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TAKARAZUKA STAR|ココロの景色

【雪組・華世 京さん】「お風呂の中で思い出す、私を形作るたくさんの景色」【宝塚スター|ココロの景色】

  • TAKARAZUKA STAR INTERVIEW ココロの景色

2025.07.17

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あのとき、あの瞬間、その目で見た、忘れることができない風景とは? そこから紐解く、タカラジェンヌの大切な思い出、美学、人生の歩み。

文字:TAKARAZUKA Star Interview

雪組

華世 京さん

華世さんの忘れられない景色
お風呂の中で思い出す、私を形作るたくさんの景色

KYŌ KASE

写真:ココロの景色・宝塚歌劇団雪組華世 京さん

KYŌ KASE・Profile

2020年宝塚歌劇団に入団、雪組に配属。入団6年目にして、すでに2度の新人公演主演を経験し、バウホール公演も決定。舞台上で放つキラキラした輝きと、大役も堂々と務め上げる舞台度胸が魅力の注目の男役スター。

宝塚歌劇公式ウェブサイト>>


ひとつひとつの景色と思い出が
積み重なって“今”の私がいるんです

KYŌ KASE

「5歳年上の兄がやんちゃだったこともあり、私のお転婆が霞んで見えたのでしょうか。両親いわく、幼い頃の私はとてもおとなしく手のかからない子どもだったそうです

そう語る華世さんが“人前で表現すること”に興味を持ったのは、幼稚園の頃にクラシックバレエを習い始めてから。「ただ、当時はとてもシャイだったようで。スキップをして教室の真ん中まで行きポーズを決めるというレッスンでも、一瞬ポーズをとっただけで即帰還。目立つのがすごく苦手だったのを覚えています」と振り返ります。

「それでもバレエが好きだったのはきっと、努力すればひとつ、またひとつと、できるようになっていくことがうれしかったから。“バレリーナになりたい”という目標を遠い未来に掲げるのではなく、“この技ができるようになりたい”“あの役を踊ってみたい”と目の前にある目標と達成感を積み重ねていく、それがすごく楽しかったんです」

水泳、体操、英会話、習字……幼い頃からたくさんの習い事を経験しましたが続いたのはバレエだけ。そんな華世さんの人生を変えたのが「今も仲よしの親友との出会い」です。

「私が『おなかが空いた』と言えば『余ったパンをもらいに行こう!!』と給食室へ直行するような、親友は私の想像の斜め上の言動をとるおもしろい人(笑)。彼女と出会ってから私の世界はぐんと大きく広がりました。実は、宝塚歌劇団の存在を教えてくれたのもその親友で。親子3代続く宝塚ファンである彼女と行った東京宝塚劇場で私の人生は激変。きらびやかな世界に圧倒され、息を忘れるほど夢中になり、観劇後は興奮冷めやらぬまま舞台写真を大量購入。あっという間に宝塚の虜になっていたんです(笑)」

宝塚音楽学校の受験を決めたのは、高校卒業後の進路を考えたとき。「やはり、あの舞台に立ちたい」と受験を決意して一回で合格。音楽学校を首席で卒業してからは、その華やかな存在感と堂々とした舞台姿で注目を集めるように。入団6年目、今の華世さんの“ココロの景色”を尋ねると、返ってきたのは「大切な景色があまりも多すぎて。ひとつに絞ることができません!!」という答えでした。

「私はお風呂が大好きで、毎日、湯船につかりながら一日を振り返るんです。すると、“今日はこんなことがあったな、でも、前もこういうことがあったよな”って、過去の思い出が次々とよみがえってくるんです。ひとつひとつの経験が積み重なって今の自分は作られる。それは大好きなクラシックバレエが教えてくれたことであり、今も昔も私がずっと大切にしていることです。初めて開脚ができた日の感動も、『合格できなかったら浪人します!』と胸を張った音楽学校受験の面接も、喜びと緊張で震えながら立った初舞台も……すべてが私を形作るかけがえのない大切な思い出。だから、選ぶことができなくて(笑)。遠くの未来にいる理想の自分だけでなく、過去の自分をしっかりと受け止めるのも大事なこと。この先も、大事にしたくなる思い出と経験を積み重ねながら歩いていきたいと思います」

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華世京さんに3つの質問!

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華世京さんはどんな人ですか?

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“外交的な自分”と“内向的な自分”を行ったり来たりしています(笑)

周りの人からはよく「明るいね」「元気だね」「陽キャだね」と言われます(笑)。確かに、大勢の人とワイワイ過ごすのは大好きです。お稽古場も、公演中も、雪組の皆さんと話すのがとにかく楽しくて。たわいもないことで私はずっと笑っているような気がします。そのように、私にはMBTIでいうところの“E(外交的)”な要素が多々あるのですが、同時に“I(内向的)”な一面もあって。なくてはならないのが“ひとりの時間”なんです。毎日、ゆっくりと湯船につかる“お風呂タイム”もそのひとつです。「今日の失敗を反省しよう」「上級生からこんな言葉をいただいて嬉しかったな」「先生からはこんなアドバイスをいただいた」など、一日を振り返り、記憶に刻み、気持ちをリセット。休日も一人で行動するのが好きで。映画も一人で見に行きますし、ごはんを一人で食べることも。“一人焼肉”どころか、この間は、ハードル高めの“一人鍋”にも挑戦しました(笑)。

