再開発が進む日本橋に新たに誕生するランドマーク「コレド室町テラス」。蔦屋書店が参考にしたことでも知られる台湾の「誠品生活」が中華圏以外で初出店するほか、もう一つ台湾で注目を集めているレストランが日本初上陸します。それが「富錦樹台菜香檳(フージンツリー タイツァイシャンピン)」。
もともとアパレルのセレクトショップから始まった企業が手掛けるレストランで、これまでのタイワニーズレストランにはない雰囲気のいい空間で食事を楽しめると「ルイ・ヴィトン・シティ・ガイド」でも必ず訪れたいレストランとして紹介されたほど。
今回は「富錦樹台菜香檳」を手掛ける「富錦樹(フージンツリー)グループ」の代表であるジェイ・ウーさんにインタビューを実施。台湾のライフスタイルシーンを変えた彼に、お店のことをはじめ、様々なことを伺います。
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「富錦樹グループ」代表のジェイ・ウーさん。
街全体の雰囲気も大切にしたいから非商業エリアに出店
ーー「富錦樹グループ」のお店がある「富錦街(フージンジエ)」は、もともと米軍兵の居住エリアです。なぜ商業エリア以外に出店したのでしょうか?
商業エリアに出店すると商売は成り立ちやすいですが、たくさんあるお店の中に埋没してしまうデメリットもあります。誰も気づいていない場所にお店があったら話題になるかな、と思ったのが大きかったですね。
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緑に溢れ、ゆったりとした空気が流れる富錦街の街並み。
店作りにおいては街全体の日当たりや空気感、緑などの環境も大事にしています。台北に希望に叶うエリアが2つあり、富錦街は台北の市街地からもわりと近いし、駐車がしやすい。それに僕がこの街に住んでいて、いいところなんです。だからここに決めました。
ーー最初はアパレルのセレクトショップ「Fujin Tree 355」から始められました。ジェイさんがショップをオープンするまで、台湾の方のファッション感度はどのようなものでしたか?
「Fujin Tree 355」を始めたのは、僕も日本人の妻も台湾で自分の好きなテイストの洋服や雑貨を買うことができなかったから。台湾の特に男性はファッションに興味を持たなくていいという教育を受けてきました。最近でこそ解禁する方向になってきましたが、学生は基本的に坊主ですし、兵役もあるから20歳になっても坊主。そういう背景もあって、ファッションを楽しむ土壌がありませんでした。
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「オーラリー」などの日本ブランドやヨーロッパのブランドに加え、オリジナルアイテムも揃える「Fujin Tree 355」。
ただ、ここ5〜6年で様々なお店が増え、男女ともに感度は上がってきたと思います。センスもだいぶよくなってきているので、ファッションに関しては伸びしろを感じています。
ーー富錦街に「ビームス」や「ユナイテッドアローズ」、「ジャーナルスタンダード」なども誘致されています。なぜ、日本のセレクトショップだったのでしょうか?
銀座はスーツ姿のビジネスマンが多いのに、原宿には奇抜なファッションの若者がいる。日本はエリアが違うとスタイルも変わるくらい選択肢が多く、様々なテイストが共存しているのがおもしろい。日本のファッションはパリやロンドンに並ぶくらい世界でもセンスがいいですし、アジアの人々にもっと広まってほしい。それに選択肢が多い方が、より美的感覚も磨けると思いませんか。
これまでにないタイワニーズレストランが誕生した理由
ーーファッションからスタートされて、飲食業にも進出した理由を教えてください。
「Fujin Tree 355」や日本のセレクトショップがオープンしたことで、富錦街にどんどん人が来てくれるようになりました。でもお茶をする店がないから目的が済んだらお客さんはすぐに帰ってしまう。もっと長く滞在してほしいので「Fujin Tree CAFE」という最初の飲食店を作りました。
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「Fujin Tree CAFE」も、街の雰囲気に溶け込むナチュナルな雰囲気でありながら都会的なエッセンスを加えた内装にしています。
「Fujin Tree CAFE」にもお客さんがたくさん来てくれて、次はどんなお店を作ろうかと考えていたところ、海外から訪れたゲストの言葉を思い出しました。僕は彼らをローカルのレストランや屋台に連れて行くのですが、すぐ飽きられていたんですね。そして口を揃えたように「もう少しおしゃれな台湾料理のレストランはないの?」と言われていました。確かに当時、いい雰囲気の中で、おいしい台湾料理をお酒とともに楽しめるレストランって台北にはほとんどありませんでした。そういう店は僕以外にもニーズがあるのではないかと思ったのが「富錦樹台菜香檳(フージンツリー タイツァイシャンピン)」誕生のきっかけです。
ーー「富錦樹台菜香檳」は、台湾料理をシャンパンやワインとともにゆっくりと味わう、それまで台湾になかったスタイルのレストランですね。
