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佐々木はる菜

40代からの毎日をもっと心地よく。「まず、私」から始める『おとなのご自愛 漢方養生』

  • 佐々木はる菜

2026.06.03

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「朝起きた時から、なんだか身体が重い……」。40代に入った頃から、そんな疲れやすさや、以前はなかった小さな不調を感じることが増えました。
更年期という言葉が頭をよぎることもあるけれど、かといって明確な病気というわけでもない。
だからこそ、目の前のことに追われながら、「まあ、こんなものかな」とつい自分を後回しにしてしまう。

同じように感じているLEE世代の女性は、多いのではないでしょうか。

そんなことを考えていた、2026年5月、漢方薬剤師・樫出恒代さんの著書『おとなのご自愛 漢方養生』が出版されました。
読んでいるうちに、「少し立ち止まって、まず自分を見てみよう」と、張っていた糸がふっとゆるむような気持ちになった一冊です。

日々の中で、どうすればもっと自分を大切に、心地よく過ごしていけるのか。
その具体的なヒントについて、樫出さんにじっくりお話を伺ってきました。

『おとなのご自愛 漢方養生』
俳優や著名人からの信頼も厚い樫出さんが、直接語りかけてくれるような優しく温かい漢方エッセイが35本収録されています。『OurAge』で10年間続いた大人気連載から厳選されたものばかり!

ページをめくるたびに感じたのが、「なぜこんなにも、私たちの日常の疲れや、言葉にならない心の葛藤までわかってくれるんだろう」ということでした。
「手が温かい人は、内臓が冷えている」など、具体的でハッとさせられる言葉に触れるうち、自然と自分の身体にも意識が向いていきます。

樫出恒代先生

お話を伺ったのは……

樫出恒代(かしで・ひさよ)さん

HISAYO KASHIDE

漢方薬剤師・漢方ライフクリエーター

一人ひとりの心と身体に丁寧に向き合う漢方カウンセリングを実践し、東京・築地、新潟を拠点とするほか、「女性ライフクリニック銀座」にて漢方外来を担当。自身の深刻な不調を漢方で克服した経験を持ち、「一家にひとり漢方アドバイザーを」という想いのもと、がんばりすぎる女性たちが自分らしく心地よく生きるための知恵を届けている。

夕食後にパタッと倒れ込む……それ、寝落ちじゃなくて「氣絶病」!?

「夕飯を食べた後についソファで横になって寝てしまい、気づけば夜中。そこから残った家事をしてお風呂に入り、深夜にようやくベッドへ。翌日はお弁当と朝ご飯作りで早朝に起床するため、いつも睡眠不足。悪循環だと分かってはいるけれど、止められないんです」

そんな悩みを抱える女性が、樫出さんのもとには数多く訪れるといいます。

子どものこと、家族のこと、仕事のこと。
毎日マルチタスクで走り続けるLEE世代にとって、どこか他人事とは思えない光景です。

「それはエネルギー(氣)が枯渇して、脳のブレーカーがパタッと落ちちゃっている状態。私はそれを『氣絶病』って呼んでいるんです」

樫出さんはそう言って、やさしく微笑みました。

樫出恒代先生

実はこの「氣絶病」という言葉、患者さんとの会話の中から自然と生まれたものなのだそうです。

「普段よく寝てますか?」と聞くと、多くの方は「まあ普通ですかね」などと答える。
でも、「何時に寝て、何時に起きていますか?」「毎日同じくらい?」と一緒に少しずつ生活をたどっていくうちに、「あれ、私ちゃんと寝ていないかも」と気づく方も少なくないといいます。

寝るというのは本来、布団の中で少しずつ力が抜け、眠りに入っていくこと。
突然パタッと寝てしまうのは、「寝落ち」ですらなく、”氣(エネルギー)を失っている状態”なのだとか。
たくさんの方が、ベッドに辿り着く前に氣絶するような生活を送っている――。
そう気づいた樫出さんが、連載の中で「氣絶病」と書いたところ、「それ、私です!」という声がたくさん届いたそうです。

自分のことはいつも後回し。
「ちゃんと寝られてる?」と聞かれても、改めて考えてみると、自分が何時に寝て何時に起きているのかさえ、ちゃんと把握できていない。
毎日を回すことに精一杯で、その状態が普通になってしまっている。

