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映画ライター折田千鶴子のカルチャーナビアネックス

世界で大ヒット中の『RRR』。インド発スーパー・エナジーチャージ映画の主演2人に緊急インタビュー

『バーフバリ』シリーズ監督最新作

ひゃ~!!! す、スゴ過ぎる。何がスゴイって、それはもう全て。圧倒されまくりの約3時間。日本でも大旋風を巻き起こした『バーフバリ』シリーズの監督最新作と聞けば、期待値は相当上がったまま鑑賞したのですが、それでもなお大興奮! なんじゃコレってくらい、スケール感からアクションのド迫力から熱すぎる友情や使命感やら、もう、大洪水のように浴びまくりました。

なるほど、インド映画史上最大の製作費7200万ドル(約97億円!!)を掛け、上手くいけば(ここが重要ですが)こんなことになるのか、と深~く感嘆。本国のインドではもちろん、既に全世界で大ヒットを飛ばしている『RRR』の日本公開が始まりました。

絶賛公開中!!  ©2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED.

日本劇場公開に、S.S.ラージャマウリ監督&主演のNTR Jr.さんと、ラーム・チャランさんが駆け付けてくれました。

そこで、インドのスーパースター、NTRさんとラームさんに、興奮冷めやらぬまま直撃しちゃいました。

左:南インドの森からやって来た伝説の闘士ビーム役のNTR Jr.さん 
1983年5月20日、現テランガーナ州ハイダラーバード生まれ。祖父も父も著名な俳優かつ政治家でもある一家に生まれ育つ。91年、祖父の監督・主演作で子役デビュー。01年、S・S・ラージャマウリ監督のデビュー作『STUDENT NO.1』のヒットにより人気に。再びラージャマウリ監督作『SIMHADRI』(03)でテルグ語映画界のトップスターに。『RRR』は29本目の主演作。
右:総督指揮下で治安維持にあたる炎の男ラーマ役のラーム・チャランさん
1985年3月27日、タミルナードゥ州チェンナイ生まれ。父は、テルグ映画界のメガスター、チランジーヴィ。07年に『CHIRUTHA』に主演で映画デビュー。『マガディーラ 勇者転生』(09)が記録的なヒットを飛ばし、多数受賞し、人気スターに。『ZANJEER』(13)でボリウッド映画界にも進出。『RRR』は13本目の主演作。

『RRR』ってこんな映画

1920年、反英独立運動の炎が各地で燃え上がる、英国植民地時代のインド。英国総督に連れ去られた幼い少女を奪還するため、南インドの森からビーム(NTR Jr.)がデリーにやって来る。一方、恋人や家族を故郷に残し、大義のためにラーマ(ラーム・チャラン)は英国総督指揮下の警察官に。それぞれ、故郷の人々や家族への熱い思いを胸に秘めた2人は、敵対する立場にありながら、ひょんなことで知り合い、互いの素性を知らぬまま無二の親友になる。しかし、ある事件をきっかけに、2人は友情か使命かの選択を迫られることになるーー。

──あまりにお2人の迫力と存在感がスゴ過ぎたので、2~3mくらいある巨人の方々をつい想像しちゃっていましたが……安心しました。

2人「(爆笑)!! この通り、普通ですよ」

──ものすごい壮大なスケールでしたが、製作費も破格ですね。

NTR「製作費が膨らんだのは、間にコロナ禍で休止せざるを得なくて、撮影が18年11月に始まって21年8月までかかったことも影響しているけど、とにかくエピソードが多く、各エピソード中の要素がとにかく多いからね。でも最も費用が掛かったのは、動物(猛獣)たちが飛び出して来て、イギリス側と闘うシーンだった。猛獣はもちろんCGだけど、あのシーンの撮影だけで50日も掛かったんだ。夕方6時に撮影を始め、朝の4時まで撮影していたよ」

ラーム「そうそう、夏に始まった撮影が、終わったら冬だった、みたいな感じ(笑)」

NTR「とにかく膨大な数のシーンと要素で、それはもう凄かったよ」

──別にお2人のギャラが膨大だから、製作費が膨らんだワケではないのですね(笑)?!

