漫画家・カラスヤサトシさん夫妻にインタビュー
【子どもの食物アレルギー体験談】0歳娘のアレルギー発覚から減感作療法までを振り返って
2023.12.24
情報も対策法もどんどんアップデートされています
きちんと知ることで慌てない!
子どもの食物アレルギー
年々増えているといわれる子どもの〝食物アレルギー〞。当事者はもちろん、そうでなくてもできることとは?
親子のリアルな声は、いざというときに役立つはずです。
わが子の体験談を描いたコミックエッセイ
『0歳からのアレルギー戦記』著者
カラスヤサトシさん夫妻にインタビュー
娘さんのアレルギー体験を描いたコミックエッセイが話題のカラスヤさん。今回は夫婦で、アレルギーの大変さやその奮闘ぶりを語ってくれました。
教えてくれたのは?
カラスヤサトシさん夫妻
漫画家。『カラスヤサトシ』シリーズ(講談社)、『びっくりカレー』シリーズ(新書館)などのコミックエッセイが人気を集める。ホラー作品集に『いんへるの』『おとろし』(ともに講談社)。『0歳からのアレルギー戦記 ~牛乳・卵・小麦がダメ!~』(ぶんか社)では、娘の食物アレルギー体験を赤裸々に記録。アレルギーについての理解が深められる一冊に。ライターの妻も作品に登場。
●Twitter:karasuyasatoshi
皮膚から反応…。
娘さんのアレルギーが発覚!
アレルゲンが口に入らないよう、洗い物のスポンジも使い分け
現在12歳の娘さんが8カ月頃、 カラスヤさんが食べた“煮卵おにぎり”がきっかけで、アレルギーが判明。検査で10品目以上のアレルギーの可能性が。
カラスヤ 病院では、牛乳、チーズ・バター・ヨーグルトなどの乳製品、卵、パン・うどん・パスタなど小麦を使った料理に含まれるグルテン、エビ、イカ、魚卵も卵になるのでタラコ・イクラなどのアレルギーの可能性があると。
検査結果と体に出るアレルギー症状は必ずしもつながらないそうなのですが、その品目の多さに驚きました。毎日の食事、外食のことも考えると「これは大変なことだな」とさらに強く思うように。
妻 ごはん作りは私が担当していて、娘は魚が好きでサケや白身魚は食べられたので、魚とお米、みそ汁などの和食で対応できました。
カラスヤ ただ、当時は僕がカレーの本を出していて、仕事でカレーを作ったり食べたりすることがけっこうあったんだよね。
妻 そのときは、作るタイミングをずらすのはもちろん、洗い物のスポンジも使い分けていました。そういうちょっとしたところでも、娘の体にアレルゲンが入るといけないと、気を使っていた気が。
カラスヤ コクや香りを出すために、しょうゆに小麦粉が使われていることも、娘のアレルギーがわかるまで知らなかった。うっかり口にしないように、小麦を使用しないしょうゆを購入していました。
日々のごはんや口にするものへの注意のほか、こんな気苦労も絶えなかったと言います。
カラスヤ ご近所さんなどから、クッキーをもらっても娘は食べられない。みんなで遊ぶときに、友達が作ってきてくれたサンドイッチのお弁当を口にできないこともあり、善意だからこそ、断るのが心苦しい瞬間がたくさんありました。
妻 あとは、安心して人にゆだねられないことも大変でした。親に預けるのも難しいし、幼稚園では細心の注意を払ってくれていても、何があるかわからない。
一度、娘が幼稚園で誤ってヨーグルトを食べてしまったことが。家で豆乳ヨーグルトを食べていて、見た目が同じだったので口にしてしまったんですね。そういうリスクとは、常に隣り合わせでした。
親のコミュニティに参加
気分転換や情報収集にも
娘さんのアレルギーがわかってからつけていたのが“食べ物記録ノート”。主治医の方針で始めて、小学校低学年まで続けていたそう。
妻 日付、食べたもの、使った調味料や油もすべて書くように言われました。いつもと違うものを食べたときは、成分表を切り取って貼り付け。湿度や乾燥で肌が荒れたりすることもあるので、その日の天気も記録しました。
