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福島綾香

子どもに「学校行きたくない」と言われたら。対応、相談先…不登校支援の最新事情【支援NPOセミナーレポ】

  • 福島綾香

2021.12.12

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過去最多を更新した、不登校の児童生徒数

学校の教室
今年10月、文部科学省から発表された「不登校児童生徒数が過去最多」とのニュース。
2020年度の時点で、不登校の児童生徒は全国で約19万6000人にものぼるとされ、ここ数年増加の一途をたどっています。

この現状を受け、20年にわたり教育支援を行う「認定NPO法人カタリバ」が、メディア関係者向けに「不登校の現場では何が起こっているのか緊急会議」と題したセミナーを開催。
私も1児の母として、大変興味深く参加しました。

「じゃあ、もしわが子が不登校になったら、一体どうすればいいんだろう?」

この疑問に答えるレポートにすべく、いざという時の子どもへの接し方や相談先について、長年不登校支援に関わっている方にも取材させていただきました。

今悩んでいる方にも、そうでない方にも…この記事が少しでも参考となれば幸いです。

コロナ禍でさらに増える不登校、足りない公的支援

不登校児増加スライド
全国で19万人を超える、30日以上登校していない「不登校」の児童生徒。
その前段階、1週間以上の欠席や保健室への登校など「不登校傾向」の子どもの数でみると、中学生だけでも約33万人。コロナ禍の昨今は、さらに増える可能性が高いとされています。

しかし、公的支援は不足しているのが現状。例えば、不登校の子どもや保護者のサポートを行う機関「教育支援センター」が設置されている自治体は、全国の約63%にとどまっており、未だ支援が行き届いていない地域も多くあります。

民間のフリースクールなど学校以外の選択肢は増えてきたといっても、高額だったり、遠方まで送迎が必要で物理的に通えなかったり…。

コロナ禍で広がったオンライン授業も、家からでも学校の学びにアクセスできる手段として機能すればよいのですが、その活用具合は学校によってまちまち。
「クラス全員参加のホームルームに出席を求められ、一切出られなかった」「パソコンは配られたものの、オンライン授業は1回しか実施されていない」といった例もあり、なかなか普及まで一筋縄ではいかないようです。

カタリバのセミナー内でも、実際に不登校の子どもをもつ保護者2名が登壇し、それぞれのお子さんと真摯に向き合いながら試行錯誤されている現状を語ってくれました。

「じゃあ実際、もしわが子が不登校になったらどうすれば?」

…そう思う方は多いのではないでしょうか。

私もその通りで、わが子はまだ3歳ですが、もしかしたら数年後この問題に直面するかもしれない。また、まさに今悩んでいる読者の方や、その周りの方もいるかもしれない…。
少しでも指針がほしくて、島根県雲南市で長年不登校支援に関わっている、認定NPO法人カタリバスタッフ・池田さんに取材をさせていただきました。

池田隆文さん

オンラインにてお話を伺った、認定NPO法人カタリバスタッフ・池田隆文さん。もともとは中学校の教員をされていたそう

私も夫も「不登校」を経験せずに育ったこともあり、いざという時子どもにどう寄り添えばいいのか、登校を勧めるべきなのか、何も分からず漠然と不安でしたが…今回お話を伺い、予備知識として参考になるポイントばかりでした。

まずは子どもへの接し方や、家の中での対策についてご紹介します。

まずは家族が、子どもの言葉を信じる

悩んでうずくまる男の子
◆子どもの体調サインに気づいたら、できる限り家族の時間を
お腹が痛くなる、朝起きられない、食事の量が減るなど「ちょっと調子悪いかな?」という様子が続いた後、学校に行けなくなる子が多いとのこと。

そのサインに気づいたら、食事の時など短時間でもいいので、その子にだけ時間を使い、まずは向き合ってみることが大切。もちろん親に本音を言えないこともあるし、思春期で素直に話してくれない場合もあるけれど、できる限り話をしてみましょう。

◆まずは家族が「受け入れる」「子どもの言葉を信じる」
もし子どもから「学校に行きたくない/行けない」というサインが出たら、原因探しをするより「何らかの理由で行きたくないんだな」と受け入れて。まずは家の中で、安心できる関係性を作ってあげることが大切です。

「本当にお腹痛いの?」と疑いたくなることがあっても、まずは子どもの言葉を信じましょう。また、今の症状がどれくらいの重さなのか、子どもと一緒に気持ちの重さを数値化してみるのもおすすめです。
例:「学校に行きたくない」と言われたら→「絶対無理」は5、「まあまあ」は3…
「お腹が痛い」と言われたら→「学校に行くのは無理」が5、「学校には行ける、行って様子をみてみる」は3…など

