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松崎のり子

火災保険料が再び値上げへ。マイホーム選びでは災害リスクの確認を

  • 松崎のり子

2021.08.24

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火災保険料は今後じわじわ上昇していくかも

7月に発生した静岡県熱海市の土石流災害。衝撃的な映像に誰もが言葉を失いました。

2021年は東日本大震災から10年となる節目の年ですが、残念ながら自然災害は収まるどころか、毎年のように私たちの暮らしを脅かしています。

それに連動し、住まいを守る火災保険の保険料も値上げが相次いでいるのです。

2021年1月に値上げがあったばかりですが、6月にも保険料の基準となる「参考純率」を全国平均で10.9%引き上げることを損害保険料率算出機構が発表。

特に近年は大規模風水害の被害が甚大なこと、また築年数の古い家屋が増加しており、そうした住宅では電気や給排水設備の老朽化により火災や水濡れ、台風などによる損壊リスクが高まることを考慮し、改定に至ったと説明されています。

しかも、自然災害のリスクが想定以上のスピードで変化しているため、これまで最長10年間適用されていた参考純率を、短期化して最長5年までにするとも。

これらを元にして、今後は各保険会社が保険料の改定を行う予定ですが、そうなると火災保険を10年契約することができなくなり、今後は5年までになる可能性が高いでしょう。

短い期間でその都度リスク判定をするとなれば保険料も短期で変動することになるので、長期契約で安く抑えることはできなくなります。

毎年のように繰り返される甚大な自然災害を考えると、この先も保険料はじわじわ上昇を続けると推測されます。

災害リスクに応じて保険料の金額も変動

「参考純率」の引き上げは全国平均では10.9%ですが、建物の構造や都道府県によって改定率が異なります。

例えば大都市圏の場合、築5年未満の木造住宅では、最大が大阪府の24.6%、最小は山口県でマイナス13.8%、東京は3.3%となります。築10年以上の木造住宅では沖縄県が最大で36.6%、やはり最小は山口県でマイナス10.3%。

これがダイレクトに保険料に反映されるわけではありませんが、やはりリスク高めと判断された地域は保険料の上昇幅が大きくなるでしょう(※建物2000万円、家財1000万円としたときの改定率)。さらに詳細に、ハザードマップに連動して水害リスクに応じた保険料を算出する保険会社も出てきています。

むろんマイホーム購入時には必ずハザードマップを確認し、なるべくリスクの低い立地から検討すべきでしょう。

国も防災を重要視し、2020年からは不動産取引の際に説明しなければならない重要事項として、「水害ハザードマップ」と照らして物件の所在地の水害リスクを説明することが義務化されました。リスクが高い物件となると、もし売りたいとなった時にもマイナスの影響が出てくるでしょう。

火災保険でカバーできることには限界があります。これから家を購入しようとする人は、プラス面だけでなく、マイナスの視点も忘れずに検討しましょう。

 

松崎のり子 Noriko Matsuzaki

消費経済ジャーナリスト

消費経済ジャーナリスト。雑誌編集者として20年以上、貯まる家計・貯まらない家計を取材。「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。

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