カラスヤ 肌荒れや湿疹があったら、体のどの部分に出たかイラストも描くように言われたよね。
妻 うちは、とても丁寧な先生に診てもらっていたので、かなり細かくつけていました。何を食べてどんな症状が出たか、診察で先生が必ずノートをチェック。この後に始まる「減感作療法」を進める過程でも役立ちました。
食材や成分のメモが診察時に役立った
〝食べ物記録ノート〞
娘さんのアレルギーが判明してからつけていた〝食べ物記録ノート〞の一部。
「日付、天気、食べたもの、 使った調味料や油も記録。このときは〝米粉めん〞の成分表示を貼付していますね。診断時に先生がこのノートを参考にするので、手間はかかりますが頑張ってつけていました。成長するにつれて、娘のらくがきも増えていきましたが(笑)」(カラスヤさん)
〝減感作療法〞で、アレルゲンの摂取を増やした頃
そうめん1mmから食べ進め…気の遠くなるような作業でした
少しずつアレルゲンとなる食品を食べて、体に慣れさせていく「減感作療法」。3歳になり、主治医の指導のもと始めました。
カラスヤ 病院や先生により方針は異なるようなのですが、うちが診てもらっていた先生は、体調がよければ積極的にアレルゲンも食べましょうという考え方で。給食で困らないようにと、小学校入学までにできる限りのアレルゲン除去の解除を目指しました。
妻 まずは小麦からで、そうめんやパスタを1㎜から始めて、3㎜、1㎝と症状が出ないか確認しながら、少しずつ増やしていきます。1㎜とか見失いそうなほどわずかな量なので、食べられる食材に混ぜてあげていました。
カラスヤ 小麦、卵、チーズ、牛乳の順番で食べ進めましたね。
妻 卵は、アレルギーが出にくいといわれる卵黄からハンバーグなどと一緒に。牛乳は沸かしたものを少しずつ。たまに肌が赤くなったり、娘はアレルゲンを口にするとよく「口がピリピリする」と言っていたので、感想も逐一聞いて。
カラスヤ 気が遠くなるほど地道な作業で…。
妻 そうめんを1㎜ずつプチプチ切ったりしていると、気が滅入ることも。先生の指導を信じていても、この方法で正しいのか不安にもなるんです。孤独を感じて、近所のアレルギーの子どもがいる親のコミュニティに参加したこともありました。話して共有すると悶々と悩まずに済んだし、病院や小学校の情報収集も。
ただ、アレルギーは個人差がありすぎて、重篤さが違うとコミュニケーションが難しいこともあるので、あくまで参考までに、というのは意識しました。
減感作療法は順調に進み、小学校入学前に小麦と卵、小2で牛乳も除去が解除に。小6の現在は、ほとんどの食材を食べられるようになりました。今、当時を振り返って思うことはありますか?
妻 身近なママ友たちが親切で、遊ぶ約束をすると、食べる予定のお菓子などの写真をわざわざ撮って、私に確認してくれていたんです。周りの理解があったことで、救われていたなと思いますね。
カラスヤ 僕は当事者でない人に多くを求めるのは違うと思うんです。でも、こういうアレルギーがある子どもがいることを知ろうとしたり、関心を持ってくれたりするだけでもありがたいです。
カラスヤさん夫妻の子どものアレルギーとの向き合い方
⚫意外なものにアレルゲンが! 最初は除去を徹底した
⚫ノートに食べたものを記録。症状が出たときの参考に
⚫小麦、卵と少しずつ摂取し、現在はほぼ食べられるように
次回は、「LEE編集部とLEE100人隊のリアル経験談『編集N恵』編」をご紹介します。
Staff Credit
取材・文/野々山 幸(TAPE)
こちらは2024年LEE1・2月合併号(12/7発売)「きちんと知ることで慌てない! 子どもの食物アレルギー」に掲載の記事です。
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