“億り人”と呼ばれる富裕層の多くは、実は特別じゃないごく一般の生活を送る人たちです。彼らの共通点を探ると、私たちにもすぐまねできることがいっぱい!
教えてくれたのは
経済コラムニスト 大江英樹さん
大手証券会社で定年まで勤務した後に独立。資産運用や行動経済学などを専門に、書籍やコラム執筆、年間140回を超える講演など、多方面で活躍。『となりの億り人』(朝日新聞出版)など、著書多数
公式サイト:http://www.officelibertas.co.jp/
Twitter:officelibertas
大江さんが見つけた
“サラリーマン億り人”の共通点
1(余分な)保険に入っていない
大江さんいわく、億り人は、生命保険や医療保険に入っていない、または最低限の保険のみに加入しているそう。
「日本の公的な保障は手厚いです。もちろん若い人や資産が少ない人は、ある程度の保険は必要ですが、資産が増えれば必要のない保険も出てきます。彼らは国や会社の制度を調べて、合理的な判断をしているんですね。毎月高額な保険料を払っている人は、一度見直してみてはどうでしょう」(大江英樹さん)
\ 実は手厚い!日本の公的保障 /
国民年金の被保険者が配偶者と子2人を残して亡くなった場合
(子とは18歳になった年度の3月31日までにある人のこと)
遺族基礎年金として
年額 123万300円
受給できる
※遺族年金、高額療養費制度については、日本年金機構、厚生労働省のHPを参考に編集部調べ
配偶者と子(18歳になった年度の3月31日まで)が2人いる人(国民年金の被保険者)が亡くなった場合、その人に生計を維持されていた遺族には「遺族基礎年金」として、年額123万300円が支給されます。亡くなったのが会社員、公務員(厚生年金保険の被保険者)の場合、「遺族厚生年金」の上乗せもあり。
また医療費の負担を軽減する高額療養費制度も(69歳以下で年収約370万~約770万円の人の場合、月の医療費の負担額が最高でも9万円程度になる)。
「公的な制度は利益を目的としていないので手厚いのは当然。いざというときにもらえるお金を調べ、そのうえで足りない分だけを民間の保険で補うのが理想的です」(大江英樹さん)
2「節約」はしない
「ここで言う『節約』とは本当にやりたいこと、必要なものまでガマンするような支出の削り方のこと。億り人は上記の保険のような不要なものにはお金を使わない、見栄のための浪費はしない一方で、自分にとって大事なことであれば、グリーン車に乗ったり旅行にお金をかけたりと、メリハリのあるお金の使い方をしています。自分にとって価値のあることの優先順位を決められている、ということですね」(大江英樹さん)
3 天引きをしている
「億り人は、毎月お金が余ったら貯蓄に回すのではなく、あらかじめ天引きし、貯金や投資に。残りの金額で生活を回しています」。(大江英樹さん)
毎月、一定額を“自分の視界から見えないようにする”は、とりあえずすぐやるべし!
4 投資をしている
「ほぼ貯金だけで億り人になった人もいますし、とにかく投資をしなければならないというわけではありません。ただ、多くの億り人は働いて得たお金をコツコツと投資に回し、ゆっくりと育てた結果として、大きな資産を築いています。億を目指すかはともかく、まとまった資産をつくるには、投資をすることが有効だといえると思います」(大江英樹さん)
「億り人」の8割くらいは、ごく普通の人たちです
金融資産1億円以上を持つ人なんて、めったにいないはず。と思っていませんか? 実は今、日本国内に住む世帯主100人のうち、2〜3人の割合で「億り人」が存在しているといいます。この数は増え続けていて、10年前に比べると6割以上も増えている計算になります。そんな彼らの大半が、資産家の跡継ぎや超エリートの起業家などではなく、平均的な収入で働く、ごく普通の人だというから驚きです。
「実際に私が見てきた“億り人”は、たくさん儲けて派手な生活をしようという人より、地味と言ってもいいほど堅実な暮らしぶりをしている方が圧倒的に多いです。例えば毎月払っている保険料、ジムの会費、サブスクの料金は本当に必要か?など、今の自分にとって価値がある支出かどうかをしっかり考えています。
つまり、なんとなくや、見栄のためにお金を使うことをしない。億を貯めた人と聞くとすごく遠い存在に感じますが、誰にでもできる“支出の管理”が、実は大きな資産をつくるための重要なポイントなのです」(大江英樹さん)
ムダな支出を削り、できたお金を投資に回しているのも「億り人」に多く見られる共通点だそう。
「投資する余裕なんてない、投資はお金がある人がするもの、という方もいらっしゃると思います。でも先に挙げたようなところを見直してみると、意外と数万円は削れるものです。収入に対して過大な保険料を払っているというのはよくある話ですから。もちろん、投資には投じた金額が大幅に減ってしまう可能性もあるので、リスクがあることも学ぶ必要はあります」(大江英樹さん)
とはいえ、投資に関心が出てきたら早く始めてみるのがいいと大江さん。
「まずは少額からでもいいので、勉強しながら実践もしましょう。知識をつけてからといいますが、例えば水泳はいくら座学で勉強しても、水に入って苦しい思いもしながらでないと身につきませんよね。投資も同じです。自分が働いて稼いだお金が、自分の力が及ばないところで減るという不条理なことも起こるでしょう。そういった経験を重ねるからこそ、投資のやり方がわかってくるんです。
ただ過大なリスクをとる必要はないので、『長期』『分散』での投資をおすすめします。億り人は資産が増えたことで、人生の選択肢が広がったと口を揃えます。好きなことに打ち込めたり、老後に夢を見つけたり。幸せな未来のために、気づいた今こそが始めどきなんです」(大江英樹さん)
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イラストレーション/ナカオテッペイ 取材・原文/田中理恵
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