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【宙組・桜木みなとさん】苦しいときほど成長できる。苦労は買ってでもする!【宝塚スター|ことばの力】

  • TAKARAZUKA STAR INTERVIEW ことばの力

2022.12.15

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文字 :TAKARAZUKA STAR INTERVIEW 新連載スタート! ことばの力 宝塚[宙組] 桜木みなとさん

気づきを与えた言葉、背中を押してくれた言葉、自分を鼓舞する言葉……。舞台人として、一人の人として。“清く正しく美しく”輝くタカラジェンヌが大切にしている言葉とは?

文字:今の自分を作ったことば「苦しいときほど成長できる。苦労は買ってでもする!」

写真:ことばの力・宝塚歌劇団宙組男役スター桜木みなとさん・苦しいときほど成長できる。苦労は買ってでもする!

Minato Sakuragi

2009年、宝塚歌劇団に入団。宙組に配属される。二度の新人公演主演とバウホール公演主演を経験。主演を務めた『壮麗帝』や『カルト・ワイン』も大きな話題に。その演技力と表現力で客席の心を震わせる男役スター。
宝塚歌劇公式ウェブサイト>>

どんなときも逃げなかった自分のことは褒めてあげたいと思う

「幼い頃の私は好奇心旺盛で。興味のあるものを見つけては次々と挑戦。宝塚音楽学校の受験もそのひとつでした。まともにレッスンを受けたことすらないのに、いきなり“受験する!!”と言い始めて。今振り返ると、本当に怖いもの知らずだったと思います(笑)。そんな私の“やりたい!!”に両親が反対することは滅多になく、何度も言われたのが“人様に迷惑はかけるな”“謙虚に生きなさい”という言葉。“自分の道を自由に歩いてもいいが人としての道は外れるな”それが両親の教育方針だったのかもしれません

後先考えずに宝塚音楽学校を受験、そして、まさかの一発合格。「本当の転機はそこから。それはもう、いくつもの壁にぶち当たりましたから」と桜木さんは続けます。

「厳しい世界の中で“自分はダメなんだ”となかなか自信が持てず、いつまでも自分の個性や武器が見つからない……。そんな時間がとても長くて。それこそ、男役10年目を迎えたときもまだまだ悩み続けていましたから」

早くから注目を集めスター街道を突き進んでいるように見えた、彼女を悩ませていたのが「優等生」という評価。

「当時の私は“優等生”という言葉に対して“なんでもできるけれど、個性がない”という意味にも感じてしまって。どうしたら変われるのか、殻を破れるのか、もがき続ける毎日。そんな私を変えたのがコロナ禍での長い休演期間でした。

あり余った時間を使い、映像作品を観たり、本を読んだり。そこで“この世界にはいろんな人やいろんな考え方が存在する”ということにあらためて気づいて。狭かった視野がグンと広がり、閉じていた心がパカンと開いたような感じがしました。

それまでの私はどこかストイックな完璧主義者で。届かない高い場所に合格ラインを定めては、できない自分を責めて追い詰め、一人で戦っていたような気がします。だからこそ、素直に周りの言葉を受け入れることができなかったりして。でも、それじゃあダメだなって。皆で舞台を作って、お客様に楽しんでもらうのは、そういうことじゃない気がするな……と」

優等生と評されてきた彼女だがその素顔は実は不器用。

「先日も私の悪い癖が出そうになったときに、芹香※1さんが“ずんちゃん※2、エンジョイして!!”と声をかけてくださったんです。“そんなに追い詰めなくても大丈夫、自信を持って楽しもう!”と。 一人で戦って周りが見えなくなっていましたが、尊敬する先輩からの一言で、うれしくなると同時に一気に視野が広がりました」

悩みもがきながら歩いてきた、桜木さんが今も昔も大切にしているのが「苦労は買ってでもする」という言葉。

自分を褒めるとしたら、逃げなかったことです。楽なほうに逃げるのはすごく簡単。でも、逃げたら何も残らない。苦しいときこそ、やってみよう、この道を極めてみよう、攻略してみよう、そうやって得たものは必ず自分の財産になる。だからこそ私は、逃げず、諦めず、向き合い続けた先に見える景色をこれからも大切にしたいと思っています」

※1=宙組の芹香斗亜さん ※2=桜木さんの愛称



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【桜木みなとさんに3つの質問!】

写真:緑のシャツを着て座る宝塚歌劇団宙組男役スター桜木みなとさんの全身

Q1:
最近の休日の過ごし方は?

