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まさか私が「ママ議員」になるなんて!

【まさか私が「ママ議員」になるなんて!】川久保皆実さんがつくば市議会議員になった理由は?

2021.11.11

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きっかけは、子育ての小さな悩みでした まさか私が「ママ議員」になるなんて!

子育てをするなかで、学校や保育園のルール、行政の決まり事などに「これっておかしくないかな?」と不満や疑問を感じた経験はありませんか? それを「仕方のないこと」と片づけず、社会をよい方向に変えるために奮闘しているママたちが、私たちのすぐそばにいるんです。自分らしいやり方で、少しずつ暮らしや未来をよりよく変えていきたい。そんな彼女たちの活動を取材しました!

Case1
つくば市議会議員 川久保皆実さん

川久保皆実さん

1986年茨城県つくば市生まれ。弁護士や企業の代表を務める傍ら、昨年つくば市議会議員に。4歳、2歳の男児のママでもあり、育児を最優先にしながら、子育て世代が暮らしやすい街づくりに奮闘中。

なんで私が議員に!? 川久保さんHISTORY 14歳 学校の先生の理不尽な指導に疑問を感じたのをきっかけに、法律に興味を抱く 18歳 東京大学に進学し、法学を専攻 22歳 法科大学院に進学 24歳 司法試験に落ち、別の道に進むことを決意。地元つくば市内のITベンチャー企業に就職。痴漢被害にあい、再発防止のための働きかけをする 27歳 司法試験に合格。司法修習後、都内で弁護士として勤務 31歳 長男出産 33歳 次男出産 ここがターニングPOINT 34歳 つくば市にUターン。引っ越し後、保育園の制度があまりに都内と異なることに衝撃を受け、3カ月後に迫っていた市議会議員選挙に急きょ出馬を決める。自ら決めた「3ない原則」に基づく独自の選挙運動を展開し、見事当選を果たす  35歳 公立保育所の制度や学童保育のお弁当問題など、子育て世代の暮らしを改善する具体的な政策を掲げて奮闘中

保育園の荷物の多さは“仕方ない”? 違うと思ったので、声を上げたくて

住む街が違うだけで、親の負担が重くなるなんて!

4歳と2歳の男の子を育てながら仕事をし、夕方は保育園のお迎えにダッシュ。そんな子育て世代ど真ん中の川久保さんですが、もともと政治にはあまり関心がなかったといいます。それがなぜ、茨城県つくば市の市議会議員に?

「長男の妊娠を機に、職場のある東京都の千代田区に引っ越し、次男が生まれてからも千代田区で子ども2人を保育園に預け、共働きをしていました。でも、昨今の状況により、夫婦ともに完全テレワークに移行したんです。いつかはつくば市に戻って子育てがしたいと思っていたので、これを機にUターン移住を決めました。保育園も探そうといくつか見学して回るうち、あれ? え? といくつも違和感が生まれて……」(川久保皆実さん)

川久保さんが衝撃を受けたのは、つくば市の公立保育所にあったいくつかのルールでした。

「例えば、使用済みのおむつは毎日持ち帰りが必須でした。お昼寝用のふとんも一式保護者が用意し、毎週末洗濯を。2人兄弟のわが家は、金曜のお迎え時にはふとん2セットを担いで帰らなければなりません。また、3歳児クラス以降は、主食として保護者が毎日白米を持たせるというのにも驚愕。都内との違いがこんなにあるの? 引っ越すまで知らなかったんです」(川久保皆実さん)

千代田区でお子さんを通わせていた公立園では、使用済みのおむつは園が処分、主食の持参も不要でした。お昼寝用の敷きぶとんとシーツは園側が用意し、保護者が毎週持ち帰るのは、肌掛け用のバスタオル1枚のみ。

「つくば市の制度は私自身が保育所に通っていた約30年前とほぼ同じ。なぜかと考えたとき、政治の場に子育て世代の当事者の声が届きづらいのだと気づいて」(川久保皆実さん)

住む場所が違うだけで、こんなにも親の負担が重くなるなんて、とモヤモヤしていた川久保さんは、3カ月後に市議会議員選挙が控えていることを知ります。

「変えたいことがあるなら、私が出馬すればいいんだと思いました」(川久保皆実さん)



市民24万人の1よりも、市議会議員28人の1なら声が届きやすいはず!