2人「ない、ない。それは絶対にないよ(笑)!!」

ラーム「これ、インドで放映されない!?」

NTR「ダメダメ、これから色んなところで出演交渉があるから、誰にも教えられないよ。もしかしたら日本のプロデューサーさんから出演依頼されるかもしれないし(笑)。お口、チャックだよ!」

全シーンが見どころ!

──全編、見どころばかりですが、やはり触れずにいられないのは、川で2人が協力して少年を救い出すシーンです。何度、息を飲んだことか!! CGもスタントもなしで、全部、お2人が演じたわけですよね?

ラーム「もちろん。スタントなしで撮影しましたよ!」

NTR「僕ら2人とも60~70フィート(約20m)の高さに吊られ、150 キロくらいのスピードで揺られていたんだよ。つまり、2台の新幹線が空中で近づいたり離れたりしていた感じかな。あるいは、60フィートのバンジージャンプをずっとやっている感じ」

ラーム「まぁ、バンジーは真っ直ぐ落ちていくけれど、僕らは行ったり来たりだったけどね」

──監督に“ちょっと無理です”とか、文句を言ったりしたことはない?

ラーム「一応、文句は聞いてくれるんだけれど、“あ、そう。じゃ、始めるよ”って(笑)。“大丈夫、大丈夫。さ、もう一度やろう”みたいに軽く聞き流されるんだ」

NTR「何度リテイクしたのか覚えていないくらい。あの川の救出シーンは1日8時間、3日かけて撮影した覚えがあるな。いったん上に吊られると、少なくとも1時間は降りてこられないんだ。60フィート上空に居っぱなし」

ラーム「現場をセットアップするのに約1時間かかるんだ。それからカメラマンが、上から撮ったり下から撮ったり。右から左からって、違うアングルから何度も撮らなければならない。そのたびごとに、僕らは何度も同じシーンを演じたからね」

NTR「クレイジーでしょ(笑)!! それこそがラージャマウリ監督なんだよ」

ラーム「君から監督に伝えてみてよ。“あれは、ちょっとやり過ぎじゃないですか!?”って(笑)」

──CGもスタントもほぼ使ってないとおっしゃいますが、にわかには信じられないです。

NTR「猛獣たちが飛び出してくるシーン以外は、実際に現場で自分たちが身体を使ってすべて演じたよ。CG用の(グリーンバックでの)撮影は、ほとんどなかったな。特殊効果はほぼ使わずに、リアルに撮ったものばかり」

ラーム「水も炎もCGで作っているわけじゃなく、実際にその場にあったし」

NTR「総督のお屋敷はセットだけど、実際に爆発は起きている。それを大爆発にする程度のCG処理はされているけどね」

──終盤の森の中での戦闘シーンも、森が燃えたりしていましたが、グリーンバック撮影ではなくリアル撮影なんですね。

ラーム「もちろん、実際に森の中でロケ撮影をしたよ」

NTR「僕ら、馬やバイクに乗ったまま闘ったりするの、上手いんだよ(笑)」

ラーム「森の中の水しぶきも、火もすべて本物。危険な撮影ではあったけど、やっぱり生身の人間が本当にやることでしか、あの迫力は出せないと思う」

──映画の冒頭、ラーマが群衆を相手に一人で闘うシーンも鳥肌が立ちました。あれも、信じられないスケールでした。

ラーム「あそこは確か、出来上がった映像では2万人くらいの群衆が集合しているような画になっているけれど、CGでちょっと処理をして膨大な人数にしていると思う。実際には6千人強のエキストラだった。あのシーンもセットを建て、リハーサル40日間、撮影は2週間で撮ったんだよ!」

大スター同士の初共演作

──資料に、そもそも大スターのお2人が共演するなんて、“大事件”だとあります。互いをどう認識していましたか!?

