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武田由紀子

山田詠美さんオススメ梅干アレンジレシピに、梅仕事命の今井真実さん歓喜!【小説家×料理家の異色対談】

  • 武田由紀子

2023.07.16

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小説家と料理家の異色対談、テーマは『梅仕事と文学』!

山田詠美さん 今井真実さん

小学生のころから山田詠美さんの著書を愛読し、「人生を先まわりして教えてもらった」という今井真実さん。人生とは何か、おいしい料理、恋愛、男性像など、山田さんの本を参考書のようにして生きてきました。後半では、食と性について、山田さんが趣味で集めているもの、梅仕事にもついて話が盛り上がりました。今井さんが山田さんのために仕込んできた自家製シロップも披露、そのお味は!?  終盤には、すっかり親交を深めた2人の様子にも注目です。

息子が生まれた時、詠美さんの名前から漢字の一文字をもらいました

山田さんの小説で描かれるキュートな男性にも惹かれるという今井さん。そこから、グラビア雑誌などにある性と食べ物を関連させたページ構成には、二人とも気になる点があるとか。

今井「実は自分の息子が生まれた時に、詠美さんの名前から漢字の一文字をもらったんです。男の子の育て方がよく分からないのもあって、せめて先生の小説に出てくるようなキュートな男性になってもらいたいと思って」

山田「そうなの!? 時々、サイン会でお腹の大きい人が来て、お腹を触ってくださいと言われるんです。次の年に、生まれたお子さんを連れていらして、『詠美って名前にしました』っておっしゃって。そしたら横から編集者が『そんな名前つけると、こんなになっちゃいますよ!』って言うの(笑)」

今井「笑。そんなことないですよ! あと、くるぶしがきれいな子になってほしいなと思います」

山田詠美さん 今井真実さん

男の人の体を見て食べ物を連想するのは、ある種ゲーム的な楽しさがあるけど…

山田「昔は素足にローファーとか、男のくるぶしがって書いてたんだけど、最近私の夫も歳をとって、くるぶしを出してとは言えなくなってきて。でもね、男の人の体を見て食べ物を連想するっていうのは、ある種の楽しみというかゲームのようなところがありますよね。比喩としての食べ物って好きなんですよね。ただ、あまりにも性的なものと結びつけすぎて、おいしくなくしている人もいる。粘膜の接触を意識しすぎると、そうなっちゃうんだけど。それとは違う、おいしそうな感じを例えたいと思って」

今井「分かります。例えば、グラビアの次のページに食べ物ページがあったりとか。違うなと思います」

山田「攻めた感じのヌードグラビアの次のページに、有名人の焼き肉屋の紹介があったりとかね。性欲と食欲を一緒にするのは、どうなんだろうと思います」

今井「単純に好きなものを並べるということなのかな。料理はエロティックにもなるし、エロティックなものが料理にもなるというか。美しい関係だと思っていますが生々しくもあります」

山田「粘膜を通せば一緒だろうという考え方だと、恋愛の醍醐味を分かってないなと思いますよね。グラビアの次に生肉を並べる。そういうことじゃないんだよなと私は思っていますよ」

今井真実さん



お手製の「梅といちご、ミックスベリーのシロップ」をソーダ割りしておもてなし

ここで今井さんから山田さんへのおもてなしタイム。今井さんお手製の「梅ジンジャーシロップ」と、「梅といちご、ミックスベリーのシロップ」を用意したところ、山田さんのリクエストは「梅といちご、ミックスベリー」。山田さんに梅仕事について聞いてみました。

山田「(梅仕事は)私の妹が作っていて毎年送ってくれるんです。一度、自分で梅仕事をやろうと思って洗ってしばらく放置していたら、なめくじがびっしりついていて(笑)。梅は気をつけないといけないのね」

今井「完熟した梅は、虫がつきやすかったりします。梅シロップは梅酒よりは難しいんですよ。梅酒なら焼酎で漬けるので、殺菌されるから簡単なんですけど。梅干しも塩を使うので、殺菌も同時にできるのが楽です。今日お持ちする時に、お酒とシロップで悩んだのですが、ちなみにどちらが好きですか?」

山田「どちらでも。大人になったので、お酒じゃなくてもいいです(笑)」

今井真実さん

会場が笑いに包まれる中、今井さんが作った「梅といちご、ミックスベリーのシロップ」のソーダ割りを山田さんがいただきます。「おいしい! ウォッカで割ってもいいね」と一言。

山田「80年代のニューヨークを舞台にした小説『ブライト・ライツ、ビッグ・シティ』に、ウォッカをクランベリージュースで割るレシピがあって。それを思い出しました」

今井「そうなんですね! これからはこのレシピはウォッカで割るレシピとして出していきます」

山田詠美さん 今井真実さん

世界中から集めた塩で「梅干し」を作ってみたらどうなる?

