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きちんと知ることで慌てない! 子どもの食物アレルギー

小児科医 渡邊美砂さんが解説!

【子どもの食物アレルギーについて知りたい10のこと】病院へ行く前にチェック!原因は?検査は?専門家が解説

2023.12.10

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専門医に聞きました

子どもの食物アレルギーについて知っておきたい10のこと

子どもの食物アレルギーについて知っておきたい10のこと

食物アレルギーの原因で多いのは? いずれ食べられるようになる? 意外と知らないアレルギーの基礎知識を、専門医に解説してもらいました。

教えてくれたのは?

渡邊美砂さん

東邦大学医療センター 大森病院 小児科

日本アレルギー学会指導医。著書『先生と保護者のための-子どもアレルギー大百科』(少年写真新聞社)では、食物アレルギーや花粉症などの主なアレルギーの特徴と対策法を紹介。

               

01

アレルギーとは免疫機能の過剰反応

細菌やウイルスなどの異物から身を守るための〝免疫〞。この免疫が、食べ物、花粉などの本当は異物ではないはずのものに対して、勘違いして過剰な反応を起こしてしまうのが〝アレルギー〞。

アレルギーの原因物質を〝アレルゲン〞といい、体に入るとくしゃみ、発疹などの症状を引き起こします。

02

花粉症が影響している! 食物アレルギーの子どもが年々増加

最新の調査では、食物アレルギーの子どもは全国の公立小中高校に52万人超。全体の約6%といわれ、年々増えています。

その原因のひとつが花粉症の増加。花粉と似たたんぱく質を持つ果物や野菜が口に入ると体が勘違いして、アレルギー症状が出やすくなります。

また、ナッツ類の消費量が多くなったことに伴い、ナッツアレルギーが増えていることも一因に。



03

食物アレルギーの原因として多いのは、鶏卵・牛乳・小麦。木の実(ナッツ)類も発症数が多い

食物アレルギーの原因 鶏卵・牛乳・小麦。木の実(ナッツ)類

鶏卵、牛乳、小麦が3大原因物質で、食物アレルギー全体の約6割を占めていました。ところが、最新の調査では木の実類が小麦を抜いて3位に。ただ、木の実類はくるみ、カシューナッツ、アーモンドなど複数を合わせているので、単独では小麦のほうが上回ります。

また、年齢により新規発症の食品は変わり、0〜1歳では鶏卵、3〜6歳では木の実類がトップ。

04

受診するとまずは問診。血液検査や食物経口負荷試験も

アレルギー問診 血液検査や食物経口負荷試験

診察では、医師が子どもの様子を聞き取る問診が大切で、何をどのくらい食べたら、何分後にどんな症状が出たかなどを詳しく聞きます。まずは血液検査を行い、皮膚テストをすることも。

ただし、検査の数値が高くても食べられる場合もあり。食物経口負荷試験は、除去する食物の特定や、安全に摂取できる量を確定します。

05

アレルゲンは口からだけでなく皮膚からも。肌のケアが大切

アレルギー対策 肌のケア

皮膚からアレルゲンが侵入することを〝経皮感作〞といいます。かつて、小麦のグルテンを小さく分解した成分が入っている石けんで顔を洗っていた人が、重篤な小麦アレルギーになり、大きな問題となった事例もあるほど。

湿疹や肌荒れがあるとそこからアレルゲンが入り込む可能性が高まるので、乳幼児期から保湿剤を塗ることを習慣にして、肌のケアをしっかり行いましょう。

06

アナフィラキシーへの対策重篤な症状にはエピペンを

アナフィラキシーとは、アレルゲンが体内に入って数分〜数十分で目や口のかゆみや腫れ、嘔吐や呼吸困難などが現れる強いアレルギー症状。アナフィラキシーショックの場合はアドレナリン自己注射薬・エピペンを。

過去にアナフィラキシーを起こしたことがあり、体重15㎏以上ならエピペンの所持・使用が可能。

07

アレルゲン除去は最小限に。少しずつ食べて「除去食の解除」を目指すのが主流

除去食の解除

食物アレルギーでは、症状が出る食べ物を除く〝除去食療法〞を行います。ただし、除去は最低限に留めることが推奨されています。

血液検査や食物経口負荷試験で改善が確認できたら、医師と相談して少量からアレルゲンを摂取して、体を慣れさせていきます。ある程度食べられるようになっても、体調が悪いときや激しい運動、入浴によってアレルギー反応が出ることもあるので、そこには注意が必要。

08

鶏卵・牛乳・小麦は就学以降に食べられるようになることも多い

鶏卵、牛乳、小麦などによる子どものアレルギーは、小学生になると免疫が発達して耐性ができるので、約60%は食べられるようになります。

これらの3大原因物質以外、例えばピーナッツやくるみなどの木の実類は重篤になりやすく、症状が改善しにくいことも。

09

食物アレルギー以外にも、成長とともに別のアレルギーが出現。アレルギーマーチとは?

