LIFE

今また大ブーム!「こわ~いエンタメ」

人は恐怖の魅力から逃れられない……

いま再びのホラーブームで注目!雨穴(うけつ)さんスペシャルインタビュー

2024.09.08

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人は恐怖の魅力から逃れられない……

今また大ブーム!「こわ~いエンタメ」

話題沸騰の『変な家』が象徴するように、小説や映画はもちろんYouTube動画やSNS発の作品まで、今、再びホラーブームが来ています! そんな“ちょっとこわ~い”世界、一緒に覗きませんか?

映画版も大ヒット! 今のホラーブームの立役者

『変な家』著者 雨穴(うけつ)さんスペシャルインタビュー実現!

雨穴さん

雨穴

UKETSU

PROFILE

覆面で活動するウェブライター、ホラー作家、YouTuber。’18年よりウェブメディア「オモコロ」で執筆活動を開始。投稿作品『【不動産ミステリー】変な家』とYouTube動画が話題に。加筆し’21年に小説『変な家』(飛鳥新社)を出版。他の著書に『変な絵』(双葉社)、『変な家2~11の間取り図~』(飛鳥新社)など。

『変な家』(飛鳥新社)、『変な絵』(双葉社)、『変な家2~11の間取り図~』(飛鳥新社)
この間取り、どこかおかしい……

“怖い”って生理的に訴えるから子どもにもわかりやすい

今、世界的にホラー作品が次々生み出され、日本でもホラー人気はますます熱いものに。その火付け役の一つが小説『変な家』(シリーズ累計250万部突破!)。知人から相談を受けて“ちょっと変な”住宅の間取り図を手にした筆者が、知り合いの設計士の手を借りて、そこに隠された恐ろしい秘密を暴いていく――。一つのウェブ記事から一大ムーブメントを巻き起こした雨穴さんに、誕生秘話をお聞きしました。

「最初は『ウケないだろうな』と思っていました。ネットでは派手で簡潔なものほどバズるので、モノクロの間取り図しか出てこないうえに、長々と説明的な言葉が続くこのコンテンツは、人気が出るはずはない、と。でも、いざ公開すると瞬く間に拡散されたので驚きました。その後すぐに出版社から声をかけていただきまして『続きを書いて一冊の本にしましょう』と言われました。だいぶ悩んだのですが『まあ、でもせっかくだからやってみるか』と」

どこまでも力が抜けた雨穴さんですが、「でも頑張って考えました」と、第二章以降はすべて書き下ろし、ベストセラー小説『変な家』が誕生しました。

「当時はスーパーで働いていたので、忙しかったですね。しかもフルタイムなので大変でした。仕事をしながらアイデアを考えて、在庫数を書き留めるふりをしてメモする……みたいな毎日でした」

そんなごく普通の日常の中から生まれたとは思えない雨穴さん独特の文章運び、次第にゾクッと冷えてくるような世界観は、多くの人を魅了します。

「活動を始めた頃はおもしろくて笑えるものを目指していたのですが、どこか無理しているような感覚もありまして。では、自然体で作れるものは何だろうといろいろ試した結果、ホラーに落ち着きました。ホラーの中でも謎解きを主軸とする『ホラーミステリー』というジャンルですね。『変な家』は江戸川乱歩の影響もあって、古典的なホラーミステリーになりました。例えば“この後、あのような恐ろしい出来事が起こるとは、当時の私は思いもしなかった”など、古めかしい表現が随所に出てくるのですが、そういったわかりやすさが、お子さんたちにも喜んでいただけたのではないかと思っています」

目指していたのは「文芸作品としての質」よりも「エンタメとしてのわかりやすさ」だったそうです。

「当時はズブの素人でしたから、格式高い文学作品を目指そうだなんて思ってはダメだ、とにかくわかりやすくておもしろいものを作ろうと考えました。幸い、オモコロというメディアで、読みやすい文章の作り方を勉強していたので、その経験が生きました」

ドキュメンタリーを装った“モキュメンタリー”手法による、お化け以上にゾワッとさせる“ヒトコワ”。そのリアリティに、“実在するのでは!?”とネタ元探しが行われるほど。でも、そのキャラクターの生まれ方はというと。

「まずストーリーを考え、その後にキャラクターを作っていきます。『こんな殺し方をする人はきっとこんな性格だろう』という感じで、必然的に怖いキャラができてしまうんです。本当はもっとさわやかな人を書きたいんですけどね……」

雨穴さん

これは親御さんたちにお願いしたいことなのですが……

今や仮面姿の雨穴さん自身が絶大な人気。雨穴さんのようなホラークリエイターになりたい子どもたちに、何かアドバイスをお願いします!

「『雨穴』というキャラをきっかけに、お子さんたちが本の世界を知ってくれたら、とてもうれしいです。これはどちらかというと、親御さん方にお願いしたいことになってしまいますが……。自分の子ども時代を振り返ると、グロい絵を描いたり怖い工作をしたりして、親から心配されたことがよくありました。でも、意外にそれが今の仕事につながっているんですよね。『この子はこんな遊びをしていて将来大丈夫だろうか?』と不安になることがあるかもしれません。そのお気持ちは本当によくわかりますが、ほんのちょっとだけ見て見ぬふりをしてあげてほしいです。で、そのうえでお子さんたちに伝えたいのは『本当に自分がやりたいこと以外は、お父さんお母さんの言うことは聞いたほうがいいよ』です。勉強とお手伝いは大切です」

雨穴さんおすすめ「こわ~いエンタメ」

ANIME

大人でも怖い! 本格ホラーアニメ
『学校の怪談』

『学校の怪談』
©講談社・フジテレビ・アニプレックス・ぴえろ

「児童書のほうも読んでいましたが、このアニメは本当にクオリティが高いです。中でも第10話『出口なきトンネル 穴まねき』がおすすめです。トンネルのお化けの話で、怖いだけでなく悲しくもあり、最後のシーンは『これを子どもに見せるのか』と唸ってしまいます」(雨穴さん)



COMIC

どんなホラーよりも怖くておもしろい!
『銀と金』福本伸行

『銀と金』福本伸行

『カイジ』などの作者による、2人の男が裏社会で成り上がっていく死闘を描いた賭博コミック。「一番怖かったのは、第2巻から始まる『有賀編』。ヤクザの組織が偶然捕まえた殺人鬼をネタに警察と裏取引をしようとするのですが、とにかく怖くておもしろいんです!」(雨穴さん)

MUSIC

これは耳で聴くホラーです
『Cabin Essence』THE BEACH BOYS

1966年に制作にされたが当時は未完に終わった、いわくつきのアルバム『SMiLE』収録曲。「穏やかなカントリー調から始まるのですが、それが突如破られ、“狂気の世界”が始まります。ビーチボーイズは大好きで、特にこの時期の作品には、自分の作るものも影響を受けています」(雨穴さん)

雨穴さん

Staff Credit

取材・原文/折田千鶴子
こちらは2024年LEE10月号(9/6発売)「今また大ブーム!「こわ~いエンタメ」」に掲載の記事です。

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