樫出さんのお話を聞きながら、思わず「わかる……」とうなずいてしまいました。

自分が一番が難しいなら、「まず、私」にしてみる

先日、樫出さんの元を訪れたある患者さんの舌を見た時のこと。
漢方の考えでは舌の状態にも体調が表れるそうで、「あれ、胃腸がすごく疲れているね。最近食べすぎたりした?」と樫出さんが尋ねると、その方は大変驚かれたそうです。
詳しくお話を伺うと、食欲が落ちてしまったお母様のため、ゴールデンウィーク中に一所懸命に料理を作り、励ましながら自分も無理をして一緒にたくさん食べていたとのこと。
その優しいがんばりが、知らず知らずのうちに胃腸の疲れとなって身体に表れていたのです。

「『自分が一番大切』だと、どうしても難しく感じたり、罪悪感を持ってしまう方も多い。
 だから『”まず”、私』って言ってみてほしい。『まず』とつければ、その後にご家族や仕事のことなど、他にも大切にしたいものがちゃんと続いていくでしょう」

もっと自分を大切にしなきゃと思うと、どこか身構えてしまうのに、「まず、私」と言われると、ほんの少しだけ自分に目を向けてもいい気がしてきます。
すると「最近ちょっと無理していたかも」「ちゃんと休めていなかったかも」と、自分の小さな変化にも気づけるようになるのかもしれません。

「いつも100点満点のいい状態じゃなくていいんですよ。
 体調も気持ちも、お天気や季節と同じで常に変化するのが当たり前。その波に逆らわず、あれ?と思った時に『今の自分』に正直になれることが一番。
 だから、がんばることだけでなく、時には『だめでもいいじゃん!』と自分に声をかけ、ゆるめてあげることを目標にするのも素敵だと思うんです。
 自分の心と身体がのびのびと元気でいてこそ、結果的に周りの家族のことも笑顔で大切にできるはず」



「がんばりたい時は、少し無理したっていい」。エネルギーを回す30代・40代の生き方

樫出恒代先生

今回お話を伺っていて印象的だったのは、樫出さんが、ただ「がんばりすぎないで」と言うだけではなかったことです。 

「30代、40代は仕事でも子育てや家族のことでも、本当に多方面で忙しい時期ですよね。 少しずつ体調なども変化してくるけれど、まだまだエネルギーがある時代でもある。
 
 少し先行く立場からアドバイスさせてもらうとすれば、パワーを出し惜しみしないでほしい(笑)
 ちょっと無理をしてでもがんばりたいことがある時は、その気持ちを大切にして、思いきりやったっていいの!そうやってエネルギーをバンバン回していける世代なんだから」

時には無理をすることがあってもいい。

その言葉に、無意識に自分へかけていたプレッシャーが、少しやわらぐ気がしました。

ただし大切なのはその後に、ちゃんと自分を見ることだといいます。

外側の正解より、「私はどうしたい?」を大切に

今は情報が溢れていて、つい外側に答えを探したくなる時代。
でも、その状態が続くうちに、自分が本当は何を心地よいと感じるのか見失ってしまうこともある。
実際、樫出さんのもとを訪れる患者さんの中には、自分が何をしたいか、何が好きかもわからないというほど、心も身体も疲れ切ってしまっている方もいるのだとか。

「食べ物でも場所でも人でも、理由なくなぜか惹かれることもあれば、その逆もあると思う。そして季節や気候が毎日変化するように、私たちの体も気持ちも、揺らいだり変化したりして当たり前。
 自分の内側の感覚や気持ちに正直になって、一度それを見つめて受け入れて、今の自分に何が必要か、自分で取捨選択していくことが大切だと思います」

「冷え」と「ストレス」は、日常の小さな意識で変えられる

この本を読んでいて嬉しかったのは、自分を大切にするため、日常の中で今すぐできる具体的な方法もたくさん紹介されていたことでした。

『おとなのご自愛 漢方養生』目次
冷えや頭痛、イライラ、落ち込みなど、LEE世代の女性が抱えやすい不調について、具体的な漢方養生のヒントがたっぷり。思わず「これ、私かも」とページをめくりたくなります

漢方では、不調の大きな原因として「冷え」と「ストレス」がよく挙げられます。
それらが身体に良くないことは知っていたつもりですが、今回特に印象的だったのが、「脱・冷え性」のお話でした。

40代頃から、「昔は冷え性だったけれど、今は暑がりになった」と話す方が増えるそう。
でも実はそれ、冷えが治ったのではなく、内臓の冷えが進んでいるサインかもしれないといいます。

