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LIFE

不妊治療のリアル ~夫婦関係、お金、治療のやめどき~

夫とライフプランを立てていたので、治療の先を共有できた

不妊治療を経験「LEE100人隊やまやんさん」20代から夫とライフプランを立てていたので、治療の先を共有できた

2024.07.21

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Interview

治療内容、夫婦関係、お金のこと……

不妊治療経験者のリアル事情

実際に不妊治療をしたことがある30代・40代女性にインタビュー。

やまやんさん

お話を伺ったのは

やまやんさん

LEE100人隊No.020

34歳。夫、5歳の娘、2歳の息子の4人家族。25歳頃から不妊治療を行い、2018年に顕微授精で第1子を妊娠、出産。2020年に治療を再開し、同じく顕微授精で第2子を妊娠、出産。

不妊治療をつづった
ブログに大きな反響が!/

LEE100人隊やまやんさんのブログ画面

自身が経験した不妊治療について、3回にわたって記してくれたブログに大きな反響が。今回のインタビューのきっかけにもなりました。

やまやんさんの不妊治療の流れ


2014年

24歳で結婚

2015年

基礎体温をつけたり、妊娠を意識し始める

2016年

地元のA病院へタイミング法、人工授精を2回行う

2017年 春

不妊専門のB病院へ体外受精、顕微授精をすすめられる

11月

採卵

2018年 1月

移植。第1子の妊娠が判明

2020年 11月

2人目の妊娠のために通院を再開

2021年 2月

移植。第2子の妊娠が判明


自己注射やサプリの服用など、採卵までの準備もひと苦労

やまやんさんは、24歳で結婚し25歳からは基礎体温を測るなど、いつ子どもを授かってもいい状況だったとか。ところが、約1年たっても妊娠せず、早めに通院することを決めたと言います。

「まだ20代半ばで焦ることもなかったのかもしれませんが、夫とその先の人生設計をしていたので、治療を始めるなら早いに越したことはないかなと。最初は、人工授精まで行える地元のクリニックに行き、タイミング法から始めました。基礎体温を測ってみて、私は高温期が短く生理周期が長めだったようで、高温期をキープするための薬を服用。約10カ月タイミング法を続けて、後半は人工授精も2回しましたが結果にはつながりませんでした」

その後、治療をステップアップするために、不妊治療専門のクリニックへ転院。

「先生が、体外受精・顕微授精が最短ルートだとはっきり言ってくれたので、すぐに決断しました。このクリニックでは、体外受精と顕微授精を行う人への勉強会があったので夫婦で参加。卵巣から卵子を取り出す“採卵”の方法や、顕微授精の場合は培養士さんがどんな過程で培養するのか、受精卵を培養した胚を凍結保存した“凍結胚”を子宮に移植するまでの流れなど、詳しく説明がありました」

検査や卵巣年齢などから、一度で多くの卵が採れる採卵方法を選択。そのための準備と採卵が、予想以上に大変だったそう。

「排卵誘発剤と卵巣を育てる効果があるもの、2種類の注射がマストで、自分でできるように練習をしました。いわゆる普通の注射なので、アンプルのようなものを自分で開けて針を刺して空気を抜いてと、意外に難しく。ひとつはおなかに、もうひとつはお尻に打つもので、冷蔵庫保管をして時間も正確にと、これだけでもけっこうなプレッシャーで。鉄分を蓄えるフェリチンが妊娠しやすい数値に到達するようにサプリの服用などもして、準備を進めました。

採卵は全身麻酔だったのですが、一度にたくさん採りたいということで時間も長く、多少の感覚はあるんですね。そして麻酔が切れた後が痛くて痛くて……! 個人差はあるようなのですが、私はしばらく丸まって動けませんでした。ここで採卵できたのが11個で、受精して凍結胚になったものが6個。クリニックの方針で体外受精と顕微授精を同時に行ったのですが、顕微授精をしたものが残ったと先生から聞きました。

それからの移植は一瞬の出来事で、痛みなどもありませんでした。ただ、移植後にも妊娠できる体を保つための薬の服用や、膣坐薬の使用などが。結果的にこの移植で妊娠が成立して、第1子となる娘を授かることができました」