アレルギーマーチ 幼児期 乳児期 学童期

乳幼児期の食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、幼児期の気管支ぜん息、その後のアレルギー性鼻炎や結膜炎など、成長とともに別のアレルギーが現れる〝アレルギーマーチ〞。

特にアトピー性皮膚炎があると肌からアレルゲンが入りやすく、アレルギーマーチが起こりやすいので、早いうちから肌のケアを。

10

同じコップを使うことや手をつなぐことでアレルギー反応が出る場合も

アレルギーの子どもと接する大人は、ごく少量のアレルゲンでもアレルギー反応が起こると認識を。特に症状が重篤な子がいるときは、たまたま同じコップを使うこと、手をつなぐことでも反応が出ることが。なので、周りの子どもにもアレルゲンを使わないほうが安全です。

身近なのに知らないことがいろいろ

読者のギモンQ&A

1

アレルギーは遺伝しますか?

アレルギーは遺伝するのか?

1

〝アレルギーを起こしやすい体質〞は遺伝します。ただし、アレルギー体質が遺伝してもすべての人が発症するわけではなく、親は花粉症、子どもはアトピー性皮膚炎など発症するものも個人によってさまざま。同じ食物アレルギーでも、アレルゲンが異なることもあります。

2

大人になってから、同じ食品を食べすぎることでアレルギー反応が出るケースはありますか?

2

基本的にはありません。幼児期には、アレルギー体質が強ければ、ひとつのアレルゲンを摂取しすぎて発症しやすくなることもまれにあります。
最近よく言われる大人のアレルギーも、食べすぎは関係なく、花粉症の増加やもともとのアレルギー体質が影響しています。

3

小学生になってから生卵のアレルギーに。火を通せば大丈夫でも「生」でアレルギーが出やすいものは?

生卵のアレルギー アレルギー疑問

3

果物や野菜を生で食べると、アレルギー反応が出ることがあります。花粉症の人が果物や野菜を食べると体が花粉と勘違いして、口やのどがかゆくなったり、舌がピリピリすることが。この場合でも加熱してあれば食べられることも多いです。

4

アレルギー体質があっても、ペットを飼っても大丈夫?

4

アレルギー体質の子どもは猫や犬などのアレルギーや、動物の毛やフケが原因でぜん息やアレルギー性鼻炎が起こることも。
また、最近は〝ポークキャット症候群〞という獣肉アレルギーが話題に。乳幼児期から猫を飼っていると、毛や唾液に含まれるたんぱく質に体が反応。学童期になって、不十分な加熱の豚肉やくん製肉、ハムなどの加工肉、内臓肉を食べるとアレルギー反応が出ることがあります。

5

妊娠中の食事が、
子どものアレルギーに影響しますか? 母乳は?

5

妊娠中も授乳中も、お母さんが食べたものは消化されて血液中に入り、ごく少量ではありますが、子どもにもアレルゲンが移行します。ただし、極端に偏った食事や過剰摂取をしなければ基本的に問題はなく、大きな影響はありません。

LEEメンバーにアンケート

アレルギーの子どもを持つ親が周りの人に望むこと、知ってほしいことは?

病院の先生から、おかしいと思ったらいかに速く処方されている薬を飲むかで、その後の症状の治まり方が違うと聞いたので、いつもと違ったり、本人がおかしいと言い出したときには迅速に連絡してほしいです。

LEE100人隊TB リリオさん

小学生でアレルギーが判明。わかってからは学校のアレルギー表などにも記入するようになりましたが、入学の時点でわかっていないアレルギーもあるということは広く知ってもらいたいです。

LEE100人隊TB マルさん

とにかく苦しそうにしだしたら、 ためらわずエピペンを使用してほしい。友達のママさんにお願いするのは 大変かもしれないのですが、学校の先生には伝えていました。

LEE100人隊No.083 nattiさん

アレルギー表示がないお店でベーコン、ハムを使用している場合、ベーコンやハムにも卵白が使用されていることが多いので買わないようにしています。卵料理以外にもつなぎで卵を使用している商品がけっこうあることが、世の中に知れわたってくれればいいなと思います。

LEE100人隊No.056 アユミさん

子ども本人に、食品表示を見せてもらえると助かります。息子が自分で入っているものを確認して食べる習慣があるので、食べるか食べないかは、本人に判断させてもらえたらうれしいです。

LEE100人隊No.008 すずさん


次回は、「『0歳からのアレルギー戦記』著者・カラスヤサトシさん夫妻にインタビュー」をご紹介します。

Staff Credit

イラストレーション/オリハラケイコ 取材・文/野々山 幸(TAPE)

こちらは2024年LEE1・2月合併号(12/7発売)「きちんと知ることで慌てない! 子どもの食物アレルギー」に掲載の記事です。

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