「手足が温かい」
「布団から足を出して寝たくなる」
「お腹や太ももに手を当てるとひんやりしている」

そんな特徴は全て自分に当てはまり、思わずドキッとしてしまいました。

だからこそ樫出さんは、「止まった流れを温めて流してあげること」を大切にしているといいます。
レッグウォーマーを履く。羽織れるものを一枚持つ。カイロをお腹や腰に貼る。
どれも特別なことではないけれど、「今の自分」を気にかける小さな行動でもあります。

何も考えず腕を振るだけ。中国の気功「スワイショウ」で自分をリセット

そして、ストレス対策として教えていただいたのが、中国の気功のひとつ「スワイショウ」。
やり方は簡単で、肩の力を抜き、半分目を閉じるような感覚で、腕をぶらぶらと振るだけ。

「5分から10分くらい、何も考えずにやってみる。すると、頭にのぼっていた『氣』がお腹(丹田)にポーンと落ちて、真面目な左脳が休まるんです。ストレス解消にすごくおすすめですよ」

私もすぐに試してみましたが、とてもシンプルな動きなのに、体の軸が整い、不思議と頭の中が静かになっていく感覚があり、とても気持ち良かったです。

「もっとちゃんと整えなきゃ」ではなく、「今の自分が少しラクになることをやってみる」。
そんなふうに考えていいんだと思うと、心が少し軽くなるような気がしました。

調子が悪くなる前に。私の魂が喜ぶ「お守り」を増やしていこう

今回、私の中で特に心に残ったのが、「『養生』とは、自分の魂が喜ぶこと」という言葉でした。
特別な食材を取り入れたり、厳しいルールを自分に課したりすることではなく、かと言って、ただ休むだけでもない。
「自分が心地よいと感じるものを知っておくこと」。
それが、養生の土台になるのだといいます。

樫出さんは、女性の厄年ともいわれる33歳頃から、自分に合う「マイ漢方」を持っておくことをすすめています。
本当に自分に合う漢方と出会えると、それは薬という役割だけではなく、バッグに入っているだけで安心できる、「お守り」のような存在になるのだそう。

そして、それは漢方だけではありません。
「これをすると、元気になる」
「ここに行くと、ほっとする」
そんな、自分の心と身体が喜ぶものを、普段から少しずつ増やしておくこと。

不調になると、つい外側に答えを探したくなるけれど、「私はどうしたい?」「今、本当は何が心地よい?」と、自分に問いかけてみる。
情報に振り回されやすい今の時代だからこそ、その習慣そのものも、きっと大切なお守りになるはずです。

取材後、私も改めて考えてみました。
自分は、何が好きで、どんな時に心がゆるむんだろう。

そんなふうに、自分の心地よさに少しずつ目を向け、自分にとってのお守りを増やしていくこと。
それこそが、40代からの毎日を、より良く自分らしく生きていくための「おとなのご自愛」なのかもしれません。

書籍情報

『おとなのご自愛 漢方養生』

おとなのご自愛 漢方養生』(集英社) 樫出 恒代(著)

冷え、謎の疲れ、不眠……。“大人の違和感”に優しく寄り添う、おとなのためのご自愛エッセイ。
夕食後にパタッと倒れ込むように眠ってしまう「氣絶病」や、手が温かい人ほど要注意な「内臓冷え」など、がんばりすぎる大人世代の心と身体をそっと紐解く一冊。俳優や著名人も信頼を寄せる漢方薬剤師の著者が、まるで直接語りかけてくれるような温かな言葉で「がんばらない養生」を具体的にアドバイスしてくれます。
10年続く大人気連載から厳選された35本のエッセイには、今日からすぐにとり入れられるツボ押しや食事法が満載。著者自らが描いた味わい深い挿絵にも心がほぐれます。
「漢方って難しそう」と思っている人にこそ、お守り代わりに開いてほしい、優しさに満ちた漢方養生ガイドです。

佐々木はる菜 Halna Sasaki

ライター

1983年東京都生まれ。小学生兄妹の母。夫の海外転勤に伴い2022年からの2年間をブラジル、アルゼンチンで過ごす。暮らし・子育てや通信社での海外ルポなど幅広く執筆中。出産離職や海外転勤など自身の経験から「女性の生き方」にまつわる発信がライフワークで著書にKindle『今こそ!フリーランスママ入門』。

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