(※開館当初は撮影NGだったようですが、今は3脚・フラッシュ撮影以外は撮影OKとありました。)
HARA Model Railway Museum
「鉄道模型の神様」による膨大なコレクション、世界最大級ジオラマ、鉄道模型の神髄がここに
原鉄道模型博物館に行って来ました
夏休みの或る日。JR横浜駅東口から徒歩5分の場所にある、「原(はら)鉄道模型博物館」へ次男(小5)・末っ娘(小2)・私…の3人で行って来ました。世界的に有名な鉄道模型製作・収集家である原信太郎(はらのぶたろう)氏の、唯一無二にして希少、世界各地の膨大な量のコレクション(約6,000輌)の中から、博物館所蔵は約2,500輌、その中でも常時約1,000輌を展示しているそうです。鉄道マニアしか楽しめなさそう…とか、電車好きでもないし…、電車に詳しくないし…など、電車に興味ない勢は、鉄道マニアの頂点を極めた熱量の凄さに温度差を感じるかも?尻込みするかも?と、入館前から想像してしまいますが、予備知識ゼロでも楽しめる&ただの模型とは一線を画す「原(はら)模型」ならではの精緻な造りと細部までのこだわりを目の当たりにして、非・鉄道マニア勢も思わず唸ること間違いなし!の博物館なのです。
入館チケットは事前購入制。博物館の受付ではチケットが販売されていません!!WEBサービス「e+(イープラス)」またはファミマ店内のマルチコピー機でチケットを購入してから訪れましょう。同じビルの1階に、ちゃんとファミマがあります!!入館して初っ端から驚いたのが、館長が「公益資本主義」提唱者であり『21世紀の国富論』著者であり、コクヨ創業者のお孫さんでもあるベンチャーキャピタリストの原丈二(はらじょうじ)氏!!なんと稀代の鉄道マニア・原信太郎氏はお父様だったのですね…!!初代館長はもちろん原信太郎氏ですが、95歳で永眠された後は、ご長男である原丈二氏が2代目館長に就任されたそうです。お父様もお父様ならばご子息もご子息…というか、やり手の血は脈々と連綿と受け継がれているのですね…。
LEE100人隊の隊員さんも行かれています!
TB haruちゃんの過去記事はこちらです↓
同期でOGのびすこちゃんの過去記事はこちらです↓
【Part.1】
原模型のはじまり&こだわり。原模型の中でも代表作を展示!
第一展示室
原信太郎氏が小学6年生の時に、屋根のトタン板や針金を材料に初めて制作した「初めて作った鉄道模型」も展示されています。この博物館のマークにもなっている「一号機関車」です!(車体の上側がグレー、下側が赤紫色の車両)
会期は今年の1月29日で終了してしまいましたが、明治時代、営業運転されることがなかった幻の豪華列車、JR九州の「或る列車」の特別企画展が開催されていたようです。
【Part.2】
模型から知る鉄道。テーマ展示&ライブラリー
第二展示室
原信太郎氏の所蔵する膨大な模型を通して鉄道の歴史や技術を伝える、「語る模型」と題された展示室です。原信太郎氏の模型作りのための図書も収蔵。原信太郎の鉄道のスケッチなどから世界各国の鉄道について知識を深めることが出来るコーナーです。
日本の蒸気機関車の模型がズラリと!!原鉄道模型博物館の創設は、鉄道発祥の地・横浜に!日本最初の鉄道は1872年に開設された官設鉄道で、徒歩では半日かかる距離である新橋~横浜間を1時間ほどで結んだのがはじまりとのこと。
【Part.3】
展示プロムナード
「原信太郎と鉄道史」
第三展示室に行く前に。原信太郎氏が見て来た鉄道を紹介するコーナーです。原信太郎氏の年表と鉄道史を並行して解説されています。年表は、信太郎が生まれる前(鉄道の夜明け)/鉄道少年時代(鉄道大発展期)/大陸へ(鉄道成熟期・恐慌・戦争)/戦争を超えて(戦後を支えた鉄道)/世界にはばたく(高度経済成長期からの世界鉄道新時代)…の順番に展示パネルが。
