人気・知名度ともに急上昇中の篠原ゆき子さん ご近所トラブル映画『ミセス・ノイズィ』インタビュー

ご近所トラブル発、驚きの感動作

ドラマや映画でよく見かけるなぁ、すごい上手いんだよなぁと、この顔にピンと来る人は多いハズ! 10月からは人気ドラマ「相棒」の新キャストとして登場し、目下、知名度も人気もうなぎのぼり中の、ずっと気になっていた女優の篠原ゆき子さんにご登場いただきました。

『共喰い』(13)で菅田将暉さん演じる少年の父親(光石研さん)の愛人役を体当たりで熱演されていたのを拝見して以来、「あ、また、あの女優さんだ!」と何度思わされてきたことか……。つい最近も話題となった『浅田家!』でも『罪の声』でも、しっかりザックリ爪痕を残されていて、いよいよ遂にキタ~ッという感じです(笑)。

篠原ゆき子  神奈川県出身。05年に映画『中学生日記』で女優デビュー。11年に劇団ポツドールの舞台『おしまいのとき』で主役に抜擢される。『共喰い』(13)で第28回高崎映画祭 最優秀新進女優賞受賞。主な出演作に「深夜食堂 /続・深夜食堂」(15、16)、『ピンクとグレー』(16)、『湯を沸かすほどの熱い愛』(16)、「深夜食堂 Tokyo Stories Season2」(19)、『さよならくちびる』(19)、『楽園』(19)など。『女たち』が21年公開予定。

そんな篠原さんが主演を務めた映画『ミセス・ノイズィ』が公開になります。もう、この映画メチャクチャ面白いんです。期待以上、予想以上の面白さ! 昨年の東京国際映画祭でも大きな話題を呼んだので、ご存知の方もいらっしゃると思います。そして篠原さんご自身も、今年の1月に開催されたアジア太平洋映画祭で、見事、主演女優賞を受賞されました!!

『ミセス・ノイズィ』って、こんな映画

幼い娘のママでもある小説家の真紀(篠原ゆき子)は、スランプに悩まされていました。そんな折、マンションの隣のベランダで、早朝から布団たたきをする音が……。早朝に布団叩き!? 隣に住む騒音の主・美和子(大高洋子)に文句をつけますが、逆効果だったのか、嫌がらせは段々エスカレート。真紀のイライラは募り、家族ともギクシャクし始めます。遂にキレた真紀は、美和子を小説のネタにすることで、反撃に出ることを思いつきますが、その小説が話題沸騰したことで家族や世間を巻き込んだ大騒動に発展し……。

『ミセス・ノイズィ』
©︎「ミセス・ノイズィ」製作委員会
2019年/106分/日本/配給:アークエンタテインメント
監督・脚本:天野千尋
出演:篠原ゆき子 大高洋子 長尾卓磨 新津ちせ 宮崎太一 米本来輝ほか
12月4日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開

──“ご近所トラブル発”なのに、まさかジンジン感動させられるとは、予想を大きく裏切る展開に驚きました。天野千尋監督が書かれたオリジナル脚本が、まずもって素晴らしいですね!

「脚本を読んだとき、途中で視点や立ち位置が変わる、その面白さにワクワクしました! ドンデン返しと言うか、中盤での転換、そこからの展開がスゴイですよね。監督自身もおっしゃっていますが、私が演じる真紀は監督とそっくりで。私と監督とは同世代で、幼稚園に通う子供がいるという環境も似ているんです。だからというわけではないですが、真紀を演じているうちに、自分が段々と監督に似て来たな、と思いました。周りの方からも、真紀が監督に見えて来た、と言われました(笑)」

──天野監督から直接、オファーを受けられたのですよね?

「監督とは不思議な出会いで……。三浦大輔さん主宰の、役者のためのワークショップで出会ったので、私はずっと監督のことを役者だと思って接していたんです。そうしたら、演出の勉強のために参加されていて、実は監督だ、と(笑)。そのご縁で、今回オファーをいただきました。真紀が感じている焦りや、夫とのぶつかり合いなども含め、私自身にも覚えのあることが多かったので、あまり役作りを必要とせず、自分をそのまま役に投映してスッと入っていくことができました」

女性同士の仁義なき戦い

──それにしても、マンションのお隣さん同士、真紀と美和子の闘いは凄まじいです。時折、爆笑してしまうほどでした。特に、布団たたきをする美和子に対し、真紀がサバの味噌煮の鍋をもって文句をつけるシーンは最高でした!

