『この夏の星を見る』
辻村深月 ¥2090/KADOKAWA
コロナ禍だからつながれた、星を通じた中高生の青春大作!
まだ完全に終息したわけではないコロナ禍。それでもマスク着用の緩和が広まり、少しずつ、感染症と自分たちの生活との折り合いのつけ方が、わかってきた今日この頃。だからこそ、世の中が最も混乱していた時期に、思春期を送った子どもたちの青春時代に心を寄せたい。
物語のスタートは、新型コロナウイルスが世の中に蔓延し始めた2020年。茨城県に住む亜紗は、天文部の高校生。部活動が次々と制限される中で、望遠鏡で星を数える速さを競う「スターキャッチコンテスト」の開催を模索する。東京の渋谷に住む真宙は、生徒の減少が進む中学の一年生の中で、唯一の男子生徒。仲間がいない絶望のあまり、コロナが長引き、学校へ行く回数が少なくなるように念じている。長崎県の五島列島に住む、高校三年生の円華は、旅館の娘。実家が島外からの観光客を泊めているのが原因で、親友から距離をおかれてしまう。
パンデミックに巻き込まれながら、孤独を感じていた少年少女たちは、さまざまな場所から星を眺めることで日々に希望を見つけ出す。そして「スターキャッチコンテスト」に参加するために、リモートでつながっていくことに──。
昨日まで当たり前だった暮らしがそうではなくなり、親しかったはずの相手に距離を感じる。都市に住む人たちと、人口が少ない地域に住む人たちとの「分断」──。私たち大人にとっても、我慢や驚くことばかりだった緊急事態宣言中の生活。思春期の少年少女たちの受け止め方はとてもリアルで、切なくなってくる。でもそんな時期だったからこそ、宇宙や星の世界にパワーをもらい、未来を見つめていく彼ら彼女らの姿に感動が! 閉塞感あふれる日々の先に、みんなが見つけた絆を、ぜひ作品の中で味わってほしいもの。
500ページ近い長編作ながら、読みやすい文章と、登場人物の個性がきわだっているのが、辻村さんの小説の特徴。子どもと一緒に読み、それぞれの感想を伝え合うのにもぴったり。この夏、家族みんなで感動をシェアし合えるストーリーとしておすすめです!
『ピッツァ職人』
井川直子 ¥2200/ミシマ社
ピッツァ作りに人生をかける人々の生き様を追った、ノンフィクション。10代からイタリアへ渡った者、大学を卒業してからピッツァの魅力に目覚めた者。それぞれが育った時代や環境、修行に目覚めたきっかけを織り交ぜながら、ひとつの道を極める姿を描く。私たちが当たり前のように食べている料理に込められた情熱に触れ、「自分も頑張ろう!」と思わせてくれる。
『青木式 すごい「感冷」健康法 細胞の活性化が健康と若返りを同時に叶える』
青木 厚 ¥1540/新星出版社
16時間断食をする食習慣のすすめでLEE読者にも注目されている著者の、最新刊。20℃前後の水を体に当てて交感神経を刺激する「感冷健康法」のやり方と、体へ働きかける作用を説明する。運動や食事制限をすることなく、免疫力を上げるコツが書かれているので、冷え性や虚弱体質に悩む人は、ぜひ参考に!
『友だちと、空の下で、ゆるく料理を楽しむ。女子キャンプごはん』
柚木さとみ ¥1760/グラフィック社
料理家であり、キャンプ歴15年の著者による女性が楽しめるキャンプごはんレシピ。焼き物やスープ、パスタやデザートに至るまで、キャンプごはんのバリエーションが広がります。さらに調理を気楽にするための下準備やパッキングなどの、便利なコツも満載。キャンプが盛り上がること間違いなしの一冊に!
取材・原文/石井絵里
こちらは2023年LEE8・9月合併号(7/7発売)「カルチャーナビ」に掲載の記事です。
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