’22年4月から始まった、不妊治療の保険適用の詳細は? 職場での周りからの理解など、不妊治療を取り巻くポジティブな話題にも注目です。
教えてくれたのは
NPO法人 Fine 理事長 松本亜樹子さん
不妊体験者による不妊体験者のための、セルフサポートグループ「Fine」理事長。悩み相談や不妊で悩む人たちの交流支援、不妊ピア・カウンセラーの養成など活動は多岐にわたる。詳細はこちら。https://j-fine.jp/
Instagram:akikomatsumoto1007
Twitter:kyootyan
公式サイト:http://coacham.biz/
国の制度も少しずつ前進。不妊治療中は受け身的サポートを
自身も不妊治療を経験し、多くの相談を受けている松本さん。
「’04年にFineを設立してからずっと、不妊治療の4つの負担として掲げているのが、体、心、お金、時間。特に時間に当てはまるのが『仕事と治療の時間をどう両立するか』で、15年以上たっても、不妊治療は何をするのか、なぜ頻繁に通院するのか、なかなか各企業に周知されないのが現状です。一昨年のFineの調査でも、治療経験者の5人に1人が退職したというデータもあります」(松本亜樹子さん)
治療を続けるためには「職場に治療のことを話したほうが働きやすいはず」と松本さん。厚生労働省などのサポートも少しずつ前進。
「厚労省のHPで不妊治療をしている社員へのサポートハンドブックをダウンロードできます。企業のトップに向けたものと直属の上司に向けたものがあり、治療のことを話す際に活用する人も。不妊治療で通院の必要があることを医師に書いてもらい、会社に提出できる『不妊治療連絡カード』も助けに。
不妊治療をしている人へのプレマタニティハラスメントをなくすために、一昨年に施行されたハラスメント法に不妊治療も記載されています。環境は少しずつ整っているので、治療をしている当事者の周りの人も、ぜひ理解を。治療中、結果を聞かれるとつらいので、見守ったり『何かあれば声をかけてね』と言うなど、受け身的なサポートがうれしいと思います」(松本亜樹子さん)
厚労省による不妊治療支援ツールも
不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック。不妊治療の内容や、職場での配慮のポイントを紹介。
不妊治療連絡カード。主治医に治療の必要性を記載してもらうことで理解を得やすく。
出典:厚生労働省HPより
不妊治療が保険適用に! ただし条件やデメリットも…
治療の保険適用には年齢制限や条件も。メリットと問題点も解説します。
治療のハードルが低く。厳しい条件は改善の余地あり
今年4月から、タイミング法、人工授精、体外受精、顕微授精など、不妊の基本治療すべてに医療保険が適用。支払い負担は3割に。
「ハードルが低くなり、多くの人が不妊治療にトライできるのはいいこと。一方で、年齢制限や回数制限があり、30代など早い段階で治療を始める人は恩恵がありますが、40代だとこれまでの助成金のほうがよかったというケースも。基本治療以外のオプションの治療や薬には保険適用できないのも問題点。体に合う薬を保険の都合で使えないとなると、妊娠から遠のいてしまう可能性もあります。今後、見直されるといいですね」(松本亜樹子さん)
保険適用の条件(体外受精・顕微授精の場合)
年齢制限 |
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治療開始時に女性の年齢が43歳未満であること |
回数制限 | |
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初めての治療開始時点の 女性の年齢 |
回数制限 |
40歳未満 | 通算6回まで(1子ごとに) |
40歳以上43歳未満 | 通算3回まで(1子ごとに) |
保険の適用は43歳未満が条件。体外受精と顕微授精は、40歳未満までは6回、40代になると3回までと規定されており、それ以上の回数になると自費の治療になり、これまでと大きく変わらず。
※年齢制限・回数制限には経過措置があります。2022年4月2日〜9月30日までの間に43歳になる方は43歳になってからでも、同期間中に治療を開始した場合、1回の治療(採卵〜胚移植までの一連の治療)に限り保険診療を受けることが可能です。
知っておきたい
メリット
- これまで費用が理由で治療に手が出せなかった層にも、治療のハードルが低くなった。
- 体外受精などの高度な医療を「そこまでしなくても」と敬遠していた周囲の人にも、保険適用になったことで市民権を得て理解されやすく。
- 保険適用で病院に行く人が増えて、職場などで話しやすくなった。
デメリット
- 保険適用可なのは、治療開始時に女性の年齢が43歳未満の場合のみ。年齢により体外受精の回数制限も。
- 基本治療に加えてオプションの治療を受けたい場合、混合診療ができないので、結局すべて自費に。
- 保険適用により治療したい人が増え、病院での待ち時間が長く。仕事との両立がより難しくなるケースも。
【特集】働きながら“不妊治療”をするということ
詳しい内容は2022年LEE9月号(8/5発売)に掲載中です。
イラストレーション/きりふみこ 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
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