質疑応答の時間には、山田さんへの質問が。「以前エッセイで塩にハマっていると書かれていましたが、今ハマっていることはありますか」という問いが参加者からありました。

山田「うちは塩のクローゼットがあるんです。世界中に行くたびに塩を買ってきているうちに、すごい量になっちゃって。海外に行くと、必ず地元のスーパーに行くんですよ。見たことがない塩を見つけると、つい買ってしまうんですよね。おそらく誰も持ってないだろうと思うのが、前に世界遺産のスタッフと一緒にアフリカに行った時、ディレクターがくれたサハラ砂漠の塩の塊。結晶化したのが大きくなったものです。それも、今は見るだけになっちゃってますが。普段使いでよく使うのは『ろく助』の塩。しいたけとか昆布の旨味があって、最近は東京のスーパーにも置いてあるので、よく使ってますね」

今井「そのクローゼットは時々見るんですか?」

山田「そう。ガラス張りのクローゼットなんだけど、時々見て、異常ないかな?と見てる」

今井「塩があれば梅干しが作れますね」

山田「でも海外の塩で梅干しをつけると喧嘩しそうじゃない?」

今井「逆にイタリア料理、フランス料理に合う梅干しが作れるかもしれないですよ。面白そうですね」

山田詠美さん

山田詠美さんオススメの梅干しレシピ「鶯宿梅」

最後は、今井さんに梅仕事についての質問です。「今おすすめの梅仕事は何ですか」という質問に、山田さんのお気に入りの一品が登場しました。

今井今(イベント開催日の6/24ごろ)だと、緑色っぽいもの、少しオレンジ色っぽい梅が多く出回っていると思います。追熟させて、完熟梅で梅ダージリンとか梅干しとかがおすすめです。もし青梅があるなら、本の後ろの方の梅仕事が間に合うと思います」

山田「今井さん、鴬宿梅って知ってる? 昔、よく行ってた六本木の『いさご家』さんっていうお店があって、そこで梅干しの果肉を叩いて、わさび、かつおぶしを混ぜてちょっと甘みをつけて、お醤油を垂らして、熟成させるメニューがあって。それがあればご飯が何膳でも食べられるし、お酒も何杯でも飲める。よくお店の帰りにタッパーでもらったりもしてたの。ご主人が変わられてからは、もう何年も行ってないんだけど。それも好きでした」

今井「それは梅の本を出す前に知りたかったです〜! ぜひ本物を食べて試作してみたいです。この本を頑張って売って、第二弾を出す時にぜひ“エイミー先生直伝”のレシピとして紹介したいです」

『今井真実のときみく梅しごと』

1時間半のトークは、あっという間に終了。イベントの終了後には2人のサイン会が行われ、締めくくられました。今井さんもほくほく顔で山田さんにサインをもらい「中学生の時も、サインしてくれるエイミー先生の顔をずっと見ていたことを思い出しました!」と感無量。イベントは大盛況で終えました。

今井「先生の新作が読み続けられることが本当に幸せです。今日はお会いできてとても嬉しかったです」

山田「小説は読者が読んでくれることで完結するので、これからも描き続けたいと思います。今日は楽しかった、どうもありがとう!」

今井真実さん 山田詠美さん

対談前編はこちら!

【山田詠美×今井真実】料理を書きたい小説家と、文章も綴る料理家が「料理と文学の因果関係」を語る

今井真実さんのインタビューも併せてお楽しみください

今井真実さんが「料理は不器用な方でもできます」と断言する理由

私がこの世にいなくなっても、私が手がけた梅仕事やレシピは残る。今井真実さんが震災と大病を乗り越え得た気づき


撮影:今井裕治

武田由紀子 Yukiko Takeda

編集者・ライター

1978年、富山県生まれ。出版社や編集プロダクション勤務、WEBメディア運営を経てフリーに。子育て雑誌やブランドカタログの編集・ライティングほか、映画関連のインタビューやコラム執筆などを担当。夫、10歳娘&7歳息子の4人暮らし。

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