原信太郎氏の鉄道好きは3歳の頃から。田町駅や三田の市電車庫を出入りする電車を眺めていたそうです。4歳からお祖母さまの許しで舶来の鉄道おもちゃを買い始め、6歳の時に慶應義塾幼稚舎に入学。小学5年生(11歳)の時にはカメラを携えて超特急「燕」に乗って関西一人旅を決行、12歳で清水トンネル第一号通過列車乗車、初めて模型(8000形)を制作。鉄道技術習得のために14歳の時に独学でドイツ語とフランス語を勉強し、18歳で通学用に初めて自動車(ダットサン)を購入、シャングリ・ラ鉄道を創立しています。26歳の時に終戦、東京へ。英語のできるドライバーとしてGHQで働いていたそうです!30歳で慶應義塾幼稚舎の同級生・黒田靖之助氏の妹・美津子氏((株)コクヨ創始者の娘さん)と結婚。32歳の時に(株)コクヨ入社、大阪に転居。開発技術担当として在職中、世界初の立体自動倉庫やオフィス家具自動一貫製造ラインなどを開発し、300以上の技術特許を個人で請願・取得・維持、独自の技術の感性で会社の生産性向上に貢献。コクヨの仕事で海外の技術導入を任された原信太郎氏は、1956年~60年代初めにかけ副社長とともに数回の欧州出張に出かけることに。これが原信太郎氏の世界旅行の始まりであり、以後95カ国を飛び回ることになったようです。世界の鉄道の技術革新を自分の目で見る旅を重ねながら、各国の鉄道ファンや模型技術者とも積極的に交流、いつしか「世界的な鉄道愛好家」としてその名を轟かせるように。コクヨ退職後は、若手研究者の海外論文発表のための助成をする財団法人原総合知的通信システム基金設立。所蔵模型数約6000両。これまで訪れた国は、延べ約380ヶ国!!撮影したスチール約10万枚。ムービーフィルム16mm、8mm、VTR合計約440時間。鉄道書籍・関連コレクションも多数所蔵。2012年に鉄道発祥の地・横浜に「原鉄道模型博物館」が開館、館長に就任され、2014年に永眠されています。
【Part.4】
「フォトライブラリー」と「ヴィンテージ・コレクション」唯一無二のコレクションの数々。一番切符&希少なアンティークなど。
第三展示室
第三展示室では、原信太郎氏が撮影さいた13,000ページに及ぶアルバムの、国内外の車輌写真で、今では既に廃線となった鉄道、廃車となった車輌の姿も多数展示されています。
「ヴィンテージ・コレクション」コーナーでは、原信太郎氏所蔵の中でも特に希少なアンティーク模型や一番切符を、収集の際の数々のエピソードとともに紹介。
↓こちらはお祖母さまに買ってもらったという、ライオネル社の模型。価格は495円。当時の首相の月給が450円。今の価格にして、なんと500万円の模型です…!!原信太郎氏の裕福な子ども時代を象徴するようなエピソードですね。
「一番切符」の収集にも情熱を燃やした原信太郎氏。開通日に本人が海外でどうしても並べない時は、奥様が3日かけて並んで「一番切符」を取ったというエピソードも。(←本人には内緒。奥様の思いやりでありサプライズプレゼントだったそう…)
↓左は20世紀初頭にドイツのケルン・ボン鉄道が重役15人に記念品として贈るため、ドイツの鉄道模型会社・メルクリン社に発注した15台(45輌)のうちの1台(3輌)で、原信太郎氏はこれを1950年代にスイスで購入したとのこと。右はメルクリン社が20世紀初めに製造した、ヴッパータール市の懸垂電車模型。電気で動く模型が出始めた頃のもので、配電盤には脱線時のショートを防ぐための電球がついているもの。1980年代に原信太郎氏は国際電話をかけっぱなしでオークションで落札したものだとか。
パリ~イスタンブール間の直通便として名を馳せた豪華列車「オリエント急行」は戦後の航空機利用の増加や、東欧・西欧の情勢を受け60年代には運行をやめて、1977年5月20日の便で廃止に。同じ5月に原信太郎氏は家族5人で乗車したようです!!
【Part.5】
原信太郎氏、創造の場
「原模型の秘密」、模型工房
このエリアでは実物の鉄道プレートやコントローラーが展示されているコーナーを抜けると…、
原信太郎氏の自宅にある模型工房を再現したコーナーも!!
ここからは、原信太郎氏の鉄道模型「原鉄道模型」が一般の鉄道模型と一線を画すあらゆる要素・秘密について①~⑥まで解説が!!まず、①本物と同じ「鉄のレールと鉄の車輪」。一般的な鉄道模型は真鍮製のところを、原鉄道模型は本物の鉄道と同様に鉄製の車輪とレールを使用。車輪がレールをこする音や継ぎ目を通過するときの音がよりリアルに!