「あのシーンはもう……ね(笑)。布団にサバの味噌煮なんて、最悪ですよね(笑)!! 段々と2人のバトルは子供みたいになっちゃっているというか。そっちがやるから、やり返す、みたいな。でも、コロナでの自粛期間中に各地であった“無言で張り紙”よりは、あっけらかんと喧嘩が出来るこの2人の方が、まだ良いのかもしれないな、とも思いました」

ベランダ越しで繰り広げられるイチャモンの付け合いが最高に面白いのです!

──確かに、見ようによっては“子供の喧嘩”ですね。

「監督は、“これは私なりの反戦映画だ”とおっしゃっていました。確かに戦争も、やられたらやり返すうちに、子供じみてしまうんだろうな、と。実は、たまたま私の実家の近くで撮影をしていたのですが、偶然、真紀と美和子のバトルのシーンを撮影中に、小学生の甥っ子が見学に来てくれたんですよ。2人が喧嘩をして布団が落ちていくシーンで、何てことをしているんだ、とすごく冷めた目をして私を見ている甥っ子の姿を見て、叔母としていたたまれませんでした(笑)元々ない威厳が、マイナスになったのを感じましたね(笑)」

──主にベランダで繰り広げられる“仁義なき戦いシーンは”、結構なテイク数を撮られたのでは?

「結構なテイクを撮りました。例えば後半、回想シーンで登場する美和子から見た真紀の姿を撮るときは、真紀のメイクを微妙に変えているんです。同じシチュエーションでも、美和子から見た真紀は少し暗いというか、怖く見えるようになっていて。セリフも語尾を少し変え、微妙な変化を付けているんです。個々の記憶の中では見え方や感じ方が変わっている、という緻密な計算を監督がされていました。美和子を演じた大高洋子さんは、普段はすごく柔らかくて面白い方なんです。だから現場では、本当は仲良くしたかったけれど、あまり好きにならないように逆に気を付けました」

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──そして、まさかの展開となり……終盤は、思わず胸が震えて泣きました(笑)。

「本当に、布団たたきの理由が……驚きますよね。人って、ただの嫌がらせだと思えば、どんどんそう思い込んでしまうものなんですよね。でも、何か嫌なことがあった時こそ、その裏には何かあるのかもしれないな、と想像をしてみることが大事なんだと思いました。一歩、引いて見られるか、相手の事情を想像できるか……。要は、人に対する思いやりを持てるかどうか、ですよね」

「また、その人のことや事情を、ちゃんと知らないというのは、本当に怖いことだと思いました。よく知らずにネットに書かれたり、晒されたり、ビラを巻かれたり……。見た目やイメージで人を勝手に判断したり、差別したりカテゴライズせず、怖いけれど一歩を踏み出して、その人のことを知ってみる。それが本当に大事だと思いました」

“手作り感”たっぷりの現場

──すっと入っていけた役とはいえ、例えばさすがに真紀の態度も酷すぎるなど、共感できかねるシーンもあったのでは?

「確かに“それ、やり過ぎじゃない?”と思うところもありましたが、即興芝居でお稽古をするうちに、段々と(そういうことをしてしまう)真紀に気持ちが近づいていって。ただ“あまり重くシリアスな話にしたくない。真紀を観客に嫌いになって欲しくもない”という監督の方針があったので、そこは気を付けました。監督が、私の声が元々コメディっぽいから大丈夫だとおっしゃったので、安心して思い切り出来たところもあります。ただコメディっぽ過ぎるのも本末転倒になりかねないので、シリアスとコメディ、重さと軽さのラインを探っていく感じでした」

名子役・新津ちせちゃんが、また可愛いのなんのって。たまらないですよ!

──即興芝居のお稽古というのは、例えばどんな風に?

夫役の長尾(卓磨)さんに私の自宅に来てもらって(笑)、監督の前で、台本にない二人の出会いを即興で演じたりしました。すごく手作り感のある現場で、自主映画ではないけれど、そんな匂いのする現場でもあって、とても楽しかったです!」

──その夫についてですが(笑)、真紀がスランプだわ、子育ては大変だわ、嫌がらせを受けてイライラするわ、という状況なのに、まるで傍観者のような態度や言動でかなりイラッとしました。

長尾さんが絶妙に演じてくださったおかげで、私も本気でイラっとしました。東京国際映画祭で、あの夫については海外の方たち、特に男性から“ヒドい”という声がよくきかれました。日本の男性からは、そういった声はあまりなかったので新鮮でした」

女性同士の繋がりや共感に快哉!

