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【書評】「知ること・学ぶこと」への楽しさを教えてくれる『ボタニカ』朝井まかて、他おすすめ3編

2022.03.16

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『ボタニカ』
朝井まかて ¥1980/祥伝社

植物に命をかけた男の、明るくて破天荒な人生

『ボタニカ』朝井まかて ¥1980/祥伝社

少しずつ寒さがゆるみ、日の光や草花の佇まいにも春の気配が感じられるこの頃。今の季節にぜひ読みたいおすすめの一冊がコレ。「日本植物学の父」と称される学者・牧野富太郎の評伝小説だ。富太郎は明治から昭和初期にかけて東京大学理学部植物学研究室に所属した。生涯にいくつもの新種の植物を見つけ、研究雑誌の刊行にも力を入れた伝説的な人物で、新聞などメディアにもたびたび登場。国際的な研究を続けながらも親しみやすい学者として、一般の人にもその存在を知られていたとか。

富太郎は明治初めに高知県に生まれる。子どもの頃から植物に触れるのが大好きで、自分が知らない草花を見つけては、独学で標本を作っていた。彼は成長するにつれて、「日本人の手で、日本の植物学を明らかにし、世界に伝えたい」と大志を抱くように。上京し、東大の植物学研究室への出入りを許されることになる――。

実は生まれ育った家が裕福で、お金に困ったことがなかった富太郎。研究へ実家の財をつぎ込み、やがて無一文になる様子は、一般人の想像を超えたレベルだ。彼と結婚した最初の妻と、2番目の妻の心情や彼女たちが静かに交遊する様子も、この本の読みどころのひとつ。才能ある男と巡り合った者同士、友情のような同士のような関係性を育む姿は興味深い。そして人生の前半は苦労知らずの趣味人で、実家を潰してからは、2番目の妻とともに「貧乏子だくさん」を続ける富太郎の生きざまに、「自分はついていけるだろうか?」と、パートナーシップについて考えるきっかけも与えてくれる。

また本著の大きな軸になっているのが「自由」について。富太郎は「学問は志ある者が平等に学べる世界」と考え、学歴に頼る生き方を嫌った。しかし彼とは対照的に、大学内では出世を巡った派閥争いが繰り返され、富太郎も人間社会の泥臭さをうんと味わうことに。崇高な目標を抱きながら、世俗にも交わった研究者の破天荒な一生。読めば読むほど、私たちの心に、知ること・学ぶことへの楽しさの種をまいてくれる!

『たかがジャンプ されどジャンプ』
城田憲子 ¥1760/集英社

『たかがジャンプ されどジャンプ』城田憲子 ¥1760/集英社

日本スケート連盟フィギュア強化部長・国際審判員として、フィギュアスケート界に貢献してきた著者が、近年の競技の歴史と技術の進化を解説。伊藤みどりから始まり、安藤美姫、浅田真央、羽生結弦、鍵山優真と、一流アスリートたちの「勝つための演技」の裏側をわかりやすく教えてくれる。観戦時の手引き書でもあり、選手の個性をより深く理解する手がかりにも!

『自分の意見で生きていこう』
ちきりん ¥1650/ダイヤモンド社

『自分の意見で生きていこう』ちきりん ¥1650/ダイヤモンド社

人気社会派ブロガーの最新刊。今作は、世の中にあふれている正解のない問いに対してどう考えるか、そして自分の考えについての掘り下げ方や伝え方について解説。さらに「意見」と「反応」の違い、多様な価値観を受け入れるコツについても、具体的な意見が述べられていてわかりやすさは抜群。家庭や職場でコミュニケーションをとる際の大きなヒントとなってくれそう。



『はじめてなのに現地味 おうち韓食(ハンシク)』
重信初江 ¥1595/主婦の友社

『はじめてなのに現地味 おうち韓食(ハンシク)』重信初江 ¥1595/主婦の友社

LEEのレシピ企画でもおなじみの著者による、現地の味を家庭で再現できる韓国料理本。韓国を何度も訪れては舌つづみを打ってきた著者だからこそ、キムチチゲやプルコギ、ナムルやキムパプにいたるまで、作ってみたかった韓国料理(=韓食)をわかりやすく教えてくれます。さらに韓国宴会入門やおすすめインスタント麺、現地気分の日用品などのコラムも必見です!


取材・原文/石井絵里


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