今年、ニューヨークで「乳がん」の遺伝子検査を受けました。「がん」って気になるけど他人事と思っていた私が、どうして「遺伝子検査」を受けることになったのか。ママはどうしても家族のこと、仕事のことで自分の体は後回しにしてしまいがちなので、私の経験をシェアさせてくださいね。
昨夏、乳がん検診で引っかかる
きっかけは、2019年夏に日本での一時帰国滞在中に受けた婦人科検診で再検査になったこと。毎年、触診での乳がん検診を受けていましたが、数年ぶりにマンモグラフィーと超音波の検査を受けると、「疑わしい」箇所があるとのことでした。
しかし、通知を受けたのが帰米直前。日本で再検査せず、ニューヨークに戻ることに。すると、生理前の乳房の張りがいつもと違うし、乳頭から白い分泌液が。娘はもう8歳で授乳は遠の昔に終わっているし、不安になったので病院に行くことにしました。
アメリカの厄介なところは、いきなり乳腺科のような専門医に予約を入れられないこと。まずは風邪でも診てもらう一般診療のドクターに予約を入れ、そこから乳腺科を紹介してもらいました。
ニューヨークで再びマンモグラフィーと超音波、ブレストスペシャリストと呼ばれる乳腺専門医の触診を受けると、「がん」は見つかりませんでした。最悪の事態も想像していたので、ホッと胸をなでおろしました。
遺伝子検査を勧められたのは、母が卵巣癌だったから
乳腺科では、家族の病歴も答えるのですが、私の母は20年近く前に卵巣がんを患い卵巣を摘出しています。その後は転移や再発をすることなく元気に過ごしていますが、女性ドクターがこう聞いてきました。
「遺伝子検査って知ってる?」
乳がん、卵巣がんは遺伝的要素があり、「家族に乳がん・卵巣がんになった人は30パーセントぐらい遺伝する」と。私は母が卵巣がんだったため、遺伝要素があるかもしれない、というのです。
説明で出てきたのが、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリー。お母さんが乳がん・卵巣がんで亡くなっているアンジーは、遺伝子検査で乳がん・卵巣がんの発症リスクが高い「BRCA1」という変異遺伝子が見つかり、将来の予防のために乳房と卵巣などの摘出手術を受けています。
なんか難しそうと思いましたが、ただ血液を取るだけでがん発症のリスクがどのくらいなのかわかるのはいいかもと思い、検査を受けることにしたのです。
緊張の検査当日
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遺伝子検査を行う病院の入り口。無機質な感じの看板に、ちょっと緊張・・・。
見慣れない「Genetic&Genomic Sciences」(遺伝&ゲノム科学)の文字に緊張した当日。遺伝子カウンセラーのリア先生が笑顔で出迎えてくれて、ちょっと緊張がほぐれました。
事前に祖父母のまでの家族の病歴などを答えていたので、リア先生はそれを元に病歴付きの家系図を作成。遺伝子検査とはなんなのか丁寧に説明してくれます。
遺伝子には配列があり、例えば正常なら「CAT」と並んでいるけど、変異がある場合は「XAT」と並びが変わっている。その並びが関わった遺伝子が、特定のがんに結びつくのがわかっていて、血液を取ることでその配列が変わった遺伝子がわかる検査だということを教えてくれました。
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リア先生がわかりやすい「CAT」という単語を使って、遺伝子が変異するとスペルが変わることなどを説明してくれます。
そして、たまに「KAT」と配列が変わっているけれど、まだどんな病気につながるかわからない遺伝子もあるそう。その「分からない遺伝子」はクエスチョンマークだけど「ネガティブ(陰性)」として分類され、もし1年後、5年後にどの病気に結びつくかわかったら連絡が来るそうです。
母が患った「卵巣がん」は「乳がん」に比べると罹患率が低く、遺伝的要素も多いこと。ただ、私の母が「変異した遺伝子」を持っていたために卵巣がんになったのか、変異遺伝子を持ってなくて偶然にがんになったのかは、母が遺伝子検査を受けないとわからないということでした。
今回の検査では乳がん・卵巣がんにつながる「BRCA1」「BRCA2」も含め37種類の遺伝子を検査することに。どの遺伝子もアルファベットで分かりにくく、何がなんのがんの可能性があるのか説明してくれましたが、本当全く頭に入ってきませんでした・・・。
採血前に検査の承諾書にサインをするのですが、多くの項目には「遺伝子検査の結果によって職場から解雇されない」など受ける側の権利が守られていることがわかりました。
対応策は何?