ラーム「NTRさんは、信じられないくらいのエネルギーの持ち主。火山のように、フツフツと止まらないエネルギーが常に爆発している感じ。多分、夜、寝ている時くらいしか止まらないんじゃないかな。本当に夜、寝てるのかなって不思議になるくらい、常にエネルギッシュで」

NTR「ラームは、逆に自分をコントロールできる人。僕は、外に爆発させるエネルギーのタイプだけど、ラームは内に熱いエネルギーを秘めている。そして必要な時、それを出すんだ。僕たちは、互いに真逆だからこそ、お互いのことが好きだし、仲がいいと思う。まるで陰陽みたいな感じでさ」

──なるほど。お2人にも厚い友情が芽生えたのですね。ただ、ビームとラーマのような熱すぎる友情って、実際どう感じますか。

NTR「あれは映画だからね(笑)」」

ラーム「う~ん、あそこまでの友情はないよね。この2人の関係って、すごくユニークでしょ。僕らは2人とも何世代か代々映画に関わってきている映画業界の家庭出身で、ある程度の健康的なライバル心もお互いに持っているし、でも、すごくお互い好きだし。でも、ビームとラーマとは、時代も背景も違うからな」

NTR「ないな」

ラーム「ないね(笑)」

──ビームとラーマは友情だけでなく、すべての感情表現が激しいですよね。普段の自分たちからすると、どれくらい増し増しで演じられましたか?

NTR「100倍くらい。……ってのは言い過ぎかな。とにかくどの映画でも、キャラクターになり切らなきゃいけないから」

ラーム「キャラクターがどんな風に振る舞うのかは、監督が決めること。どんな役であれ、自分自身ではないからね。あるキャラクターを演じる以上、自分にはない要素が沢山ある。そのために頑張らなきゃならないわけだから」

NTR「今回どのくらい頑張ったかは測れないけど、一つ言えることは、ラージャマウリ監督の作品に出る以上は、全身全霊を捧げないといけないよね」

ラーム「全く同感。現場の努力は、監督の姿勢から促されるというか。僕らも役者として、キャラクターのために最高の努力をする。でも監督やスタッフの努力を見ると、僕らの努力は、まだまだ負ける。彼らの方が頑張っているって思ってしまうくらいなんだ。とにかく監督もチームも、すごい努力をしているんだ。もちろん、僕らも大変は大変だけど」

──既に巷で話題になっている“ナートゥダンス”バトルシーンも、凄かったです! ノンストップで踊り続けていましたね。

ラーム「その通り!」

NTR「練習6日、撮影14日間、撮影中も練習をしながら計20日間*。大変だったけど、劇場で観てくれたみんなが、とっても楽しんでくれているので、やっぱり嬉しい」

*他の記事(舞台挨拶)に、練習3日、撮影14日という記載がありましたが、取材時「20日間」と何度か口にされていたので、ここではそのままで。

ラーム「今でも“ナートゥ、ナートゥ”って言ってくれのはありがたいけれど、やろうとすると今も膝が痛むんですよ」

ダンスシーンの撮影で体重減少!

──その、ダンスシーンを撮り終えた瞬間は!?

2人「完全にデッド! 周りのみんなも死んだようになっていたよ(笑)」

ラーム「だって、あのシーンを撮った後に計ったら、だいぶ体重が落ちていたからね!」

NTR「強烈なワークアウトを集中的にやった状態だったよね、20日間連続で」

──危険と隣り合わせの撮影が続いたと思いますが、実際に怪我はされました?

NTR「もちろん2人とも撮影中に怪我をしましたが、大変なアクションシーンでは怪我をしないんですよ。フとしたところの、ちょっとしたミスで怪我しちゃうものなんですよね。その、ちょっとした怪我が、結構、重いものになってしまう。僕は、膝のじん帯をやっちゃったかな。あと鞭うちのシーンで、肩と手首を痛めてしまったんですよね」

ラーム「あくまでも、僕が鞭で叩いたから怪我したわけじゃないよ!!」

NTR「紐で吊られているシーンで、怪我しちゃったんだよ」

──鞭と言えば、段々と残酷なものになっていって、トゲトゲ付きの鞭で打たれてましたよね!?

