創刊40周年記念号の表紙を飾ってくれたのは、菅野美穂さん。俳優としての圧倒的な存在感、品よくトレンドアイテムを着こなすセンス、知性とユーモアあふれる素顔……どこをとっても私たちの憧れです。そんな菅野さんの“今”は、育児に奮闘しながら仕事や自分自身と向き合う日々。笑いあり深みありの言葉でリアルな“現在地”を語り、読者へのエールを届けてくれました!

ジャンプスーツ¥64900(サヤカデイヴィス)・靴¥56100(へリュー)/ショールーム セッション ネックレス¥80300・ブレスレット¥16500・リング¥19800/マリア ブラック 表参道店(マリア ブラック)
profile:
かんの・みほ●1977年、埼玉県生まれ。1993年、女優デビュー。1995年、NHK連続テレビ小説『走らんか!』のヒロインを演じ、注目を集める。以降、話題作に多数出演。代表作に、ドラマ『イグアナの娘』『大奥』『働きマン』『ひよっこ』ほか。近作に、ドラマ『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』映画『仕掛人・藤枝梅安』。
公式サイト:https://www.ken-on.co.jp/kanno/
暮らしがほんのり落ち着き、おしゃれ願望が出てきました
爽やかな白やブルー、鮮やかな黄色やオレンジ。菅野さんが衣装を着替え、笑顔で入ってくるたびに、周囲がパッと明るくなります。ご本人も、「きれいな色の服には元気をもらえますね」と、にっこり。ファッションセンスにも定評のある菅野さん、今はどんなおしゃれを楽しんでいるのでしょうか。
「最近になって、ちょっと“自分らしい服装”を意識するようになった気がします。少し前までは、子どもたちに汚されても悲しくならない服、それでいてどこでどなたにお会いしても失礼のない服、が安心する時期だったんですけれど。その頃に比べると、ほんのり落ち着いて、またおしゃれ願望が出てきたのかもしれないですね。今は、きちんと見えながらも、どこかに個性や流行を感じられる服装に惹かれるように。『ハピプラ※』でも、ストレッチ素材のセットアップをチェックしました。上品で洗えて着心地もいいなんて、よく考えられているなぁ、と。ネイビーの上下に白いスニーカーを合わせたりすると、きっと素敵だと思う!」
近頃は、7歳長男と4歳長女の服をセレクトする喜びも満喫中。
「子どもたちの服は自分の服より自由に選べるので、ワクワクしますね。韓国ブランドのサイトを眺めたり、色で兄妹のコーデをリンクさせたり。先日は、お出かけのときに派手なTシャツを着せたら、見つけやすくて大正解でした(笑)」
華やかな美しさもスラリとした体型も健在ですが、「美容にはなかなか手が回らない」と明かします。
「昼間は家事もあるし、夜は寝かしつけと同時に眠ってしまうから、チャンスは朝しかない。家族が起きてくる前に、片手で身支度、片手で美顔器、と四苦八苦しています(笑)。独身時代、習慣だったヨガも、毎日するのは難しくて。でも、できなくても嘆かず、できたときに『よかった!』ととらえています。ケアしているかどうかが表に出やすくなる年頃だけに、コツコツ取り組んでいきたいですね」
※=ハピプラストア。集英社の通販サイト。
経験を重ねたからこそ丁寧に、過去と“同じじゃない表現”を。都度都度、新鮮な気持ちで演技と向き合っていきたいです
ライフステージの変化とともに、しなやかに進化している菅野さん。仕事面でもまた新たなフェーズへ。
「役作りも、以前は自分のタイミングでいろいろ試せたけれど、今は何かをひらめいても後回し、となりがち。ただ、その分、集中力と瞬発力は鍛えられた……かも? あとは、例えば泣いたり怒ったりといった、これまでにも演じたことのあるシーンでも、過去と“同じじゃない表現”ができるように、丁寧に工夫していくことが必要な段階に入ってきたのかな、って。経験を重ねたからこそ、都度都度、新鮮な気持ちで演技と向き合っていけたら、と考えています」
