「靴屋さん」の独特の匂い……ってわかるでしょうか? デパートやファッションビルでも、その一角に近づくと明らかにそれとわかる、皮革やゴムの匂い。清潔な靴たちの匂い!
一方! わが家の玄関の靴箱周辺に漂う、よどんだ臭い……この違い、なんとかならないものでしょうか?
もしも叶うなら、靴売り場に並んでいた頃の靴の状態に戻したい、近づけたいですよね。さて、そのためにできることとは何でしょう?
今年の残り少ない日々でもできる大掃除としての「玄関掃除」も含めた、靴まわりのお手入れ・お掃除法を、今回はご紹介したいと思います。
まずは鼻をきかせて「におい元」の靴を突き止めて!
玄関や靴箱周辺が気になるほどに「におう」場合、その悪臭元は、ほぼ「特定の」靴ないしサンダルになります。
もしその一足が特定でき、取り除いたら、それだけで臭いがスッキリ消えてしまうことだってあるほど。
ですから、今回の靴箱・玄関掃除のキモは、掃除術のまえに嗅覚頼り。鼻を利かせて、一足一足確認することから始めましょう。
なかでもあやしく、危ないのは多量の汗ないし荒天時に雨水を吸い込んでしまったような「濡れた」過去のある靴たち。
ジョギングシューズやスニーカー類、夏用サンダル、冬用のブーツも、汗を吸い込んでいることが多いので注意。酸っぱい臭いや、納豆のような発酵臭を感じたら、すみやかに取り出してしまいましょう。
続けて「靴箱全部出し大掃除」ができればベストなのですが、諸事情で取りかかれない方は、ここで一度、新しい脱臭剤を収納内部に仕込んでしまいましょう。
大事なポイントは、できるだけ芳香作用のない、それ自体が完全に無臭の「脱臭剤」を選ぶということ。
脱臭剤は、収納部の最下段の奥の「両脇」に入れるのがポイントです。悪臭には「重み」があるので下に溜まるためです。
「におい元」の靴の処遇
さて取り出した「くさい靴」は、一足ずつ検分していきます。
夏用サンダルなど、裸足でワンシーズン履きつくし、もともとさようならをする予定だったのがうっかり残っていたもの。子どものいる家庭でよく出る、サイズアウトした運動靴。
もしそのあたりの靴がひっそりと「におい元」になってしまっていたような場合には、スッキリさっぱり、ここですみやかに処分してしまいましょう。
ちょっと悩ましいのは、一時期履き込んでいたけど、ここしばらく履いていなかったようなお気に入りの革靴やブーツがにおう場合でしょうか。
におうけど、うーん、捨てるのはまだ惜しい。
そんな靴は、まずは消毒用エタノールを吹き付けて、軽く湿らせた使い捨てのペーパー類で内部をよく拭きます。
内側がボアになっている場合は、薄めた洗濯用の中性洗剤(おしゃれ着用洗剤)を浸して絞ったタオルでゴシゴシと「拭き洗い」してみてから、消毒用エタノール拭きをしてもよいでしょう。
消毒用エタノールはなかなか強力ですし、「靴の中を拭く」というのは、案外あまりなされないことなので、これだけでも「におい」が抜けてしまうことも多いのです。
ちょっとやそっと拭いたくらいじゃどうにもならない強烈な臭いや、あるいは「カビ」まで来てしまっているような、でも使用頻度の低い靴(オケージョンの限られた高価な靴)などの場合は、専門店での靴クリーニングに出すのが最適解です。
特にカビが生えている場合は表面の劣化のおそれもあり、プロに預ける方が間違いありません。ただ、一足あたり丸洗いやカビ取りや補色(劣化で色落ちした部分の修繕)含めて1~2万円の予算はみておく必要があります。そのコストと手間に見合うかどうかは要思案です。
比較的日常的に履いていて、靴自体の見た目もきれいだけど、臭う……という場合は、ミョウバンなどを主成分とした市販の粉末靴専用消臭剤(グランズレメディなど)を仕込んだ状態で、「あえて履き続ける」という方法もあります。ダンス用の靴などが該当するでしょうか。
もし「におい元」の靴が、洗えるジョギングシューズやスニーカー類だった場合には、とにかく洗ってしまうのが何より早道です。
ただ子どもの靴ならともかく、大人サイズの靴って大きさも段違いだし、素材もいろいろでどう洗っていいものかちょっと戸惑ってしまう方も多いのでは。
スニーカーでも、レザーや合皮の場合は水洗いできないことが多く、そんな場合は革靴同様に外注する必要があります。
ただ、洗える素材であれば、近年急激に増えている「コインランドリー」を使ってみるのもおすすめです。
おうちの近隣の店舗を検索、靴専用洗濯機(スニーカーランドリーなど)があるなら、ぜひ試してみて。コストも洗濯だけなら200円程度、乾燥まで含めてもトータル1000円以下で済みますから、くさいくさいと我慢して履き続けるより、いろいろな面でヘルシーなのでは!?
かくしてお手入れ済みの靴は、そうはいってもやはり、においやすい靴ではありますので、その後は履いたら陰干し、内部には活性炭やシリカゲルでできた乾燥剤を日常的に入れておくようにしましょうね。
「靴箱全部出し大掃除」をするなら
さて大掃除はしたいけれど家全部なんて無理!という方に、小さく耳打ち、おすすめしたいのが「玄関だけの大掃除」だったりします。
なにせ玄関は他の部屋に比べて面積が小さめかつ、掃除をした結果が自分にも家族にもダイレクトに間違いなく還元される空間。「労力」対効果が最高なんです。
そんな「靴箱全部出し大掃除」をするならば、年内の最終燃えるゴミ収集日の前、かつ、よく晴れた湿度の低い日がチャンスです。
まずはすでに取り出した「におい元」の靴以外のすべての靴を出し、バルコニーやテラスなどを利用して陰干し。
このとき必ず「箱入り」の靴も、箱から出して新鮮な空気にさらして。そうして干している間に、くつ箱・シューズボックスの棚板を、汚れ落とし効果がありかつ揮発性の高い消毒用エタノールで拭き掃除してしまいましょう。棚板にホコリや汚れが多い場合は、ハンディ掃除機を併用した方が便利なことも。
すっきり拭いた棚板には、何かしらの紙を敷き込み、靴底の汚れ受けと湿気吸収にあてます。一昔前には「新聞紙を敷く」というライフハックが一般的であったのですが、最近では逆にちょっとハードルが高いかも。
お掃除用の不織布や、厚手のキッチンペーパー、コピー用紙などでも構いませんが、とにかく一枚紙を敷くのがポイントです。100円ショップなどでも扱われている消臭力のある活性炭が織り込まれたシートを敷き詰めるのもおすすめ。そこによく乾燥させた靴を戻していきましょう。前述の「脱臭剤」を、あらためて仕込むのも忘れずに!
玄関たたき(土間)やドアは、捨ててもいい古タオルを軽く湿らせたもので、どんどん拭いてしまいましょう。
そうしてスッキリとにおいもホコリっぽさもない気持ちいい玄関で、新しい年をお迎えくださいね!
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藤原千秋 Chiaki Fujiwara
住生活ジャーナリスト、ライター
掃除、暮らしまわりの記事を執筆。企業のアドバイザー、広告などにも携わる。3女の母。著監修書に『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)など多数。LEEweb「暮らしのヒント」でも育児や趣味のコラムを公開。
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