【書評】厳選4冊をご紹介! 『理由のない場所』、薄井シンシアさんの新作、珠玉のおとりよせ便とTwitterで人気の漫画「猫の菊ちゃん」
2020.07.10
「家族の喪失」が静かに綴られる物語
じわじわと感動する一冊
『理由のない場所』イーユン・リー【著】・篠森ゆりこ【訳】 ¥2200/河出書房新社
もし私たちが日々の生活の中でやり場のない悲しみに触れてしまったとき、その気持ちはどうやって取り扱えばいいのか――。今回紹介する小説は、そんな疑問の解決の小さなヒントになるかもしれない。
作者のイーユン・リーは1972年生まれのLEE読者世代の作家。『理由のない場所』は、彼女の実体験を元に描かれている。結婚後、2人の息子に恵まれて、子育てをしながら創作活動を行っていた彼女だが、実は長男を自殺で失っている。わずか16歳で自らの命を絶ってしまった息子と、彼女自身が「心の中で対話をする」という形で、この小説は繰り広げられていく。
反抗期だった彼と、そんな彼の少し生意気な態度をたしなめようとする親子間のやりとり。ちょっと完璧主義なタイプの息子と理屈っぽい母親との軽い口ゲンカは、そう珍しいものではないはず。お菓子作りが大好きだった息子の子どもの頃を思い出し、対話の途中に突然挿入されたりするのも、何かをきっかけに急に昔話を始めたくなってしまう、親らしい愛情表現だなと思って読んでしまう。とはいえこれらはすべて、筆者が想像上で組み立てたやりとりに過ぎない、というのがこの小説が持つ凄みなのだけれども。
筆者はこの物語を、息子を失ってから数週間後に書き始めたのだという。想像を絶する悲しみやショックを受けたときに、自分や、もう二度と戻ってこない息子との関係について「もう一度問いかける」、そして「書き出してみる」行為に驚くものの、彼女にとっては予想外の現実を受け入れるために必要だったのかもしれない。
家族の喪失というテーマを抱えながら、物語はいたって穏やか。大きなドラマや現実を超えた奇跡が起こることもなく、ただただ母親の、息子に対する愛情が淡々と綴られていく。そしてラスト、息子との対話の締めくくり方も、“何気ない親子の雑談の終わり”という感じで、読んでいるほうもすっと受け入れられてしまう。筆者が描く静かな世界にどんな思いを抱くのか、ページをめくって体感してみて。
LEEweb「暮らしのヒント」にて『育児書を捨てよ、子どもを見よ!』を連載中の薄井シンシアさんによる最新作。
『ハーバード、イェール、プリンストン大学に合格した娘は、どう育てられたか』薄井シンシア ¥1450/KADOKAWA
娘の紗良さんに「自分で生き抜く力」を身につけてもらうための、楽しさモリモリ子育てエピソードを33編収録。日々、答えの出ない子育てに向き合うのすべての方への気づきが満載。
外出や行動することにナーバスになりがちな今だからこそ、おうちで食べるものに楽しみを見いだしたい!
『日本全国まるごと おとりよせ便』たかはしみき ¥1300/集英社
スイーツから飲み物まで、全国のおとりよせ可能な62品をイラスト&文章で解説。どれもおいしそうで、食卓の雰囲気がぱっと盛り上がりそう。読んでいて気になったモノは、スマホですぐに注文できる2次元コード対応になっている作りもうれしい。
Twitterで公開されて大人気の漫画がついに書籍化!
『猫の菊ちゃん』湊文(そうぶん)¥1000/KADOKAWA
自称「おじいさん」と「おばあさん」の夫婦の元へやってきた、保護猫の菊ちゃん。引っ込み思案な性格だけれども、夫婦二人の暮らしの中に少しずつ溶け込んでいくように――。菊ちゃんの何気ないしぐさやワガママは、猫好きにはたまらないものが。そして小さな毎日を大切にしたくなる、心温まる一冊。
取材・原文/石井絵里
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