大女優なのに謙虚でひたむき。どの現場でも、菅野さんが愛され信頼されている理由がわかります。
「年々、自分よりお若い監督さんや俳優さんとご一緒させていただく機会が増えて、年長者としての立ち居振る舞いも心がけるようになりました。本番中はもちろん、ちょっとした差し入れをきっかけに雑談するような、それ以外の時間も大事にしたいな、とか」
迷える後輩に声をかけるなら? そう尋ねると考えを巡らせて――。
「ひとつ言えるのは、『長く活動するなら傷つかないわけないから、思いきって頑張って!』ということでしょうか。ステンレスのピカピカのキッチンだって、最初は小さな傷が気になっても、そのうち曇りも味になってくるでしょう? ガンガン使い込めば、いい感じのマット仕上げになるよ、って(笑)。私自身も、思うようにいかなくても諦めずに続けていけば、また違う景色が見えてくるかも、と自分を励ましているところです」
育児では、力みすぎず、ただ一日一日を一生懸命に
現在の菅野さんの生活の中心は、育児。そのハードさも、笑いを交えて本音で語ってくれました。
「育児を私の知っているものに例えると、“ハワイじゃなくてインド”。どちらも魅力的だけれど、ハワイは気軽に『最高だよ』ってすすめられる一方、インドは『……すごいよ』って感じじゃないですか(笑)。幸せな状況だと理解はしていますが、正直大変なことも多いです」
日々の苦悩には、深くうなずくLEE読者が続出しそうです!
「母業って、やってもやっても、ノルマにレ点がつくだけで、達成感がない気がするんですよね。全方位に神経を張り巡らせるけれど、忘れ物はなくて普通であって、マルはつかない。『やった!』ではなく、『セーフ!』の繰り返し。まるで砂を噛むような毎日です(苦笑)」
菅野さんでもそんな気持ちに!?
「いつも穏やかで優しいお母様方を見ると、『どんな魔法を使っているんだろう?』と思っちゃいます。私はもともとはひょうきんな性格だから、子どもの失敗も冗談にできると思っていたのに……実際は怒ってしまって、落ち込むことも。仕事ではいい意味でくだけられるのに、育児では悪い意味でまじめになっちゃうんですよね」
実感のこもった言葉は、育児にも全力で向き合っている証拠。
「なんで、こんなに生真面目に育児をしているんだろうって考えると……やっぱり、自分で選んでやっているんですよね(笑)。私には、力みすぎないことを課題に、一日一日を一生懸命にやっていくしかないのかな、と思い始めました」

ブラウス¥17600・パンツ¥18150/ヒューマンウーマン イヤーカフ¥23100・ブレスレット¥57200・リング¥36300/ジョージ ジェンセン ジャパン(ジョージ ジェンセン)
子どもたちがいろいろな体験や発見をする時間の中で、『人生って素晴らしいものだよ』と伝えられたら、と思っています
「今の暮らしは、“充実”というより“刺激”でいっぱい(笑)」と、菅野さん。その笑顔は晴れやかです。
「この間、娘が『大きくなったらお兄ちゃんと結婚したい』と言ったんです。そんなことを言う時期や関係になったんだ、と思うと感慨深かったですね。私は、自分が旅好きだから、子どもたちにも、いろいろな場所で体験や発見をするきっかけを作ってあげたくて。そういう時間の中で、『人生って素晴らしいものだよ』って伝えられたら、というのが今後の目標です」
撮影/生田昌士(hannah) ヘア&メイク/千吉良恵子 スタイリスト/青木千加子 取材・原文/藤本幸授美 撮影協力/バックグラウンズファクトリー
こちらは2023年LEE6月号(5/6発売)「LEE COVER INTERVIEW 菅野美穂さん —しなやかに、ひたむきに—」に掲載の記事です。
※商品価格は消費税込みの総額表示(掲載当時)です。
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