Dear my Love…
竹下玲奈さんの
娘に受け継ぐものがたり
vol.9
カシミヤニット
一生を賭けた仕事から、娘に伝えたいと願う心地よさ

ドゥーズィエムクラスのお店で見つけた“クイーンアンドベル”のアランニットは、決して手を出しやすい価格ではありませんでした。何度もお店に通って何度も触れて、“いっぱい着ればいい!”と、思いきって購入。おばあちゃんが手編みした、という物作りの背景も背中を押してくれました。このニット以降、カシミヤの魅力に取り憑かれ、今では私のクローゼットにはカシミヤのニットがたくさん。穴が開いたら毛糸で繕い、毛玉は取りすぎず、丁寧に丁寧に着ています
竹下玲奈さん
14歳からモデルを始めて、2025年で30年目を迎えます。“この道一筋”というのもおこがましい表現かもしれませんが、私にできることはやはり、この仕事しかありません。
この30年間で、いろいろな経験や想いをいっぱいしました。いいこともたくさんあったけれど、つらいこともそれ以上にあったかな。その中で何か私に誇れることがあるとしたら、それは、とてつもなくたくさんの服を着てきたということ。それだけは紛れもない事実です。
“娘に受け継ぎたいもの”は、見えるものだけじゃなく、見えないものも含んでいます。もっと言えば本当は、ものを受け継ぎたいんじゃなくて、ものを通した私の“経験”を伝えたいんだなって、連載ももうすぐ10回目を迎えようとする今、あらためて感じています。その想いを代表するもの――今回、カシミヤのニットを取り上げたのは、それが理由です。
私は、カシミヤのニットこそ、“一生もの”だと思っています。たくさんの服に袖を通すことで知った、カシミヤだけが与えてくれる心地よさ。それを娘にも知ってほしい。そう思い、娘がまだ幼いときからせっせとカシミヤのニットを着せてきました。質のよいものを知ってほしいと願うのは、もしかしたら親のエゴかもしれません。私がどんなに頑張っても、大人になった娘はカシミヤに見向きもしないかもしれません。でもやっぱり、モデルという職業を持つ母が直接娘に伝えられることって、これくらいしかないんです。
新年を迎えるせいか、柄にもなく少し感傷的なお話になってしまいましたが(笑)、物理的に見てもカシミヤのニットは一生もの。古着屋さんで半世紀前のカシミヤを手にしても、その素材のよさはきわだっています。今回着たニットはもう20年近くも前に新品で買った一着。毎冬、休むことなく着ているので、毛がやせた部分があったり、毛玉ができていたり、実はこっそり取れないシミがあったりもするのですが、一生手放すつもりはありません。娘に受け継ぐときを別にしては。

竹下玲奈
Rena Takeshita
モデル
1981年、鹿児島県生まれ。14歳でデビュー以来、トップモデルとして活躍。群を抜いたセンスに業界内のファンも多く、“モデルが憧れるモデルNo.1”との呼び声が高い。『LEE』では、モデルとしてはもちろん、その愛情あふれるライフスタイルが読者の心をつかんでいる。
Staff Credit
モデル・スタイリング/竹下玲奈 撮影/長山一樹(S-14) 取材・原文/磯部安伽
こちらは2025年LEE1・2月合併号(12/6発売)「竹下玲奈さんの娘に受け継ぐものがたり」に掲載の記事です。

竹下玲奈 Rena Takeshita
1981年、鹿児島県生まれ。14歳でデビュー以来、トップモデルとして活躍。群を抜いたセンスに業界内のファンも多く、“モデルが憧れるモデルNo.1”との呼び声が高い。『LEE』では、モデルとしてはもちろん、その愛情あふれるライフスタイルが読者の心をつかんでいる。
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