そのうえで、5〜4なら「休もう」、3〜2なら「先生に伝えておくから、ひどくなったら早退しよう」など、一緒に対策を考えてみましょう。
ただ、身体的な症状が重い(腹痛でトイレから出られない、食事が摂れない、吐き気をもよおすなど)場合は決して無理をしないこと。

◆「今週は行かない」など、期間を決めて休むのも◎
学校に行かないことが癖になってしまわないよう、「3日間」「今週」など、休む期間を決めるのもおすすめです。期間を決めたら、家での過ごし方を子どもと話しておくことが大切。具合が悪いなら寝て、元気になったら何をするか(教科書を見る、家事を手伝うなど)一緒に考えてみましょう。

学校を休んでいる間も、朝起きて、食事をし、夜には寝るといった基本的な生活リズムが安定していることが大事です。

◆保護者はアンガーマネジメントを身につけて
子どもの対応や自分の仕事の心配などでイライラするのは、悪いことではなく仕方のないこと。うまく気持ちを落ち着かせたり、発散する方法を見つけたり、なるべく子どもにぶつけないよう心がけましょう。

そのためにも、相談機関で相談員やカウンセラーに定期的に話をしたり、親の会に参加してみたりするのも一つの手段です。



学校、行政…相談先もさまざまな選択肢が

新芽と学校
相談先は、学校のほかにもさまざまな選択肢があるそう。
まずは担任の先生に相談する場合がほとんどですが、学校での出来事が不登校のきっかけになっているなど、学校以外の相談先を考えたい場合の対策も教えていただきました。

◆相談先は、学校から行政まで多数
学校には不登校担当や教育相談担当の先生が配置されていることが多いので、まずは担任の先生を通してそれらの担当の先生へ相談を申し出てみましょう。
担任の先生に相談しづらい場合は、他の不登校児童生徒のケースも把握・対応していることが多い学年主任、または保健室の先生がおすすめです。

学校以外の窓口を考えたい場合は、自治体の「教育委員会」「学校支援」の窓口へ。
自治体によりますが、設置があれば「教育支援センター」や、地域の「保健所」、「引きこもり支援センター」に相談してみることもできます。

◆「スクールカウンセラー」と「スクールソーシャルワーカー」
「スクールカウンセラー」は学校ごとに配置されていることが多く、カウンセリングや臨床心理学の専門的な知識・経験を身に付けていて、本人の心理面のケアや、校内での調整・対策を行う存在。

一方で「スクールソーシャルワーカー」は、社会福祉士や精神保健福祉士といった福祉分野の専門性を持っており、学校と連携して子どもが置かれている環境(家庭や友人関係など)への働きかけを行います。必要に応じて家庭へ訪問することも。
ただ学校ごとに配置されている場合と、市町村に数人いて各学校を回っている場合とがあり、自分の自治体がどのような配置状況かは確認が必要です。

いずれも、相談したい場合はまず学校に連絡してみましょう。

◆身体症状や不安症状が強い場合は、医療機関へ
児童精神科や、思春期外来がある病院へ相談に行くのも一つの手段。
中には、行政の「子ども・家庭支援」の担当課と連携し、定期的な相談会を実施している場合もあるので、調べてみるのも良いかもしれません。

◆オンラインの活用も選択肢の一つ
パソコンやタブレットを使って、オンライン教材を利用してみる使ってみることもおすすめ。
趣味趣向や興味関心に合うプログラムが見つかれば、学校に行かない期間も学び続けることができたり、親がいない時間も家で集中して過ごすことができたり、子ども自身の世界を広げていくことができます。

一番は「家が安心できる場であること」

家族イメージ
池田さんのお話の中で、繰り返し出てきたのは「家族の関係性の安定が一番」ということ。
そして印象的だったのが、「学校行ってないんだから(◯◯しなさい)」という言い方は決してしない方がいい、ということです。

家族内で問題が生じると、ギスギス、イライラしてしまいがちですが、これは肝に銘じておきたいところですね…。

「家族の誰かひとりでも、その子の辛さを理解、共感してあげられる状況を作りたいもの。“学校を休めば即ち元気になる”わけではないので、家で子どもがちゃんと休めているかな?という観点を持てるといいですね」との言葉もありました。

まずは子どもにとって、家が「安心できる場」であること。きっとこれが第一なんですね。

そして「学校を休んでいる」状況に今以上に周りが寛容になり、保護者だけで問題を抱えずに、学校や関係機関など、近くにいる大人がみんなでチームになって子どもを支えていく。

これが自然にできる世の中になっていけばいいなと、子をもつ親のひとりとして切に願います。

福島綾香 Ayaka Fukushima

ライター

宮城県仙台市出身。夫、息子(2018年9月生まれ)と3人暮らし。これまでフリーペーパー、旅行情報誌などの編集を経験。趣味は食べること、旅行、読書、Jリーグ観戦。

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