「ゼロの数がおかしい……!」毎回の支払額に驚いた

不妊治療を行う中でも、夫との意思疎通はうまくとれていたというやまやんさん。「特に、ライフプランをしっかり共有していたのがよかったのかも」と話します。

「20代半ばで結婚した頃から、家を建てる場所やタイミング、退職金がいくらぐらいだから老後はこんなふうに過ごそうなどと、よく話し合っていました。子どもについても、遅くとも夫が60歳になる頃には子どもに成人していてほしいなどと、いろいろと話していて。早めに不妊治療に取り組むきっかけになったと思います。また夫は、タレントの辻希美さんの家族が理想的だねと言っていて、今は年齢を重ねてもやりたいことはできるし、若いうちに子育てをして落ち着いたら自分たちの生活を楽しもうと。ライフプランに加えて、こういった気持ちの面でも意思疎通できていたことで、治療中の大変な時期もすれ違ったり、険悪になったりせずに済んだのかなと思います。

夫は感情の起伏があまり激しくないこともあり、私が『生理きたよ』と落ち込んでいるときも、特別やさしい言葉をかけることもなく『そうなんだ』と受け止めていました。後からそのときの本音を聞いてみたら、『頑張っている人に頑張ってと言うのも違うし、自分も一緒に浮き沈みするのはよくないと思った』とのこと。言葉は少ないけれど寄り添ってくれていることはわかったので、夫が“普通”でいることが、当時の私にとってもよかったのかもしれません」

20代から夫とライフプランを立てていたので、治療の先を共有できて、すれ違いもなかった

やまやんさん

20代から夫とライフプランを立てていた

費用のことも夫婦でしっかりと共有していたそう。

「人工授精は1回1万円ほどですが、体外受精・顕微授精になると一気に費用が跳ね上がります。採卵、移植などのタイミング以外にも、毎回の通院で薬代、サプリ代などを支払い、『金額のゼロの数おかしくない……?』と本気で思ったこともありました。うちは車で行けましたが、クリニックが遠ければ交通費もかかったりと治療以外の出費があることも。正確に記録していないのですが、100万〜200万円はかかったと思います。当時は保険適用になる前だったのでほぼ自費でしたが、自治体の助成金があり、私が住んでいる地域では県から約30万円、市町村から約15万円が申請すれば支給されたので、これは助かりました」



不妊専門病院は、上の子を連れていけず焦ったことも

第1子の出産から約2年後、第2子を授かるために治療を再開。

「同じクリニックで、前回の採卵からできた凍結胚が5個残っていたので、今回は採卵はなく、すぐに移植をすることに。ただ、前回から時間がたっているので、検査などは一通り行いました。第2子の治療のときに大変だったのが上の子のことで、不妊専門のクリニックだったので、院内に子どもは連れてこないようにと言われていたんです。一度、生理周期の関係で、今日病院に来てと言われたことがあって。急で実家にも頼れなかったのですが、育休中の友達に連絡したところ上の子を預かってもらえることに。身近な子どもがいる友達には治療のことを話していたので、本当にありがたかったですね。職場などで不妊治療について話しにくいこともあると思うのですが、可能な範囲で周りに伝えておくと、助けられることもあるかもしれませんね」

周りのサポートもあり、無事に第2子を妊娠。残った凍結胚4個は今もまだ保存していて、いつまで残しておくか悩んでいるとも。

「今のところ、私は3人目がほしいという思いはないのですが、今後気持ちが変わったり、万が一何かあったときのために残しています。ひとつにつき年間1万円ほど保存の費用がかかるのですが、無事に移植できれば赤ちゃんになる可能性があるのに処分することにも少し抵抗があったりして。いつまで残すかは、夫と相談して慎重に決めていきたいと思っています」

やまやんさんの気づき

自己注射、薬の服用、痛みなど採卵まわりの負担が大きかった

夫とはたくさん会話を! 将来のことや思いもすり合わせて

体外受精・顕微授精は費用が跳ね上がる! 自治体で支給されるお金はリサーチを              

Staff Credit

撮影/名和真紀子 イラストレーション/pum 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
こちらは2024年LEE4月号(3/7発売)「不妊治療のリアル ~夫婦関係、お金、治療のやめどき~」に掲載の記事です。

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