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森絵都の人気小説『カラフル』をもとに、バンコクを舞台にした青春ヒューマン・ミステリー 他1編

2019.10.07

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“生き直す”ため謎解きに挑む青春ヒューマン・ミステリー

『ホームステイ ボクと僕の100日間』

© 2018 GDH 559 CO.,LTD.ALL RIGHTS RESERVED

昨秋、日本で予想外の大ヒットを飛ばしたタイ映画『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』の製作陣が再結集し、絶好調ぶりを示した。

森絵都の人気小説『カラフル』をもとに、舞台をバンコクに移し、タイの文化的背景を映し込み、大胆な翻案で独自の世界観を確立している。ハラハラと目が離せないミステリー色が強く、映像に力があり、原作ファンも素直に別物として夢中になれる、味わい深いおもしろさだ。

死んだはずが遺体安置所で息を吹き返し、恐ろしくなって逃げ出そうとした“ボク”に、管理人と名乗る何者かが「当選しました」と告げる。記憶をすべて消したうえで、男子高生ミンとしてその肉体に“ホームステイ”して人生に再チャレンジできる、というのだ。ただし100日
以内にミンの自殺原因を突き止めないと、魂は永遠に失われる。ボクはミンとして見知らぬ家族と暮らし、見知らぬ友達のいる高校へ通い始め、そして優秀な美少女パイと出会い一目で恋に落ちる。

生き返ったことに喜ぶよりぎこちない両親、ミンを明らかに嫌う兄、何も残っていないミンの部屋……。高校では大した反応もされず、目立つ存在ではなかったらしい。ボクは周囲の反応でミンの人となりを探りながら、自殺の原因を求めて奔走する。すべては憧れのパイとの恋を実らせ、ミンとして生き直すため。その奮闘は時にコミカル、時にサスペンスフル、時にダークファンタジーになり、観る者のいろんな感情のツボを押す。やがて明らかになる衝撃の事実、客観的にミンの人生を眺めたからこそ気づかされる周囲の思いとは――。自分のことでいっぱいいっぱいだった若かりし日、今さらながら親や友の明かされなかった胸の内に、きっと誰しも思い当たる節があるだろう。ミンが味わう現実の厳しさや大人になる痛みは少し悲しく切なく、どこか懐かしく胸を締めつける。ミンを『バッド・ジーニアス』のティーラドン・スパパンピンヨー、パイを国民的アイドルBNK48のチャープラン・アーリークンが演じる。

(新宿武蔵野館ほかで公開中、以後全国順次公開)

 

料理がつなぐ一流シェフとアスペルガー症候群の青年の友情

『トスカーナの幸せレシピ』

©2018 VERDEORO NOTORIOUS PICTURES TC FILMES GULLANE ENTRETENIMENTO

トラブルで傷害事件を起こした元三ツ星レストランのシェフが、更生プログラムでアスペルガー症候群の若者らに料理を教えることに。最初は投げやりだったが、絶対味覚を持つ青年と出会い変化が。

凸凹な2人が相棒関係を結んでゆくユーモラスな展開、不器用だがいい奴なシェフと自立支援の女性との淡い恋、たくさんのドキドキとホロリが詰まった、心温まる感動作。

(10月11日よりYEBISU GARDEN CINEMAほか順次ロードショー)


取材・原文/折田千鶴子

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