LIFE

私のウェルネスを探して/福田麻琴さんインタビュー後編

【福田麻琴さん】子どもが小さい頃は働くことに罪悪感を覚えたことも…人気スタイリストを救った「魔法の言葉」

  • LEE編集部

2024.05.04

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福田麻琴さん

引き続き、福田麻琴さんのインタビューをお届けします。

朝早くからの取材にもかかわらず、「撮影用に」と用意してくれた服や小物、両手いっぱいの荷物を抱えて来てくれた福田さん。現場を和ませてくれる気さくな人柄、笑いを交えた楽しいトーク……ファッションセンスはもとより、圧倒的な人間力に会う人は誰もが福田さんのファンになります。

後半では、福田さんのパーソナリティが育まれたファッションのエピソードや自身の子育て、11歳になるお子さんについて聞きます。また、LEEオリジナルブランド『12closet』 (トゥエルブクローゼット)では、福田さんとのコラボアイテムを作り始めて10年目を迎えました。思い出をダイジェストで振り返りながら、これから挑戦したいことについても聞きます。(この記事は全2回の第2回目です。第1回目を読む

母が作ってくれたベーシックなアイテムも好きだったけど、祖父母に買ってもらったベロアのワンピースも嬉しかった少女時代

福田さんは、埼玉県生まれ。両親、妹、弟の5人家族で育ちます。活発で仕切るのが好きなリーダータイプの元気な女の子でした。母親が洋裁好きだったこともあり、妹とお揃いのスカートを作ってくれたりすることもありました。福田さんは嬉しかった反面、憧れていたものがあったそうです。

「母の好みがデニムやTシャツなどシンプルでボーイッシュだったんです。ベーシックなアイテムが中心だったので、フリフリのスカートやブラウスに憧れていました。祖父や祖母とのお出かけの時にこっそりベロアのワンピースを買ってもらったりして。母は苦笑いしてましたけど、それが正直嬉しかったんですよね」

福田麻琴さん

「麻琴」という名前は、日本初の女性操縦士を描いた連続テレビ小説『雲のじゅうたん』の主人公の名前にちなんだもの。父親が強く自立した女性になってほしいと願ってつけました。「最近では、それ以上強くならなくていいよ、と言われています(笑)」。小さい頃の夢は「大工さん」でした。

「単純に家を作ってみたかったからだと思います。他にも“”幼稚園の先生になりたい”と思ったり、“獣医さんになりたい”と思っていた時もありました。今でも建築が好きだったり、生き物が好きだったりはするので、変わっていない部分も多いですね」

スタイリストへの転向、フランス留学、結婚。振り返ると、どんな時も「直感でピンと来たほうを選んできた」

趣味がファッションにシフトしたのは、中学生の頃。初めて上野に行き、アメカジや古着にハマったのをきっかけにアメ横に通うようになります。そこからセレクトショップの存在を知り、セントジェームス、プチバトーが好きになり、高校生になる頃には、渋谷がファッションの聖地に。『オリーブ』に憧れ、フレンチカジュアルと出会い、今の福田さんのアイデンティティが確立されていきました。

福田麻琴さんとLEEweb副編集長がゆるトークをくりひろけるポッドキャスト『Stylist福田麻琴の「おしゃれって何さ!?』収録風景。毎週土曜日20時更新です!

将来はファッションの仕事に就くことに目標にし、文化服装学院に進学。選んだのはスタイリスト科でしたが、その時はスタイリストがどういう仕事なのか理解しておらず、選んだ理由は「課題が少ないから(笑)」。色々なことを広く浅く(!?)学びましたが、一番の収穫は気の合う友人がたくさんできたこと。

「毎日がとても楽しかったです。自分と同じ服好きが集まり、ここではどんな格好をしてもいい。決められたルールもなく、好きな服を着られることにとても自由を感じました。ファッションも民族系、パンク系、スポーツ系とみんな個性的。私はその時アウトドアファッションが好きで、パタゴニアのジャケット、ピカデリーのパンツ、足元はクラークスというスタイルが定番でした」

福田麻琴さん

卒業後は、トゥモローランドで販売員を1年ほど経験した後、スタイリストのアシスタントに。振り返ると、どんな時も「直感でピンと来たほうを選んできた」と福田さんは言います。スタイリストへの転向、フランス留学、結婚。人生を計画的に進めることはなく、その場その時で良いと思うものを判断して選び、進んできました。

「ぶっちゃけ“うっかり人生”なんです(笑)。やりたいこと、楽しいほうをひたすら選択した結果が今だとしたら、それでいいと思っています。結婚も出産もそう。仕事も同じで好奇心で選びます。新しいことに挑戦するのが好きで、それが何よりも楽しくてワクワクします」



何よりも大切にしているのが11歳の息子さん。子育てのヒントは「本」から得ることも

そんな福田さんが何よりも大切にしているのが11歳になる息子さん。子どもの教育や習い事について悩んできた時期もありましたが、子どもも“個”なんだと最近痛感したそうです。

「嫌がっているのに塾に行かせようとしたり、習い事をさせようとしたこともありましたが、好きなことしかできないんですよね。だって私がそうなんだもの。悩んでいる親御さんも多いと思いますが、任せることも大事かなって。もちろん、親に導かれて道を切り拓く子もいますが、好きなことは放っておいてもやるんですよね」

息子さんが描いた絵をプリントした世界に一つだけのポーチは、アニヤ・ハインドマーチでカスタムオーダーしたもの。

読書家の一面もある福田さんは、本から子育てのヒントを得ることも少なくありません。

「最近読んで面白かった本が『超訳 アドラーの言葉』(ディスカヴァークラシック文庫シリーズ)。心理学の本ですが、子育てに役立つ言葉がたくさん出てきます。『何を与えられて生まれてきたか』ではなく、『与えられたものをどう活かすか』が大事なのだ、という一説がとても心に残っています。私は子どもに何を与えてあげられたかな、そして彼はそれをどう活かすのかな、ゆっくり見守っていきたいです。なるべく口を出さずに(笑)! 