──日本での女性の立ち位置、“女性の生きづらさ”も描き込まれています。そんなメッセージが色濃く、でもサラリと練り込まれている上手さを感じました。

「そこはLEEの読者の方にも共感していただけるところかな、と思いますね。しかも女性同士の繋がり、最終的には女性が女性を救う、という展開が素敵で。真紀と美和子の年代は違いますが、2人の繋がりや共感に観ている方が勇気づけられたり、ワクワクしていただけたら嬉しいです」

──旦那の反応を見てみたい、とも思わされますよね。

「それは本当に知りたい(笑)! 実は、美和子に対して泣いてしまう、という男性が少なくないんですよ。オバさん嫌いの男性は多いですが、そういう固定観念を持っている方ほど、逆に感動するみたいです。美和子さんに対して“そんなことが……”と反省するようで、それがまた面白かったです!」

──昨今、“女性の生きづらさ”など、“おかしいぞ”と主張を込めた作品が増えている気がしませんか?

「MeToo運動やセクハラやパワハラを受けた女性が逞しく声を上げてくださったお陰で、“本当は嫌だよね、やっぱりみんな思っていた?”という流れになってきた空気は本当に嬉しいです。多くの女性が多少なりとも、そういうことを経験して来た中で、“でも社会ってそういうものなのかな”と思い込もうとしてきたけれど、“やっぱり本当はみんな嫌だった”と。実は、出演中の「相棒」の台本中でも、そういった、男社会の中で女がのし上がるとは、とか、強くなりたいと思う女性像を反映して下さっているのを感じます。その思いに応えられるよう、精一杯奮闘中です」

──篠原さんご自身も、真紀のように仕事と子育てを同時にする大変さを感じますか?

「悩ましいと思うことには、多々直面しています。まだ言われたことはありませんが、子どもって愛情を確かめるために“お仕事やめて”とか言ったりもする。だから日頃から分かりやすく“大好きだよ”と伝えるようにしています。仕事をすることに、男性は罪悪感を覚えることはないかもしれませんが、どうしても女性ってどこかで覚えてしまいますから」

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──ところで、いつ頃から女優を目指したのでしょう?

「中高が厳しい学校だったので、芸能の仕事がしたいと言える空気ではありませんでしたが、心の中ではずっと思っていました。木村拓哉さんが大好きで、“キムタクとキスシーンをしたい”と思い立ち、実はその頃、親に秘密でオーディションを受けたんです。そうしたら“オーディションがどうとか連絡が来ているけど?”と母が電話を受けてしまい、思わず動揺し、“え、何?気持ち悪い”と言って切ってしまって。“一体、私は何がしたかったんだ?”という無駄に恥ずかしい思いをしました。いまだキスシーンは実現していませんが(笑)」

──お芝居に対する欲が出たのは、どんなきっかけが?

「20代の頃はバラエティのお仕事もさせていただきましたが、とにかく共演者の方の名前が覚えられなくて(笑)。同時に受けていたお芝居のレッスンでは、セリフはすぐに頭に入るんです。あ、本当はこっちが好きなのか、と気づいて。段々と、もっとリアルな演技がしたい、自分が好きな作品に出たい、それはどんな監督の作品かなど意識するようになったのがきっかけです」

──作品としては、やはり『共喰い』ですか?

「はい、それが節目だったと思います。青山真治監督に、初めて指名で大きな役をいただき、北九州で過ごした約1ヶ月が夢みたいに楽しくて。あとは、死産を経験する妊婦を演じた「コウノドリ」というドラマも、私の中ですごく大きいです。“同じ経験をして、誰にも言えなかったけれどすごく救われた”という内容をはじめ、多数のコメントをいただいたんです。それまでは、楽しくてお芝居をしてきましたが、役者というお仕事が人の役に立てると実感できたことが嬉しくて。多くの方の心に届いたことにも感動し、本当に“役者”として頑張ろう、という気持ちを強くしました

 

来年も、既に話題になっている映画『女たち』で倉科カナさんとW主演されている篠原さん。「これまた女たちの話で、さらに心を抉るタイプの映画です」と語る篠原さんの、これからの活躍がますます楽しみですね。まずは、大プッシュ作『ミセス・ノイズィ』で、笑いながら心を熱くしてください!!

映画『ミセス・ノイズィ』

  • 2019年/106分/日本/配給:アークエンタテインメント
  • 監督・脚本:天野千尋
  • 出演:篠原ゆき子 大高洋子 長尾卓磨 新津ちせ 宮崎太一 米本来輝ほか
  • 12月4日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開

撮影/菅原有希子 メイク/渡辺順子 スタイリスト/山本杏那

映画ライター/映画評論家

Writer Profile

Chizuko Orita

LEE本誌でCULTURE NAVIの映画コーナー、人物インタビューを担当。Webでは「カルチャーナビアネックス」としてディープな映画人へのインタビューや対談、おススメ偏愛映画を発信中。他に雑誌、週刊誌、新聞、映画パンフレット、映画サイトなどで、作品レビューやインタビュー記事も執筆。夫、能天気な双子の息子たち(’08年生まれ)、2匹の黒猫(兄妹)と暮らす。

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