TAKARAZUKA STAR|ココロの景色【SPECIAL】
【花組・希波らいとさん】「その時々、自分の心を映す劇場の客席」【宝塚スター|ココロの景色】
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TAKARAZUKA STAR INTERVIEW ココロの景色
2025.03.20
あのとき、あの瞬間、その目で見た、忘れることができない風景とは? そこから紐解く、タカラジェンヌの大切な思い出、美学、人生の歩み。

花組
希波らいとさん
希波さんの忘れられない景色
「その時々、自分の心を映す劇場の客席」
RAITO KINAMI

RAITO KINAMI・Profile
2017年、宝塚歌劇団に入団。花組に配属される。『花より男子』の抜擢で注目を集め、2度の新人公演主演を経験。今年は初のバウホール公演主演も。恵まれた長身とスタイルを武器に華やかな存在感を放つ男役スター。
お客様が抱えている“日々のいろいろ”を
宝塚の舞台の力で吹き飛ばしたい
RAITO KINAMI
「お芝居に興味を持つきっかけは漫画『ガラスの仮面』でした。それ以来、いつかどこかの芸術学部で表現を学べたらと考えていたのですが、そんなときに出会ったのが宝塚音楽学校。大学に進学するよりも早くお芝居を学べることを知り、そこに魅力を感じた私はすぐに受験を決めたんです。宝塚についてあまり詳しく知らないままに……」
知らないからこそ「受験も緊張せずに受けることができた」と笑い、「昔は、“未知ゆえの怖いもの知らず”を力に変えて、壁を乗り越えていた気がします」そう続けた希波さん。入団2年目にして『花より男子』の西門総二郎役に抜擢されたときもそれが大きな力になったそうです。
「もちろん、当時から大変なことだという自覚はありました。でも、未熟さゆえに見えていないことも多く……。本当の意味でその重大さに気づいたのは学年が上がってから。経験を積み舞台に立つ責任や怖さを知ってからなんです」
未知ゆえに体当たりで宝塚の世界を学んできました。
「ただただ芝居を学びたくて飛び込んだ世界だったので、実は最初、男役を演じることに戸惑いもありました。でも、今は違う性別を演じる楽しさに夢中です。宝塚に入団しなかったら男性の人生を経験することはきっとなかったと思うので。それを経験できることはすごいことだなと」
そんな希波さんの心に残る景色は“舞台から見える客席”です。劇場の客席を見て自分が何を思い感じるか、それは学年と経験を積み重ねる過程でどんどん変化していくもの。「それはまるで自分の心の映し鏡のようだ」と語ります。
「例えば、初舞台では“これからこの場所に立っていくんだ”という気持ちが強く、力が入りすぎているからこそ視野がとても狭かった。一人でのセリフや場面をいただいたときは“この空間を埋めることができるのか”不安になったこともあります。新人公演主演を務めさせていただいたときは、舞台の真ん中に立つには覇気が必要なんだなと、トップスターさんのエネルギーの偉大さを痛感。視野を広げて客席を見られるようになってきてからは、“舞台に立つのが怖い”と感じてしまうこともありました……」
不安に負けそうなときには、柚香光(ゆずかれい)さん※からの「お客様も身近な人も“みんなを自分が幸せにする!!”というマインドで舞台に立って!!」という言葉を思い出すそうです。
「実は私、ネガティブで繊細な一面もあって。日々、つまずくことも多いんです。人生は思いどおりにならないことが多々あるのも知っていますし、自分もいろんな悩みや迷いを経験してきたからこそ、せめて舞台を観ているときは……。グレーな世界からカラフルで美しい世界へと誘い、お客様も抱えているであろう“日々のいろいろ”を吹き飛ばしたいなと思うんです。客席に愛を届けるためには、自分も愛に満ちていなければいけない。“みんなを幸せにしたい!!”という思いは私自身を強くしてもくれました。以前は怖いと感じる時期もありましたが、今の私は、愛情いっぱいの視線で客席を眺めながら舞台に立つことができています」
※=元花組トップスター。2024年退団。
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希波らいとさんに3つの質問!
