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松崎のり子

不妊治療への助成金が拡充に。さらに所得制限も撤廃

  • 松崎のり子

2021.05.21

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体外受精、顕微授精への給付が、1子ごとに1回30万円、6回まで受けられる

日本の少子化に歯止めがかかりません。

2019年には出生数が90万人を割って過去最少の86万5234人となり、「86万ショック」と言われたほど。新型コロナ禍によって婚姻・出産を控える動きも広がっており、さらに追い打ちをかけそうです。

このままでは労働力の中心になる15歳以上65歳未満の生産年齢人口は減る一方。

現役の働き手が少なくなれば、国の稼ぐ力とともに年金・医療・介護等の社会保障制度を支えるお金も減少してしまいます。だからこそ、少子化対策が大切なのですね。

その一環として、国は不妊治療への支援に力を入れています。まず、2021年1月から、不妊治療への助成制度を拡充しました。

体外受精及び顕微授精といった「特定不妊治療」への給付が、1子ごとに1回30万円、6回まで受けられることに(40歳以上43歳未満の場合は通算3回まで。なお、妻の年齢は43歳までが助成対象)。

これまでは初回のみ30万円で、それ以降は15万円だったため、経済的負担は軽減されそうです。また、不妊の原因が男性にあるケースも助成の対象になり、金額は同等の30万円です。

金額の拡充だけではありません。これまでは助成を受けるには所得制限があり、夫婦合算で730万円未満だったのが、それも撤廃へ。誰でも申請できるようになったのです。

保険適用外である「特定不妊治療」は高額なうえに一度で結果が出ると限りません。そのため100万円以上をかけている夫婦も少なくないのです。

高額だからと治療継続をあきらめた夫婦も多いことでしょう。所得制限が撤廃されたことは朗報ですね。なお、この助成は法律婚だけでなく事実婚の夫婦でも受けられます。

2022年には保険適用も? 企業への助成金も始まる

加えて検討がスタートしたのが、保険の適用です。

政府は2022年度から「特定不妊治療」までを公的保険でカバーすることを目指しているのです。

現在の健康保険制度では自己負担額は医療費の3割でいいことに。さらに高額療養費制度の対象になるのであれば、ひと月50万円かかったとしても年収約370万~770万円の人だと8万円程度、370万円より低ければ5万7000円程度の負担額ですむのですが…。

どこまでを、どのように保険適応するのか、今後の経過を見守っていきたいと思います。

また、不妊治療を受けやすくするための環境づくりに取り組んだ企業へ助成金を出す「両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)」も創設されます。不妊治療を受けやすくするための休暇制度や残業・時短勤務、テレワークなどを整備し、利用させた中小企業事業主に28.5万円の助成金が支給されるもの。

このように経済面と仕事との両立の双方向から支援体制が整いつつあります。

最初に書いたように、子どもを増やすことは社会の支え手を増やすことでもあり、私たち自身にも関わる課題です。

公的支援だけでなく、働く女性が治療のために休みやすくなる意識づくりなど、一人一人ができるサポートを考えていきたいですね。

松崎のり子 Noriko Matsuzaki

消費経済ジャーナリスト

消費経済ジャーナリスト。雑誌編集者として20年以上、貯まる家計・貯まらない家計を取材。「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。

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