海外ドラマやアニメに夢中。
コロナ禍を経て私の毎日は大きく変わりました。

数日の休暇をいただければ旅行やドライブへ。以前の私は家の中でじっとしているのが好きではなくて、休日は朝から晩まで予定をギッシリ詰め込んでいたのですが、最近は、一日中、家の中で過ごしております(笑)。

何をしているのかというと、ずっと海外ドラマを見ています! それと、最近よく見るのはアニメですね。その魅力はまず、シンプルに面白い!! 話題のアニメはほぼチェックしていますが、一番好きな作品は『ばらかもん』という心温まるお話。もともとディズニーアニメなどはよく見ていましたが、コロナ禍にさらに色々なジャンルの作品に出会い、夢中に。

それこそ、キャラクターを演じるのは役者も声優さんもきっと同じと思い、芝居の勉強にもなりました。声色を使って男役を演じる宝塚と声優さんにはどこか通ずるものを感じて。実は、2年前の公演『アナスタシア』のヴラド・ポポフ役もそこからヒントをもらって演じたんです。

ちなみに、公演中はなぜか見たくなるジャンルがガラッと変わり、ホラーやサスペンス系の作品をやたらと見たくなります。舞台に立つことで気持ちが昂り、無意識にさらなる刺激を求めているのでしょうか。不思議ですよね(笑)。

Q2:
桜木みなとの“武器”を教えてください。

昔は好きになれなかった“笑顔”が
武器になりました。

応援してくださる方々からは笑顔を褒めていただくことも多かったのですが、昔の私は自分の笑顔が好きになれなかったんです。なぜなら「男役ならカッコよくなければ!!」と思っていたから。笑顔よりもクールな表情が似合う男役に私は近づきたかったんです。

でも今は、その言葉を素直に受け入れることができるようになり、自分の個性だと大事にできるようになりました。主演を務めさせていただいた『カルト・ワイン』では演出家の栗田優香先生からこんな言葉をかけてもらったんです。「桜木さんは笑顔に数えきれないほどの感情があるね」と。悲しみを秘めた笑顔、侮蔑を込めた笑顔、愛おしい人へと向ける笑顔……一言で笑顔と言ってもいろんな種類がある。「それをちゃんと表現できる人だ」と栗田先生が言ってくださった。それが、本当に嬉しくて。

理想を追い求めるのも大切なことですが、一番必要なのは、自分と向き合い、自分を知り、自分の魅力を受け入れて出すことなんですよね。栗田先生の言葉は改めて私にそれを教えてくれました。

Q3:
男役14年目、今はどんな瞬間に喜びを感じていますか?

大切な人たちが喜んでいる姿を見ると、
心が震える。

「桜木みなとはどんな人ですか?」と聞かれたら、私は「エンターテイナー」と答えると思います。本名の自分ではなく“桜木みなと”でいる時間は、舞台上だけでなく、舞台袖でも、稽古場でも、常に目の前にいる人を幸せにしたいと思っているから。

そんな私の心が震えるのはお客様の喜んでいる姿を見たとき。そして、仲間の楽しそうな姿を見たとき。『カルト・ワイン』ではカンパニー全員がとても楽しそうで、皆もそう言ってくれたのがとても嬉しかった。

そして、個人的には真風涼帆さん(宙組トップスター)、そして、芹香斗亜さん(宙組男役スター)と同じ舞台に立てる今に喜びを感じています。お二人の大きな背中をそばで見るたびに「私はここに立つために頑張ってきたんだな」と感慨深い気持ちになる。尊敬するおふたりと一緒に舞台に立たせていただけることが今はとても幸せで。2023年には宝塚歌劇団を卒業されてしまう真風さんをはじめ、先輩方が作ってくださった宙組を次の世代に受け継ぎたい。その間に立てるように、自分もさらに頑張らなければと思うのです。

 

>>NEXT STAGE

アクション・ロマネスク
『カジノ・ロワイヤル 〜我が名はボンド〜

コードネーム「007」を持つ、秘密情報部員ジェームズ・ボンド。彼がスパイを倒すため乗り込んだ「カジノ・ロワイヤル」で陰謀と策略のドラマが始まる。
● 主演:真風涼帆 潤 花
● 2023年3月11日〜4月17日 宝塚大劇場/5月〜6月(予定) 東京宝塚劇場

写真:宝塚歌劇団宙組公演カジノ・ロワイヤルのイメージ

©宝塚歌劇団 Photographer/LESLIE KEE(SIGNO)


撮影/柴田フミコ 取材・原文/石井美輪
こちらは2023年LEE1・2月合併号(12/7発売)「新連載 ことばの力 vol.1 桜木みなとさん」に掲載の記事です。

TAKARAZUKA STAR INTERVIEW ことばの力

宝塚歌劇団の男役スターがLEEに登場! 舞台人として、一人の人として。“清く正しく美しく”輝くタカラジェンヌたちが大切にしている「ことば」をテーマにインタビュー。

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