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宮本浩次さんインタビュー「少年時代に親しんだ歌謡曲。歌ってそのすごみを再確認」

2020.12.25

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’18年から、エレファントカシマシの活動とは別に、ソロ活動をスタートした宮本浩次さん。椎名林檎さんや東京スカパラダイスオーケストラなどとコラボした曲やドラマなどの主題歌、CM曲がぎっしり詰まった初のソロ・アルバム『宮本、独歩。』を3月にリリースしたが、早くも次作『ROMANCE』が届いた。今度は女性歌手による名曲のカバー・アルバムだ。主に“昭和時代”のキラ星のごとき歌謡曲がずらりと揃う。

宮本浩次さん
「少年時代に親しんだ歌謡曲。歌ってそのすごみを再確認」

「私は中学でバンドのメンバーと出会い、ザ・ローリング・ストーンズやRCサクセションといったロックを知り、エレファントカシマシを始めてから、ずっとバンドマンとして生きてきました。でも、思い返してみれば、そもそも歌が大好きな少年だったんです。50歳を超え、人生の折り返し地点を迎えて、“エレファントカシマシ以前の自分”を思い出すようになった。もちろん、バンドの自分も私に違いないけれど、バンド以降は言ってみれば大人の自分で、その前の純粋にただ歌が大好きだった少年時代の自分と再会したくなったんですね。だから、子どもの頃に慣れ親しんだ“昭和の歌謡曲”を自分のルーツとして歌いました」

コロナ禍でソロ・ツアーも中止になり、時間ができた。そのため、収録曲を吟味する余裕が生まれ、ステイホーム期間中はできる限り、1日1曲弾き語りでカバー曲を歌う、と自分に課したという。

「150曲くらいリストアップし、結果的に30曲以上歌ってみました。すると、聴くだけでなく歌うともっと魅力的に感じた女性の主人公たちに惹かれたんです。孤独だったり、少しいきがっていたり、キュートな女の子がたくさんいて、女性のエネルギーを感じました。だから、テーマにした。たった数分間で人間の感情を豊かに表現する、日本の歌謡曲が持つ美しさとすごみも再確認できました」

いつにも増して、丁寧に歌っているように聴こえるのも印象的だ。

「確かに、名曲に対する敬意と歌手としてきちんと他人の曲と向かい合いたい、という気持ちが強かったから、歌詞ひとつひとつを丁寧に歌ったと思います。これまでも乱暴に歌っていたつもりはないけれど、先日、久しぶりにエレファントカシマシでライブをやった際、いつもより自分の曲も丁寧に歌っていることに気づきました」

ところで、現在54歳とは信じられないほど、若い頃と変わらないルックスを保つ宮本さんだが、50歳になった際、「半世紀目の記念」に思いきって自分にプレゼントしたものがあるそうだ。

「オーダーで背広をあつらえて、すごくいい靴を買ったんです。それから、帝国ホテルにごはんを食べに行った。“50歳は老年期の青春”と誰かが言ったらしく、私はそれがすごく気に入っているんだけど、これからの残りの人生、やりたいことをもっと自由にやっていこう、と気持ちを新たにするための区切りのような“大人買い”でした」

また、少年時代の宮本さんが合唱団に入っていたのはファンの間でよく知られた話。子どもの習い事としてはいかがでしょうか。

「とても楽しい思い出です。大好きな歌に特化した、学校とは違う場所を持ててよかったと思う。当時は圧倒的に男の子が少なかったからモテたしね(笑)」

みやもと・ひろじ●1966年、東京都生まれ。’81年にエレファントカシマシを結成し、’86年、現在のメンバーとなる。’88年、アルバム『THE ELEPHANT KASHIMASHI』、シングル『デーデ』でデビュー。’18年から、椎名林檎、東京スカパラダイスオーケストラなどとコラボするなど、ソロ活動を開始。’20年、初のソロ・アルバム『宮本、独歩。』をリリース。

『ROMANCE』

歌が大好きな少年・宮本浩次が親しんでいた楽曲を集めた初のカバー・アルバム。厳選された楽曲は『ロマンス』(岩崎宏美)、『あなた』(小坂明子)、『木綿のハンカチーフ』(太田裕美)、『化粧』(中島みゆき)、『喝采』(ちあきなおみ)、『赤いスイートピー』(松田聖子)など、女性が歌ったヒット曲ばかり。信頼するプロデューサー、小林武史や蔦谷好位置にアレンジを依頼し、丁寧に歌い込んだ珠玉の一枚。初回限定盤は弾き語りデモを収録したボーナスCD付き。(ユニバーサル・ミュージック)


撮影/きくちよしみ ヘア&メイク/茅根裕巳 取材・文/中沢明子

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