インバウンドの方にもっと台湾料理を楽しんでもらいたい気持ちが出発点ですが、台湾人の食レベルを上げたい思いもありました。それと世界から見た台湾料理も意識しています。日本料理だったら寿司やラーメンは世界のどこにでも食べられます。タイ料理のトムヤムクンやガパオは、誰しも知っているでしょう。でも台湾料理で思い浮かぶものはなんですか? きっとルーローハンとか腸詰めくらい。でも私たちがよく食べているものは、それらばかりではありません。ローカルから見る台湾と、世界が見ている台湾は違います。
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「富錦樹台菜香檳」の内装はレストランといえども格式張った感じはなく、のんびり料理が味わえそう。
だからこそ台湾料理を世界に広めるチャンスだと思って「富錦樹台菜香檳」は内装から料理に至るまで、ニューヨークや東京、ロンドンでも通用するように心がけています。
台北と同じ環境で店作りができると思い「コレド室町テラス」に出店
ーー世界進出の第一歩として日本を、その中でも「コレド室町テラス」を選んだ理由を教えてください。
「誠品書店」が中華圏以外に初出店しますし、日本橋は「富錦樹台菜香檳」に合った空気感。「コレド室町テラス」の目の前には「マンダリン オリエンタル」があります。台北のお店の近くにも「マンダリン オリエンタル」があり、台北と近い環境でお店ができるかな、と思いました。それに緑の溢れるテラスに出店したいという理想も叶うことができました。料理は台湾そのままの味。日本の方に受け入れられるかどうか、楽しみにしています」
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「コレド室町テラス」に誕生する「富錦樹台菜香檳」の内観イメージ。
ーー子連れで「富錦樹台菜香檳」訪れた際に、食べてほしいメニューはありますか?
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「木の実と水蓮(山菜)の炒めもの」
「木の実と水蓮(山菜)の炒めもの」はシャキシャキで、日本にはない食感です。木の実とのバランスが絶妙でクセになるはず。
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「台湾風揚げ出し豆腐」
外側はパリッとしていますが、中は卵豆腐なのですごく柔らかいのが「台湾風揚げ出し豆腐」。見た目は日本の揚げ出し豆腐に似ていますが、中身は別物。おもしろい食感だと思います。
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「台湾カキと揚げパンのニンニクソースがけ」
「台湾カキと揚げパンのニンニクソースがけ」は、ベビーオイスターの柔らかな食感と、揚げパンの少し固い食感のコントラストが楽しいです。
辛いイメージがあるかもしれないですが、いずれもほとんど辛さはなく、やさしい味わい。お子さんも食べやすいはずですよ。
今の最終的な目標は、街のハブになるホテル作り
ーーアパレルや飲食だけでなく、フローリストにマッサージ店と、様々な業態を手がけています。今後進出したい分野はありますか?
今は「富錦樹台菜香檳」の世界進出を第一に考えています。東京のお店が定着できたら、ニューヨークやロンドンにも出店したい。世界中にタピオカドリンクのお店はありますが、世界進出している台湾レストランはありません。僕らがその分野を開拓していきたいです。
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「コレド室町テラス」に出店する「富錦樹台菜香檳」にはテラス席もあります。
ーー最後にジェイさん自身の目標を教えてください。
ずっとトータルでライフスタイルの提案をしたいと考えていて、ホテルを作りたいですね。宿泊者以外も訪れやすい、快適なロビーにおいしいコーヒー屋さんがあって、その都市一番のおいしいレストランがあって、セレクトショップも花屋もマッサージ店もバーもあって。街のランドマーク的なホテルを思い描いています。観光客と地元の人が一緒に楽しめ、交流することでいろんなアイデアが生まれる。クリエティビティが活発になるような場所を目指しています。
現実的な話をすると台北の物件は高騰し続けていて、なかなか希望通りの物件が見つかりません。でもチャンスはいつ来るか、わかりません。富錦街に様々な業態の店を出して街作りをしているのも、いずれホテルを作るチャンスを得たとき、そこにショップをぎゅっと集められる準備の一環なんです。
お話をうかがったのは、ジェイ・ウーさん
1977年、台湾・台南市出身。「富錦樹グループ」代表。日本やカナダへの留学、台湾での総合商社勤務の経験を持つ。「台湾カルチャーを世界へ、日本カルチャーを台湾に」をコンセプトに、2012年に「富錦樹グループ」を設立。2012年にアパレルのセレクトショップ「Fujin Tree 355」をオープン。以降、ファッションや飲食業、マッサージサロンなどを展開し、台湾のライフスタイルを変えた火付け役として知られる。
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津島千佳 Tica Tsushima
ライター
1981年香川県生まれ。主にファッションやライフスタイル、インタビュー分野で活動中。夫婦揃って8月1日生まれ。‘15年生まれの息子は空気を読まず8月2日に誕生。