小さな田舎町に身を寄せ、夫の帰りを待つことに。そこは、ヒトラーがドイツ占領下のポーランドの森深くに構えた、〝狼の巣〟と呼ばれるナチス総統大本営のすぐ近く。ある日、ローザは6人の若い女性とともにトラックに乗せられ、ある場所に連れていかれる。そこで彼女たちは、ヒトラーが食事をする前に毒見する任務を命じられる。その日から親衛隊による監視のもと、時に銃を突き付けられながら、食事という名の毒見をすることに。殺伐とした状況下でぶつかり合いながら、彼女たちは少しずつ悩みや苦悩を分かち合い、運命共同体のように寄り添って連帯していく。そして翌年7月、大本営でクーデターが勃発。戦局も混迷を極めていく。
テーブルに並べられた豪華な食事に歓声を上げ、喜色満面でモリモリ食べ始めた一人が、任務を告げられ吐き出さんばかりに狼狽する序盤のシーンに、いかに当時の一般市民が飢えていたかがわかる。7人のキャラクターづけもうまい。食いしん坊、皮肉屋、面倒見のいい人、ヒトラー礼賛者もいるが、多くは戦争やヒトラーを憎んでいる。それが一般市民の感覚だったのだ。知的で都会的なローザは最初こそ浮くが、皮肉屋だが実は優しいエルフリードと厚い友情を育んでいく。食事が終わればホッと息をつき、中庭で長い時間を過ごし、数時間後には再び食卓に着く。食事のたびに吐くのをこらえ、必死で飲み込むつらさとは! 一方、そんな極限状態に置かれながら、いやだからこそか人肌を求めるよろめきや、ある上官の冷酷非道な表の顔に隠れた優しさや苦悩、音楽を愛する姿に打算もあれどふと惹かれる、心の揺れも痛いほど伝わる。その許されぬ恋が、一層ドラマに緊迫感をもたらす。本作は2012年、「ヒトラーの毒見役だった」と明かした95歳のドイツ人女性の告白をもとにしたイタリア人作家によるベストセラー小説を、イタリアの名匠が監督した作品だ。その距離感が本作をフィクションとしてメロドラマ仕立てで劇的に語らせ得たのだろう。被害者でもあった彼女が、口をつぐみ続けねばならなかった戦争のもつ不条理にも怒りが湧く。終盤、先のロマンスが決定づけたローザとエルフリードの運命に絶句。それを反芻するほどに、胸を引き裂かれずにいられない。
7月31日より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほかにて全国順次公開
『トロフィー』

今の日本で生きる14歳、在日コリアンの少女の青春
在日コリアンのソヒは朝鮮学校に通い、朝鮮舞踊の部活動に打ち込んでいる。ある日、日本人学校との交流会で日本人の少女、未来とK-POP好きなことで意気投合、一緒にライブに行くことに。チケット代のためソヒは家にある不用品を売り始める。北朝鮮のCDが高値で売れたことに味を占めたソヒは、父親が祖国から授与された〝勲章〞も売ってしまい……。祖国・北朝鮮を大切にする父、韓国にルーツのある母、日本で育ったソヒと弟。ルーツやアイデンティティに対する揺れ、親とわかり合いたいのに同時にイラついてしまう思春期の常。悩みつつ成長していく姿に、じわじわ感涙!
7月10日より全国順次公開
『きれっぱしの愛』

VÄST, ARTE FRANCE CINEMA
夫婦関係は壊れたけれど、まだ家族。ささやかな日々を綴る
芸術家のアンナは、北欧・アイスランドの田舎町で子ども3人と愛犬パンダと暮らしている。元夫は未練たらたらで何かと理由をつけては一家を訪れ、一緒に過ごそうとする。一方、アンナが家族の手も借りて制作した作品群を、海外から見に来たアートディーラーは、よく見もせずに自慢話だけして帰っていく。「何だかなぁ」という日々の出来事が、けれどなぜかおかしく、どこか愛しい。「あわよくば」を狙う元夫の情けなさも呆れつつ憎めない。愛犬パンダがカンヌ国際映画祭で(最高賞のパルムドールならぬ)パルム・ドッグ賞を受賞。破格級に可愛い!
ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開中
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配信 CINEMA&DRAMA
『ジェームズ・メイの日本探訪』

北海道から九州まで。珍道中に抱腹絶倒!
イギリスの人気司会者が日本を縦断しながら、日本特有の文化に触れていく。ロケ地の選定からしてディープでユニークだが、その土地ならではの体験やいろんなハプニングに、むしろ日本人が興味津々に。本音満載のコメントや返しも、さすがイギリス流でピリリとうまい。京都での合気道体験、足圧マッサージ(男性マッサージ師を見て不本意な表情に爆笑!)、念願の舞妓さん体験も。笑い上戸な彼が行く先々で巻き起こすプチ騒動にクスクス笑いながら、「おかしな国・ニッポン」という側面にあらためて気づかされる必見シリーズ。
Prime Videoで独占配信中
Staff Credit
イラストレーション/SAITOE
こちらは2026年LEE8・9月合併号(7/7発売)『カルチャーナビ』に掲載の記事です。
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