過去の苦い思い出から、合理的に声を届ける方法を思案

「実は私、過去につくば市で痴漢被害にあったことがあるんです。そのとき、被害者を今後出さないために、事件場所を明示する危険回避マップを作ろうと思いついて。市役所や茨城県警を巡ったのですが、必要な情報を開示してもらえず、悔しい思いをしました。あのときの経験から、24万人いる市民の1人が声を上げても制度はなかなか変わらない。でも私が市議会の定数28人の中の1人になれたら、その声はもっと届きやすくなるんじゃないかと思ったんです」(川久保皆実さん)

自分と同じ若い世代が、この街で笑って子育てできるようになってほしい。そんな思いで選挙運動を開始させました。

川久保皆実さん

これから先の選択肢を増やす、子育てを犠牲にしない選挙運動

「最初に決めたのは“3ない原則”です。仕事と育児を犠牲にしない、他人のお金に頼らない、既存のやり方にとらわれない。今回の挑戦が、これからあとに続く子育て世代の、新しい選択肢の一つになればいいな、とも思ったんです」(川久保皆実さん)

選挙は街をよりよく変える仕事に就くための面接試験のようなもの。自分の生活を変えずに、自分の挑戦を知ってもらう方法を模索しました。

「選挙カーや街頭演説は子どもとの時間をさくし、そもそもやりたいと思わなくて。そこで、『つくばチェンジチャレンジ』と題した1分動画をつくりました。忙しい人でも見やすいように、1分の中に思いを凝縮してSNSで発信。おかげで選挙運動期間中も保育園のお迎えから20時の就寝はいつもと変わらず。週末も子どもといつもどおり公園へ。親子でゴミ拾いをしていました」(川久保皆実さん)

妻が突然の出馬を表明。そんな展開に、夫はどんなリアクションだったのでしょうか。

「夫はまったく反対することなく、最初から最後まで応援してくれました。もともと家事や育児は半々でしており、夫婦二人三脚で選挙を乗り越えました」(川久保皆実さん)

そして無名無所属の新人ながら、川久保さんは見事当選。今も変わらず、日常生活の中でゴミ拾いを続けています。

「ひとりでは変えられない制度もあるけれど、街をよくするために誰でもすぐにできることもあります。自分にも何かできることがあるというメッセージになれば」(川久保皆実さん)

議員になって1年。保育所に限らず、学童保育のお弁当問題や公園の砂場環境の改善策など、母ならではの視点で問題を提起したり、地域の人たちとオンラインのおしゃべり会で子育ての悩みを話し合うなど、川久保さんらしいペースで今日も活動を続けています。

選挙運動中、街頭演説や選挙カーの利用はせず、たすきをつけながら、週末は子どもと公園へ。「生活の延長線として議員の仕事をしたかったので、選挙運動も自分らしく!」(川久保皆実さん)

選挙運動中、街頭演説や選挙カーの利用はせず、たすきをつけながら、週末は子どもと公園へ。「生活の延長線として議員の仕事をしたかったので、選挙運動も自分らしく!」(川久保皆実さん)

開票日の夜は、バナナを夜食に別の仕事の原稿確認をする川久保さん。「やれることはすべてやったので(笑)。当選を知り、スタートラインに立てるとうれしかったです」(川久保皆実さん)

開票日の夜は、バナナを夜食に別の仕事の原稿確認をする川久保さん。「やれることはすべてやったので(笑)。当選を知り、スタートラインに立てるとうれしかったです」(川久保皆実さん)

議員への道、きっかけは… 子育て世代の声を最短距離で届けることが必要だと思ったから 家族との時間を犠牲にせず政治にかかわれることを次世代に示したくて 育児のモヤモヤを仕方ないと諦めず、勇気をもって声を上げよう


詳しい内容は2021年LEE12月号(11/6発売)に掲載中です。

撮影/名和真紀子 取材・原文/田中理恵

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