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斉藤和義さん「いいことを無理に言わなくてもいいや、という気分です」

2020.02.08

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2020年に20枚目のオリジナルアルバムを発売するのにちなんで、タイトルを『202020』(ニーマルニーマルニーマル)と名づけた斉藤和義さん。キャリアの中でも節目となる記念すべき作品だが、どこか肩の力が抜けた作品だったのが印象的。

斉藤和義さん「いいことを無理に言わなくてもいいや、という気分です」

「今回のテーマは、平たくいうと“肩ひじ張らずに作ろう”。あまり頑張らず、歌詞もなにがなんでもいいことを言おうとしなくていいんじゃないか、と(笑)。思いついたものをこねくり回さずに演奏したかった。だから、今度のツアーを一緒に回るメンバーと“せーの!”でやってみたんですが、これがサクサクといいテイクが録れて、楽しかったなあ」

1曲目はあの名作ドラマ『傷だらけの天使』のテーマ曲で始まり、最後は斉藤さんが子どもの頃好きだったテレビアニメ『アンデルセン物語』のエンディングテーマ曲『キャンティのうた』で締めた。カバー曲の意外な選曲に、人柄と個性がにじみ出ていておもしろい。

「『傷だらけの天使』は前からギターでやったらおもしろそうだなと思っていて、肩慣らし的に最初に演奏してみたところ、ピタッとハマった感じ。『キャンティのうた』は片面にお話が1話分、もう片面に挿入歌が入ったレコードを買ってもらい、よく聴いていました。それを突然思い出し、音源を探したら、やっぱりすごくいい曲。作者を調べると『サザエさん』や『ムーミン』の曲も作った宇野誠一郎さんという天才によるものでした。宇野さんの作品をあらためて聴くと、ジャズ、サイケ、ロックなどさまざまな要素が詰まっているし、コード進行も凝っていることに感銘を受け、この曲で最後を締めよう、とすんなり決められました」

「いい曲をただ楽しくやりたい」と言いながらも、情報過多社会に対して警鐘を鳴らすような曲もある。

「それはねえ、警鐘じゃなくてグチですね。僕自身もスマホの画面、見すぎですもん(笑)。意識的にニュースをデトックスするほうが頭の中がクリアでいられる気がして。よほど大きなニュースはそれでも耳に入ってきますからね」

斉藤さんは、コンスタントにアルバムを発表し、大量のライブをこなし、そのうえ他プロジェクトにも積極的に参加と“勤勉”なアーティストだ。でも、最近、少し心境の変化があるという。

「今年に入ってから、“俺はこんなに働いてどうするんだ?”と思い始めています(笑)。もう少しペースダウンしてもいいかも、と思うんです。そう言いながら、ライブが大好きだから、結局忙しくしてしまうんでしょうけどね」

現在53歳。はたから見るとマイペースに活動しながら、時流にも常に乗ってきたように感じる。でも、振り返ると30代は焦燥感に駆られ、あたふたしていたそうだ。

「37、38歳くらいは中途半端な年齢なのか、どこかモヤモヤしていましたね。だけど、40歳になったとき“はい、僕は中年です!”とスッキリしたというか、もうかっこつけなくていいや、と若さときっぱり距離をおけて楽になりました。50歳を過ぎ、いよいよどうでもよくなっています(笑)。夜中にラーメン食べたくなったら、我慢せずに食べちゃいます」

かっこつけなくなった斉藤さんだからこその大人のかっこよさが詰まった新作。この先の人生に光を照らす曲の数々に耳を傾けて!

Profile
さいとう・かずよし●’66年、栃木県生まれ。’93年、『僕の見たビートルズはTVの中』でデビュー。翌年リリースの『歩いて帰ろう』が大ヒット。以後、『歌うたいのバラッド』『ずっと好きだった』など誰もが知る曲を次々と世に送り出している。ライブを大切にするミュージシャンとしても有名で、2020年も、埼玉県川口市を皮切りに全52公演のツアーを開催。

『202020』

ツアーも一緒に回るメンバーと一気にレコーディングした、躍動感のあるバンドアレンジが魅力的な約2年ぶり、20枚目のオリジナルアルバム。ドラマ主題歌『アレ』、映画主題歌『小さな夜』、アニメ『ちびまる子ちゃん』エンディング曲『いつもの風景』のほか、『傷だらけの天使』などカバー曲もあり、バラエティ豊かな一枚。(スピードスターレコーズ)


撮影/名和真紀子 ヘア&メイク/市川摩衣子 スタイリスト/佐々木健一(Style.LAB) 取材・文/中沢明子

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