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CULTURE NAVI「CINEMA」

映画『FLEE』世界中が大絶賛!理想を求めた難民生活をアニメで描いたドキュメンタリー、他2作品

2022.06.09

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Cinema Culture Navi

『FLEE フリー』

『FLEE フリー』

© Final Cut for Real ApS, Sun Creature Studio, Vivement Lundi!, Mostfilm, Mer Film ARTE France, Copenhagen Film Fund, Ryot Films, Vice Studios, VPRO 2021 All rights reserved

アニメだからこそ描き得た衝撃のドキュメンタリー

各国の映画祭で数えきれない賞を受賞、世界中が大絶賛! アニメーションでドキュメンタリー!?と、若干違和感を覚えもするが、観始めた瞬間スッと引き込まれ、心が揺れ、一瞬も目が離せない!

アフガニスタン生まれの幼いアミンは、父が当局に連行されたまま戻らず、残された家族と命がけで祖国を脱出する。逃れた先は、祖国の内戦にかかわりのあるロシア。北欧へ渡る機会を待ちながら、迫害され、隠れ住む苦しい生活が何年も続く。やがて密入国業者に大金を積み、10代のアミンが先にデンマークへ渡る。たった一人で生活の基盤を作り、二十数年後の現在。研究者として成功を収めた30代半ばのアミンが、誰にも打ち明けたことのない壮絶な人生や秘密を静かに(本作の監督に)語り始める――。

よくぞ10代半ばの少年が一人で……と尊敬するやら感心するやら。美しかった祖国の記憶から一転、命がけの脱出、隠れ暮らす不安や鬱屈に満ちたモスクワ生活、そんな状況下で大きくなっていくアミン、離れ離れになった家族のために貫いてきたこと、そのすべてに言葉を失う。「故郷とは?」と問われ、「よそに行かずに済むところ」と答える彼の言葉が胸に突き刺さる。

だが一方、ゲイであることが許されない祖国やロシアから逃れ、北欧で生活を送れることは幸運とも言えるだろう。そう、アミンは幸運な一人でもあった。祖国から逃げ出せなかった人、いや今この瞬間も多くの人々が、かつての彼と同じ境遇にあると容易に思い至り、胸が塞がれる。なるほど、アミンや周辺の人々の安全を守るためアニメーションで制作されたというが、これ以上にふさわしい手法はなかったに違いない。

アミンの記憶に忠実な心象風景、脳裏に焼きついた景色、体感した空気、困難な思春期にあっても恋のトキメキや喜びや葛藤が、繊細かつ鮮やかに焼きつけられている。だからこそ観る者は親密な感情を抱き、他人事でなく自分と同じ世界に立つ人間の現実の話であると実感させられる。今、観られるべき一作である。

・6月10日より全国ロードショー
公式サイト

『母へ捧げる僕たちのアリア』

『母へ捧げる僕たちのアリア』

© 2021 – Single Man Productions – Ad Vitam – JM Films

ヤングケアラーの少年が夢と未来をつかみかけるまでの物語

南仏の古びた公営団地。14歳のヌールは3人の兄たちと、昏睡状態に陥った重篤の母を自宅で介護しながら暮らしている。ヌールはオペラ好きの母のため、大音量で音楽をかけるのが日課。

夏休み、清掃バイトの途中で歌唱の夏期教室に引き寄せられたヌールは、講師にすすめられるまま歌う喜びを知る。最初は末弟の音楽好きを疎ましく思っていた粗暴な兄たちが、弟の才能や未来に希望を見出していく展開が感動的!

・6月24日よりシネスイッチ銀座ほか全国公開
公式サイト

『メタモルフォーゼの縁側』

『メタモルフォーゼの縁側』

©2022「メタモルフォーゼの縁側」製作委員会 配給:日活

58歳差の友情に魅せられ、癒され、目を見開かされる!

書店でバイトをするBL漫画好きの女子高生うらら(芦田愛菜)は、表紙の絵の美しさに惹かれてBL漫画を買い求めた75歳の雪(宮本信子)と言葉を交わすように。いつしか2人は、BL漫画を通して友情を深めていく――。

初めて知るBL世界に、素直にキュンキュンする雪の柔らかさがステキ! そんな雪に背中を押され、人付き合いが苦手なうららが、一歩踏み出していく姿が優しく描き出され、観る者の心をも軽くしてくれる。

・6月17日より全国ロードショー
公式サイト

※公開につきましては、各作品の公式サイトをご参照ください。


取材・原文/折田千鶴子


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