それと『発達障害大全 ― 「脳の個性」について知りたいことすべて』(黒板真由子著/日経BP)も面白かった。例えば“うちの子はこんな子ですが受験はできるのでしょうか”とか“社会人として将来生きられますか”など、具体的な質問への答えが載っています。手札を増やす、選択肢を増やす参考になればいいのかなと思います。大人にも当てはまることがたくさんあるのでおすすめですよ」

「ごめんね」ではなく「待っていてくれてありがとう、おかげで大好きな仕事がたくさんできたよ!」と伝える

子どもが小さい頃には、働くことへの罪悪感を感じることもありました。そんな時も本の言葉に救われて、「楽しんで働こう」「働いている幸せな姿を見せよう」と前向きになれたことも。

「幼稚園のお迎えが最後になってしまって、“ごめんね”という気持ちになったことも一度や二度じゃありません。児童精神科医の佐々木正美先生の『子どもへのまなざし』(山脇百合子と共著/福音館書店)という本に“ごめんなさいと言うと子どもは自分が何か悪いことをされたような気持ちになるから、ありがとうと伝えよう”と書いてあったのがしっくりきて。

福田麻琴さん

“待っていてくれてありがとう、おかげで大好きな仕事がたくさんできたよ!”と伝えることで、仕事が楽しいものだと思ってくれたらいいな、と。でも最近は“スニーカーお揃いにしよう”と言うと、“スタイリストのこだわりウザい”って言われちゃうんですけど(笑)。親子というより、友達みたいな関係なのかなと思います」

コラボアイテムはゼロから作っていく面白さがある。「こんな組み合わせもできる」「着こなしで表情がこんなに変わる」アイテムが好き

福田さんとLEEマルシェが『12closet』 でコラボアイテムを作り始めて10年目に。これまでヒット商品も数多く生まれましたが、特に記憶に残っているのは、かごバッグ、ホールガーメントのニット、らくちんパンツ。それぞれ進化しながら作り続けている人気商品です。

福田麻琴さん

「好きなものはずっと変わらないと思う一方で、少しずつ時代の雰囲気やムードを取り入れて服を進化させる作業が好きです。普段は洋服を組み合わせる仕事ですが、コラボアイテムはゼロから作っていく面白さがあります。私の場合、単品で華やかなものというより、こんな組み合わせもできる・着こなしで表情がこんなに変わる、みたいなアイテムが好きですね。お客様には仕事をしながら小さなお子さんを育てている方も多いので、洗えたりノーアイロンで着られたりと、洋服を通じて自由な時間が増えて、より自分らしくいられたらいいなと思います」

今後をやりたいことを聞いてみると、「目標は特にないんです。『Harper’s BAZAAR』創刊100号記念号で“100歳までにやりたい、100のこと”という企画があったので、私も挙げてみようかな」と言いながら、こっそり野望を教えてくれました。

福田麻琴さん

「実は、バックパッカーをやってみたいと思っています。若い頃のバックパッカーみたいにストイックなやつじゃなくて、もうちょっとゆるめの、大人バックパッカーみたいな感じで(笑)。アジアでも南米でもリュックを背負って、見たことのない景色や街を見てみたいんです。パリ留学じゃないですけど、どこかでまたリセットしたい気持ちがあるのかもしれないですね。50歳、いや55歳くらいまでにやりたいかな。その時までにお金を貯めて、あとは体力もつけて。ついでに世界で雑貨を仕入れてLEEマルシェで販売してもいいかも。夢が広がります!」

My wellness journey

福田麻琴さんに聞きました

心のウェルネスのためにしていること

福田麻琴さん

「悩まないことです。すぐに決められないことは一晩置いておく。それができるようになってだいぶ楽になりました。その時決められなくても、どこかの瞬間でピンと来ることがあるのでそれを待ちます。寝てそのまま忘れてしまうこともありますが、その程度の悩みだったりするんですよね。睡眠の質はとても大切にしていて、毎日8時間は寝るようにしています。寝る前にハンドクリームやリップを塗ったり、アロマを嗅いだり、本を読んだり。心地よく寝るための入眠の準備もしています」

体のウェルネスのためにしていること

「月に1、2回マシンピラティスをすることと、週末に子どもと散歩をすることです。ピラティスは、やっぱりウェアが好きで、レギンスは“どれが一番着圧が強いか”“足が細く見えるか”とか、トップスは“どんな色合わせにするか”“どう組み合わせるとおしゃれか”と、かなり研究しています。最新を追いすぎて、うっかり先生よりも先生っぽく見えてしまうのが悩み(笑)。ヨガウェアを着たいがために、ピラティスに通っているともいえます」

福田麻琴さん

インタビュー前編はこちらからお読みいただけます

Staff Credit

撮影/高村瑞穂 取材・文/武田由紀子

おしゃれも暮らしも自分らしく!

LEE編集部 LEE Editors

1983年の創刊以来、「心地よいおしゃれと暮らし」を提案してきたLEE。
仕事や子育て、家事に慌ただしい日々でも、LEEを手に取れば“好き”と“共感”が詰まっていて、一日の終わりにホッとできる。
そんな存在でありたいと思っています。
ファッション、ビューティ、インテリア、料理、そして読者の本音や時代を切り取る読み物……。
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