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映画『ゆきてかへらぬ』に出演

【木戸大聖さんインタビュー】自分の愛や本能や欲望に全振りした人生だったのかな

2025.02.19

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自分の愛や本能や欲望に全振りした人生だったのかな

木戸大聖さん

木戸大聖さん

『First Love 初恋』で主人公(佐藤健)の若き日を演じて注目を浴びるや、瞬く間に数々の作品で強い印象を残し始めた木戸大聖さん。そんな木戸さんが、今作『ゆきてかへらぬ』で、今もカリスマ的人気を誇る詩人の中原中也を演じ、またも代表作を更新しました。

「ちょうど『First Love』の反響が聞こえてきた頃にお話をいただいて。こんな大きなトライがあるのかと少し戸惑いつつ、自分の殻を破るいい機会になるだろうという期待もありました。中也に関しては、有名な”汚れつちまつた悲しみに”というフレーズや教科書で得た程度の知識しかなかったので、さまざまな詩を読んだり調べたり。自分のフィルターを通して演じないとリアリティが生まれないと思ったので、僕なりの中也像を作ろうと臨みました」

駆け出し女優の泰子、早熟な中也。後の日本を代表する文芸評論家、小林秀雄。互いに惹かれ、認め合い、絡み合うドラマティックな関係を、木戸さんはこう紐解きます。

「僕は『タバコとマントの恋』という詩を読んだとき、泰子の存在は中也にとって自分の不足しているものを埋めてくれる存在だったんだと思ったんです。だからずっと隣にいた泰子が小林のもとへと去ったとき、中也はずっと彼の中にあった強烈な孤独に襲われたんです。でもその後中也は小林と泰子が暮らす家を訪れたり、3人で遊びに出かけたりする。その感覚というのは僕の中にはなくて、理解するのには苦労しましたね。3人の愛の形――特に中也が泰子に向ける愛は、少しイビツですよね。でも体面は関係なく、中也と小林の間にある愛も含め、自分の愛や本能や欲望に、みな忠実に全振りした人生だったのかな、と」

終盤、中也が次第に狂いゆく、木戸さんの鬼気迫る演技も必見です!

「物語に沿って撮影していただけたので、前半から少しずつ体重を絞り始めました。おかげで中也が狂いゆく後半では、”少しやせすぎ”と監督に指摘されたくらい。中也がいわゆる“奇行”に走る場面では、理由もなく、ただもう“そうしたいからそうするんだ!”と、何も考えずに動くように心がけて演じました」

泰子役の広瀬すずさん、小林役の岡田将生さんとの共演からも、大きな刺激を受けたようです。

「広瀬さんは瞬発力がすごい! スタートの瞬間、数分前に話していたときとは別の人がそこにいる感覚があり、少しでもゆるむと完全に飲み込まれる脅威を感じました。ただ中也自身、泰子と同じ目線に立とうと必死で大人ぶっていた面もあった。それが自分と重なって、同じように対峙できたように感じます。岡田さんは登場された瞬間、大きなものがバッとストーリーに加わった感覚がありました。ただ座っているだけでオーラや存在感を出されるスゴさは、いろんな役を演じてこられた”分厚さ”なのかな、と。そんな2人に無我夢中でぶつかって、返してもらえたという幸福感を覚えた現場でした」

今や引く手あまたで多忙を極める木戸さん。そんなとき、どう気分転換して鮮度を保つのでしょうか。

「友達とごはんに行って話をすること。それが僕の精神衛生上、必要で。特に地方での撮影では一人で食べることが多かったので、周りを見るとうらやましくて寂しくて(笑)。人と話すのが好きなんだと自覚しました」

PROFILE

1996年12月10日、福岡県出身。2017年より俳優として活動。’22年にNetflixオリジナルシリーズ『First Love 初恋』で注目される。主な出演作にドラマ『ゆりあ先生の赤い糸』(’23年)、『忍びの家 House of Ninjas』『万博の太陽』『9ボーダー』『海のはじまり』(すべて’24年)。映画『きみの色』(’24年)ではアフレコも担当。
Instagram:taisei_kido_
公式サイト:https://tristone.co.jp/sp/actors/kido/

映画『ゆきてかへらぬ』

『ゆきてかへらぬ』
©︎2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会

大正時代。20歳の新人女優・長谷川泰子(広瀬すず)は、17歳の学生、中原中也(木戸大聖)と惹かれ合い、一緒に暮らし始める。ほどなく京都から東京に越した2人の家に、中也の詩人としての才能を高く評価する小林秀雄(岡田将生)が訪れる。慕い合う小林と中也に泰子は複雑な気持ちを抱くが、小林は泰子にも惹かれ始める。2月21日よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー


Staff Credit

撮影/橋本紗良 ヘア&メイク/石邑麻由 スタイリスト/富田彩人 取材・文/折田千鶴子
こちらは2025年LEE3月号(2/7発売)「カルチャーナビ」に掲載の記事です。

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