1
希波らいとさんはどんな人ですか?
1
ネガティブだけど、結果、ポジティブ
基本、明るいのでポジティブに見られがちなのですが、実は繊細でネガティブなんです。ただ、どんな状況に陥っても「絶対に戻ってやる!」と必ず戻ってくるので……。やっぱり、根本はポジティブなのかもしれませんね(笑)。
自分自身に対してはすごく負けず嫌いでもあります。悩むことも多いのですが、「早く前向きな自分に戻りたい!」「負けたくない!」「悩んでいる時間がもったいない!」って、いつも自分のお尻を叩きまくって浮上しています(笑)。
2
役者・希波らいとさんの“武器”を教えてください
2
型にハマらず、遊び心を持って、創造性を磨く力
一時期、自分の個性について悩んだことがあるんです。その個性を必死に探したり、見つけたり、作ろうとしたこともあるのですが、「個性は自分の選択の積み重ねでできていくもの。頑張らなくても、自分の好き嫌いを集めて感性を磨いていけばいいんだ」と、次第に思うようになりました。
そんな私の背中を押してくれたのが、柚香(光)さんが退団するときに下さったお手紙です。そこには「らいとの華やかさ、存在感、オリジナリティ、他にもいろんな魅力があるけれど、何気に私が好きなのはそのセンス。ファッションの遊び心」という言葉や、「決まったものを型通りではなく、自分で組み合わせていくことの面白さを知っている、その創造性が大きな強みになっていってほしいし、なるだろうと思う」といったありがたい言葉が綴られていて……。私のこだわりや大切にしていることを汲み取り、肯定してくださったように感じて、嬉しさに心が震えました。
様々な概念に囚われることなく、遊び心を持って、自分の内側から出てくるものや感性を大切に表現していく。この先もその創造性を希波らいとの武器にしていけたらいいなと思っています。
3
休日はどんなことをして過ごしていますか?
3
やりたいことを全て詰め込み、生き急いでいます(笑)
宝塚の舞台に全力を注ぐのはもちろんですが、自分の個性を磨くためにも、己の感性の引き出しを豊かにしたいという思いもあって。ギターも弾きたいし、いろんな業種の友達と会って話をしたいし、大好きなインテリアのことも考えたいし、本も読みたいし、映画も観たいし、観劇だってしたい。さらには、最近、ロックダンスやヒップホップダンスも習い始めてしまい……。休日はいくつものやりたいことを詰め込んでしまいがち。結果、いつも忙しくて大変なことになっていて。周りからはよく「生き急いでる」と言われています(笑)。
私があれやこれやといろんなことに手を出すのは、好奇心旺盛な性格のせいでもあるのですが、「スイッチの切り替え」のためでもあるんです。お芝居の楽しみは、自分と違う人生を経験できること。自分の人生では出会うはずのない出来事や感情や価値観に出会えること。私は役の人生を全力で生きようとしてしまうからこそ、役や作品に引っ張られてしまうことも多くて。だからこそ、ひとつの世界に執着せず、舞台から離れたら違う世界に触れてスイッチを切り替えているのかもしれません。
でも、それは舞台人としての力に繋がることもすごく多くて。例えば、コンサート会場を訪れて客席に座る。そこで、お客さんたちが楽しんでいるのを肌で感じると「自分もこんなふうに楽しんでもらえる存在にならなければ」と、舞台への情熱にまた火が灯ったり。「ああ、宝塚のお客様もきっとこんな気持ちなのだな」と、自分の仕事に改めて誇りを持てたりするんです。

NEXT STAGE
ミュージカル・ロマン
『儚き星の照らす海の果てに』

豪華客船タイタニックの設計に携わったトーマス・アンドリューズ。幼なじみのヘレンとの恋や男同士の絆を交えつつ、愛と夢を追い求めた男の生き様を描く壮大なミュージカル・ロマン。主演:希波らいと
宝塚バウホール
3月21日〜4月3日
Staff Credit
撮影/柴田フミコ 取材・文/石井美輪
こちらは2025年LEE4月号(3/7発売)「ココロの景色 vol.4 希波らいとさん」に掲載の記事です。
▼ 「ココロの景色」連載一覧はこちら

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