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大切にしている“宝物”を教えてください

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思い出の写真と手紙が詰まったファイル

入団する前も、入団してからも、変わらずにずっと買い続けているのが、宝塚歌劇の舞台写真です。それを買う理由は、写真を見ると、そのときに見た景色や気持ちが蘇ってくるから。例えば『ベルサイユのばら-フェルゼン編-』の彩風(咲奈)さん(※前・雪組トップスター)の写真を見れば、退団されるときの言葉や姿を思い出しますし。『ROBIN THE HERO』の朝美絢さん(※雪組トップスター)の写真を見ながら、同じ舞台に立っているときの自分の気持ちを思い出すことも……。大事な記憶はもちろんですが、いつの間にか忘れていた記憶を思い出すこともとても多いんです。

そして、気づけば、購入した舞台写真はものすごい数に(笑)。一枚一枚、大切にファイリングしています。ちなみに、そのファイルには写真だけでなく、お手紙やハガキも入っています。中でも、私にとっての“宝物”になっているのが彩風さんからのお手紙です。音楽学校時代、彩風さんの大ファンだった私は「今度、音楽会でこの曲を歌います」「演劇発表会でこんな役をやりました」「何曜日の授業が大変なのですが頑張っています」「最近は体幹を鍛えています」なんて、まるで日記のようなファンレターを送り続けていたんです。そんな私の手紙にも彩風さんはお返事をくださって……。「同じ舞台に立つのを楽しみしているよ」と優しい言葉を届けてくださいました。

入団後、私は雪組に配属され、「彩風さんと同じ舞台に立つ」という夢が現実に。初めてお会いしたときにかけていただいた「いつも、お手紙ありがとうね」という言葉は忘れることができません。ちなみに、日記のようなファンレターを送り続けたことに関しては「変な手紙を送りつけてしまい、本当にすみませんでした」と後日謝罪。「いや、嬉しかったよ」と笑ってくださったのもまた、私の大切な思い出です。

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入団6年目、男役としてどんな時期にいると感じていますか?

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度胸のよさには少しだけ、自信を持てるようになりました

新人公演主演やバウホール公演主演をはじめ、たくさんの経験を与えていただいていることに感謝するばかりの毎日です。ただ、その期待に応えることができているのかというと、胸を張って「できています!」と言える自分はまだいなくて。毎回、高い壁にぶつかっては「私はこんなにも未熟なのか」と痛感するばかり。落ち込むことも多いのですが、そのときは過去を振り返り、「あのときとは違うことで悩めているから、ちゃんと成長しているはず」と自分自身を励ましています。

入団してからの時間を振り返ると、「自分の個性について」ずっと悩み続けてきたような気がします。『ODYSSEY -The Age of Discovery-』に出演したときには、演出家の野口(幸作)先生から「もっとカラーが欲しい」と言われたことも。自分の個性とは、カラーとは、武器とは、どうしたら見つかるのか……。正直、今もそれはよくわからないのですが。どんなときも「やるしかない!」と思い切って舞台に立てる、この度胸のよさには自信を持っていいのかなと、最近は少し思えるようになりました。

それができるのは、舞台が私にとって本当に楽しい場所だからなのだと思います。楽屋の化粧前で緊張に震えることはあっても、舞台に出てしまえば、心から楽しいと思える。しんどいことがあったとしても、舞台の上では役に没頭することができる……。「もう始まる!」「今からあがいてもしょうがない!」という気持ちで舞台に立つ、それは自分の中に役や踊りが染み込んでいるからできることなのだとも思います。もっともっと、私は思い切り舞台を楽しみたいから。この先も稽古場で練習を積み重ねていきたいと思っています。

写真:華世 京さん

NEXT STAGE


ミュージカル・リフレクション
『ステップ・バイ・ミー』

写真:『ステップ・バイ・ミー』
©宝塚歌劇団

初主演映画の撮影を控える若手俳優・ユージーンと、事故によって記憶を失っている女子大生・エイミー。二人は互いに、不思議な縁で巡り合い——。若者たちのひと夏を、ポップ&ノスタルジックな音楽で彩る青春ミュージカル。主演:華世京

宝塚バウホール
8月19日〜8月31日


Staff Credit

撮影/木村 敦(Ajoite) 取材・文/石井美輪
こちらは2025年LEE8・9月合併号(7/7発売)「ココロの景色 vol.7 華世 京さん」に掲載の記事です。

▼ 「ココロの景色」連載一覧はこちら

文字:TAKARAZUKA Star Interview


TAKARAZUKA STAR INTERVIEW ココロの景色

宝塚歌劇団男役スターが登場する人気連載の第2弾! あのとき、あの瞬間、その目で見た、忘れることができない風景とは? そこから紐解く、タカラジェンヌの大切な思い出、美学、人生の歩み。

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