NTR「あれも、本物。実際にも、トゲトゲの鞭で撮影したよ。意地悪な奴なんだよ、ラーム(笑)」

ラーム「違う、違う!! クライマックスでも腹筋が鉄条網に巻かれますが、まぁ、鉄条網繋がりということで(笑)!」

──日本でも『あなたがいてこそ』『マッキー』あたりからファンが増え始め、『バーフバリ』シリーズで人気が大ブレイクしたラージャマウリ監督ですが、インドのエンタメ界では、もはや神のような存在ですか? 無敗伝説の理由って何でしょう!?

NTR「確かに、もはや半神的な存在だね。インド映画業界において、彼の代わりになるような人はいない。無敗の理由が言えればいいけれど、そもそも僕には彼の考えがどんな風に機能しているのか理解できないし……。もっとも、素晴らしいストーリーに関する才能に、元々恵まれているということは言えますよね」

ラーム「彼のような監督がいてくれて、本当に嬉しいです。西欧から影響されたストーリーではなく、しっかりインドに根付いた物語をちゃんと愛していて、それを映画で綴ってくれる。それが、素晴らしい。ただ、僕も彼の脳がどんな働きをしているのか、さっぱり分からない(笑)。毎回ご一緒するたびに、“あ、こういう面もあるのか”と新たな発見があるんです」

NTR「本作のすべてが、エモーショナルな意味でもビジュアルな意味でも素晴らしくて、スゴイ。皆さん、とにかくすべてを楽しんでください」

ラーム「個人的には、今回NTRさんと一緒にお仕事を出来たことが、すごく大きかったです。でも観客の方には、各人で色んな楽しみが出来る作品だと思うので、全ての要素を楽しんで欲しいです」

 

『RRR』とは、Rise(蜂起)、Roar(咆哮)、Revolt(反乱)ということで、意見を一致されているようですが、その他にも英語や南インドの各言語で、物語、水、炎、蜂起、咆哮、反乱、怒り、戦争、血…などといった意味が込められているというか、様々なRを組み合わせたタイトルだそう。

とにかく熱い。きっと誰が観ても、大興奮間違いなしです。なんだかド迫力すぎて、よく分からないテンションになって笑い出したくなっちゃったりもするのですが、ほのかな恋話や家族愛、“故郷を守りたい”という使命感や愛、インド人である誇りに、フツフツと感動を覚えずにいられません。

何より、支配するイギリス側の総督たちが極悪人に描かれているので(笑)、複雑な感情に陥らず、勧善懲悪ものとしてスッキリできてしまうのも嬉しい。まさに、没入して嫌なこととかすべて忘れられるような、一大エンターテインメイントの快作。これはもう、観ない手はありません。是非、劇場へ駆けつけて大いに盛り上がってください。

『RRR』

2021/インド/179分/配給:ツイン

監督・脚本:S.S.ラージャマウリ

原案:V.ヴィジャエーンドラ・プラサード

音楽:M.M.キーラヴァ―二

出演:NTR Jr./ラーム・チャラン、ほか

©2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED.

公式Twitter:@RRR_twinmovie

映画『RRR』公式サイト

 

 

映画ライター/映画評論家

Writer Profile

Chizuko Orita

LEE本誌でCULTURE NAVIの映画コーナー、人物インタビューを担当。Webでは「カルチャーナビアネックス」としてディープな映画人へのインタビューや対談、おススメ偏愛映画を発信中。他に雑誌、週刊誌、新聞、映画パンフレット、映画サイトなどで、作品レビューやインタビュー記事も執筆。夫、能天気な双子の息子たち(’08年生まれ)、2匹の黒猫(兄妹)と暮らす。

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