リア先生は、もし変異した遺伝子を持っていた場合についての選択肢も教えてくれました。
アンジーのように、乳房や卵巣を予防的に切除することも方法の1つ。しかし、乳房再建までには時間がかかること。それに、もし卵巣を切除した場合、私の年齢(40歳)でもすぐ更年期になり、どんな症状が出てどれくらい続くかは分からないこと。
そして切除の他の選択肢としては、年に1度の検診を半年に1度にしたり、セルフチェックを怠らないことだそうです。何を選択するにもメリット・デメリットがあり、私がどうしたいかだと思いました。
検査費用は249ドル
気になるのは、高額なアメリカの医療費のこと。残念ながら、私の保険では遺伝子検査がカバーされませんでしたが、ニューヨーク州では自己負担「249ドル」(約2万7000円)で遺伝子検査を受けられるとのこと。私は実費で受けることにしました。
ちょうど採血した数日後、娘と同じ学校のヨーロッパ出身の長身パパさんと電車でばったり会って世間話をしたら、なんとそのパパさんが遺伝子検査会社で働いてることが発覚!!!
遺伝子検査を受けた話をしたら、熱く語ってくれました。
「ニューヨークでは実費でもそんなに高くないから受ける人が増えているんだ。(どんな人が受けるの?)色々だよ、年齢も。君みたいに家族にがんを患った人がいる場合は、かなりの確率で保険がおりるからね。血液を取るだけで、将来のガンの防げるってすごいことだよね!いろんな病院をまわって検査を受ける人が増えるように話すんだ」と、検査会社も積極的に病院へアプローチしているようです。
遺伝子検査の結果
遺伝子検査を受けてから3週間後。結果を聞きに、再び病院へ。
リア先生の優しい笑顔にホッとします。
個室に入り、席に着くと「いいニュースですよ」と結果が書かれた紙を差し出してくれました。
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私の遺伝子検査の結果は8ページもありました。「Result」(結果)のところにはBRIP1という「Unknown」(分からない)遺伝子がありました。
今回、「BRCA1」「BRCA2」を含む37種類の遺伝子に変異は見つかりませんでした。
1つ見つかったのは、「Unknown」。配列は変わっているけれど、何のがんにつながるか分からない遺伝子でした。事前に説明通り、もし数年後、どんな病気につながるかがわかったら改めて連絡が来るそうです。
私が変異遺伝子を持っていないということは、娘にも私サイドからは遺伝していないこと。少し安心しました。
一般的になりつつある遺伝子検査
今回遺伝子検査を自分で受けてみると、ニューヨークでは一般的になりつつあるのを感じています。
昨年から、自宅で唾液を取って送るだけの「DNA検査」サービスのテレビCMが流れていたし、年末のホリデー商戦の時期には「ブラックフライデー」の割引価格も登場していました。
今までのように、検診や自覚症状が出てから病院へ行くというのではなく、遺伝子レベルで「病気」をいち早く発見し、対処していく時代になっているんだなと強く思いました。
10代から乳房のセルフチェックを
8歳の娘のために、家に買っておいてあった人形ブランド「アメリカン・ガール」が出版している「The Care & Keeping of You 2」(10歳以上の女の子向け)という本には、「Self-Exam How-to」(自分で検査する方法)として自分でできる簡単な乳房チェックの方法が、文章と絵で掲載されていました。
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アメリカの大人気ブランド「アメリカン・ガール」は女の子の体の変化や、生理のことども分かりやすく書かれた本を出版しています。この「The Care & Keeping of You 2」は10歳以上向け。10歳以下の女の子向けの「The Care & Keeping of You 1」もあります。
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10代での乳房セルフチェックのやり方が書かれたページ。大人にも役立つし、子供の頃からケアする習慣をつけておけば将来が安心ですね。
最初見たときは「10代でこんなこと習ったっけ?」と自分の中学、高校生時代を思い返しましたが、アメリカでは自分の体は自分でチェックする習慣をつけようとしているんですね。
今回の遺伝子検査で、改めて自分が健康であってこその毎日だ気づかされました。乳房のセルフチェックと毎年の婦人科検診は、絶対に忘れないようにしたいですし、これから体が変化していく娘がいろんなことを話しやすい雰囲気を作ってあげたいなと思いました。
もしこれを読んでいる皆さんの中に、検診を忘れて「まあ、いいか」って思っている方がいたら、ぜひ検診に行ってください!
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田辺幸恵 Sachie Tanabe
ライター/ライフコーチ
1979年、北海道生まれ。スポーツ紙記者を経て2006年にアメリカへ。2011年にニューヨークで長女を出産。イヤイヤ期と仕事の両立に悩みコーチングを学び、NPO法人マザーズコーチジャパン認定講師に。趣味は地ビール探しとスポーツ観戦。夫と娘(8歳)の3人家族。