新米教師の姿から人間関係のキモと「食」について学べる物語
生活すること、誰かとかかわること、そして命を「食べて」生きていくこと。20代の新米教師の目を通じて、日々おざなりにしがちなこれらと向き合わせてくれるのが「グリーン・グリーン」という小説だ。
主人公の翠川真緑(みどりかわ みどり)は都会生まれの都会育ち。“失恋した時に食べたおにぎりが美味しかった”のをきっかけに、縁もゆかりもない田舎の農林高校で国語教師になることを決意。赴任₂年目の今は、生徒たちにグリーン・グリーンと愛称をつけられながらも、故郷とは違う景色の美しさに感動し、下宿先でいただく滋養たっぷりなごはんの味わいに感謝しながら働く日々。でも鶏の解体授業を見学中、そのリアルさにショックを受けて失神してしまったりと、まだまだ前途は多難ぎみ!
そんな真緑の前に、佐和子という生徒が現れる。それまではおとなしくて手のかからない生徒だと思っていた佐和子の、ある行動をきっかけに、真緑は彼女のことをきちんと見ていなかった自分に気づく。そして小さな村の人間関係の中により深く入っていくことに――。
都会からの移住者と地元の人との関係性の難しさが取り沙汰されることも多い昨今。そして“当たらず障らず”の人付き合いがよしとされる今の世の中では、村の重鎮的な存在にも果敢に斬り込んでいく真緑の姿は、少し理想的すぎるかもしれない。でも作品の中で彼女が見せてくれる小さな勇気や行動力は、そこが田舎であれ都会であれ、自分にとって大切な居場所を作るためには欠かせないものだと教えてくれる。そんな周囲との人間関係へのヒントはもちろんのこと、舞台が農林高校ゆえの「食育」というテーマがふんだんにちりばめられているのも大きな魅力。忙しいLEE世代にとっては、ふっと息抜きになりつつも、自分たちの毎日の暮らし方についてさりげなく示唆を与えてくれそう。実は連作小説シリーズの2作目にあたる今作ですが、前作に引っ張られすぎずに独立した物語として楽しめます。真緑のキャラクターに魅せられた人は、シリーズ1作目を読んでみるのもおすすめ!
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取材・原文/石井絵里 本誌編集部
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