TAKARAZUKA STAR|ことばの力
【雪組・和希そらさん】自分の人生を自分の足で歩くこと【宝塚スター|ことばの力】
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TAKARAZUKA STAR INTERVIEW ことばの力
2023.10.19
気づきを与えた言葉、背中を押してくれた言葉、自分を鼓舞する言葉……。舞台人として、一人の人として。“清く正しく美しく”輝くタカラジェンヌが大切にしている言葉とは?
雪組
和希そらさん
今の自分を作ったことば
「人は人、自分は自分。大事なのは自分の人生を自分の足で歩くこと」
Sora Kazuki
Sora Kazuki ・Profile
2010年、宝塚歌劇団に入団。宙組に配属され、’14年『ベルサイユのばら―オスカル編―』で新人公演初主演。’21年雪組へ組替え。歌、踊り、芝居の三拍子揃った技術力に加え、どこか憂いのある舞台姿で人気を集める男役スター。
もっと自分を磨き続けたいから
弱い自分は見せない、出さない
Sora Kazuki
「幼い頃の遊び相手は二人の兄とそのお友達。男の子に囲まれて育った私は生傷が絶えないお転婆娘で、さらには大の負けず嫌い。誰かが走り出せば“競争だ!!”と勝手に勝負を仕掛けるような、とても勝気な女の子でした(笑)」
ご両親はそんな和希さんを自由にのびのびと育てました。「あれはダメ」「これはダメ」と制限された記憶はなく「あれがしたい、これがしたい、私の好奇心の赴くままに、さまざまな習い事にも挑戦させてくれた」と振り返ります。
「好奇心旺盛、だけど、飽き性。“ザ・B型”の私はどの習い事も続かなくて。唯一続いたのがダンスだったんです」
そのダンスが和希さんの世界を大きく変えます。元タカラジェンヌであるダンスの先生がいた世界に興味を持ち、初観劇で「私もあの舞台に立ちたい!!」と思うように。
「そのときも両親は反対しませんでした。子どもの頃はわからなかったけれど大人になった今は思うんです。自分で考え行動し、壁にぶつかり学びながら、自分が進む道は自分で選びなさいと、両親は教えてくれたのかもしれないなって」
負けず嫌いな性格を遺憾なく発揮しながら数々の壁を乗り越えた和希さんですが、入団後はいくつもの挫折を経験。どんなに努力を重ねても目指す場所に届かない、悔しさやもどかしさを感じたこともあったそうです。
「そこで力になったのが“人は人、自分は自分”という言葉です。周りの評価や意見はどうしても気になってしまうものだけれど、大事なのは目の前の舞台でしかなくて。余計なことは考えず、周りの声に惑わされず、ただひたすら努力を重ねる。悔しいのならば、誰もが認めざるをえない実力を身につければいい、そう考えるようになりました」
舞台『アナスタシア』で演じたリリーのセリフ、「人生は楽しまなくちゃ」も今の和希さんを作る言葉のひとつです。人生は一度きり、立ち止まっている時間なんてない。だからこそ「ほかの誰でもない自分の道を、自分の足で、後悔のないように歩きたい」とまっすぐに語ります。
「基本、前進していたい人なので。そのためにも、悩んでも仕方のないことは悩まない、考えても変わらないことは考えない、余計な荷物は少ないほうがいいんです(笑)」
潔く、明るく、常に前向きな和希さんに「ネガティブな気持ちになることはありますか?」とたずねると、返ってきたのは「もちろんあるにはあるのですが……基本、私は自分の弱い部分を見せたくないんです」という答えでした。
「人前で泣くのも、弱音を吐くのも、悩みを相談するのも苦手。弱い部分を見せたら楽になれる部分もあるのかもしれませんが、私はそれをしたくない。つらく苦しいときも、それを感じさせないほど、常に背すじをピンと伸ばせる自分でありたい。それは大変なことだけど、強くありたい、強くなければいけないと思う、その気持ちに私自身が支えられることも多いんです。弱い自分を見せるのは心を許す数人の友人の前だけでいい。ちなみにそこでは私、“ずぶぬれの子犬みたいに泣く”って言われています(笑)」
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和希そらさんに3つの質問!
1
「和希そら」はどういう人ですか?
1
和希そらは、わかりやすいようで、実はよくわからない人です(笑)
負けず嫌いで、人見知りで、ポジティブで、好奇心旺盛でやりたいことがいっぱいあって、熱さを持っているけれど基本的に意外と冷静……。こだわることにはこだわるけれど、興味がないことには本気で興味がない、0か100かの性格でもあって。例えば部屋の中にも“ここだけはいつもきれいだけど、他は適当”なんて状況がよく生まれるんです(笑)。夢中になったかと思いきや急にどうでもよくなったりする、熱しやすく冷めやすい一面もありまして。こういう取材でマイブームを聞かれることが多いのですが、雑誌が出る頃には全然違うものにハマッている、ということも通常運転(笑)。
この極端さは人間関係でも同じで。自分のことを知ってほしいと思う数人の友人の前では包み隠さず自分を出すけれど、それ以外の人の前では「ここから先は立ち入り禁止」と、どこか秘密主義になってしまうと言いますか。下級生から「休日は何をするんですか?」「昨日は何をして過ごしていましたか?」なんてプライベートな質問をされたときも、「あ〜、それだけは言えないんだよねぇ〜」というお決まりの文言で絶対に教えない、というのがネタ化されています(笑)。そのせいか「わかりやすいように見えて、実は全然よくわからない」と言われることも。それが周りから見た私の印象を一番よく表している言葉なのかもしれませんね(笑)。
2
今年で男役14年目。今はどんな時期にいると感じていますか?
2
より自由に“演じること”を楽しんでいます
前作のショー「ジュエル・ド・パリ!!」の一場面で、女役を務めさせていただいたのですが、今までも何回か女役を演じさせていただいて。すると、周りからよくきかれるのが「抵抗はないんですか?」という質問で、それに対する答えは「抵抗はまったくない」なんです。表現方法が変わることはもちろんありますが、「その役を演じる」という点では「男役だから」「女役だから」という概念が存在しないといいますか……何も変わらないんです。
こんな男役になりたい、あんな男役になりたいと、様々な理想を掲げて男役を追求してきた時間があり、そこに女役という経験がプラスされたことで、「こうじゃなきゃいけない」「ああじゃなきゃいけない」と自分を縛りつけず、シンプルに“演じる”ことにフォーカスすることができている気がします。男役14年目の今、舞台の上でより自由になれている自分を感じています。
3
和希さんが心惹かれる「素敵な人」とは?
3
「自分は自分」と、わが道を突き進む人は美しい
私がありのままをさらけ出せるほど心を許している友人は3人だけ。その全員に共通しているのが「尊敬できる」「自分を持っている」ということなんです。だからこそ、相手の言葉を聞きたいと思うし、私の言葉も聞いてほしいと思える……。私は親しい人ほど辛辣なことをちゃんと言ってほしいんです。
学年が上がると厳しい意見をいただく機会が減っていくからこそ、信頼している人からは本当の言葉を聞きたくて。言ってもらえないときは、自ら“追い辛辣”を求めることも(笑)。余計なお世辞や気遣いはいらない、本当のことを言ってくれればくれるほど、私はその人のことが好きになる。
普段、私が「素敵だな」と思うのも、ちゃんと自分を持っている人です。周りに流されず、誰に何を言われようと、どう思われようと、自分の道を突き進む。自分がやるべきことに全力を注ぎ、現状に満足することなく、努力や挑戦をし続ける、その姿を私は「美しい」と感じるのです。
NEXT STAGE
『ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル』
-Boiled Doyle on the Toil Trail-
『FROZEN HOLIDAY(フローズン・ホリデイ)』
-Snow Troupe 100th Anniversary-
作家コナン・ドイルと彼が生み出した「名探偵シャーロック・ホームズ」、もしも二人が出会ったら……!? 奇想天外な視点で描く物語。主演:彩風咲奈 夢白あや
宝塚大劇場公演
11月10日〜12月13日
東京宝塚劇場公演
2024年1月3日〜2月11日
Staff Credit
撮影/柴田フミコ 取材・文/石井美輪
こちらは2023年LEE11月号(10/6発売)「ことばの力 vol.8 和希そらさん」に掲載の記事です。
▼ 「ことばの力」連載一覧はこちら
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