秘密その②は「惰力走行」。一度加速してから電気を切り、それまでの加速で得た力のみでほぼ等速で走行する状態(惰力走行/惰行)を模型でも実現するため、ギア・電気回路・モーター・軸受のボールベアリングなど何重にも工夫を重ね試行錯誤の末に、模型での理想的な惰力走行が実現!「原鉄道模型」の真骨頂とも言われる大きな特徴です。
秘密その③は「架電集線」。一般の鉄道模型では、レールから電気を取り込むレール集電が一般的なところを、原鉄道模型では、架線に流れる電気をパンタグラフなどを使って取り込み集電してからレールに流す集電方式!!パンタグラフも本物同様に機能し、取り込んだ電気はモーターなどの機械を通って最終的には車輪を通してレールに流れて行く仕組みです。
秘密その④は、「実物どおりの台車の構造」です。大型の模型かつ現実の鉄道にはない急カーブを走らせる場合、カーブで車体が振られて脱線するリスクが。脱線リスクを低減するために原鉄道模型に搭載されたのがカーブの衝撃を緩和する「揺れ枕」。台車に組み込んでカーブ走行時に車体が傾くよう、軸箱も上下に稼働するように精密に設計されているそうです。
秘密その⑤は“実際に機能する模型”、「実物どおりの動力伝達機構」。スイス発祥の特殊な伝達機構「ブッフリ式」は、車体に固定したモーターの回転を上下動する車輪にスムーズに伝達、モーターを車輌の床上に設置するため、大型のモーターを積むことが出来る優れた機構で、1950年代末から欧州でブッフリ式電気機関車Ae4/7形を見る機会を得た原信太郎氏は、その複雑な機構を模型で再現することに挑戦、試行錯誤の末に完成させちゃいます。
最後に秘密その⑥は、「実物のディテールの再現」。たとえばリベット(鋲)はプレス加工では鋲の質感がくっきりしないため、なんと1本1本手作業で打っているそうで、極小の鋲を通して裏から蝋付けしているとのこと。2,000本近くものリベットを打ったこともあるのだとか。「或る列車」のステンドグラスはレーザープリントでガラスに色付けする手法を編み出し、見事に再現、装飾性の高い展望デッキの手すりはロストワックスで緻密加工して作り込まれています。手描きが困難な極小極細の文字や模様は真鍮板をエッチング抜きして形を作ってから車体に貼り付けることによって課題をクリア→再現に成功させています。ボンネットの扉を開けないと中が見えないような内部の機械も部品も忠実に作られ、ただならぬこだわりが感じられます…!
【Part.6】
「小さな本物」が走行!原鉄道模型博物館の大目玉!一番ゲージの室内ジオラマとして世界最大級!
いちばんテツモパークジオラマ
原鉄道模型の大目玉が、世界最大級ジオラマとして名高い「いちばんテツモパークジオラマ」。約30m×約10mの、テニスコートがすっぽり入る大きさ。1周約70m、レール総延長は約450m!
ここを走るのは、レール幅45mm、縮尺30~32分の1の、鉄道模型の中では最も大きい「一番ゲージ」。ゲージとは、左右のレールの感覚・軌間を意味します。
線路は6本!本物の鉄道で使われている同様の技術を搭載することにより実現した、模型のリアルな走りと、鉄の車輪・鉄のレールを採用した重量感のある「ガタンゴトン…」という本格的なサウンドを聴くことが出来ます。
精緻な街並みは、原信太郎氏監修のもと、鉄道模型の老舗「天賞堂」さんが半年かけて完成させたものだそうです。パリやリヨンの駅をモデルにした駅舎やヨーロッパ風にデザインされた街並みを外国の機関車や電車、日本の路面電車などなどが走行しています。このジオラマのレールは、本物の鉄道レールを作るメーカーによる特注品なのだとか!
夜の風景。建物の灯りもリアルです…!蛍の光が飛び交う、カヌーに乗っている人々のエリアもありましたよ。
列車が通ったあとジオラマ内の信号が自動で青から赤に変わる工夫も!列車がブレーキをかける部分では、ブレーキがかかると車輪が削られ鉄のカスで錆びる様子を再現するため、線路下の石が赤く塗られています。
機関庫にはトーマスとその仲間達が!!小さい子達は見つけると嬉しいですよね。ちゃんと向きを変えられるようになっているんです。
私達は利用しませんでしたが、細部まで目を凝らして見ることが出来るよう、オペラグラスの無料貸出サービスもありました◎まるで「ウォーリーをさがせ」のごとく、オペラグラスを使って「原館長」、「ネッシー」「雪男」「あやしい男たち」「ロッククライマー」「オオサンショウウオ」などを探すミッションも!
【Part.7】
横浜の今昔を再現
横浜ジオラマ
いちばんテツモパークジオラマを抜けると、横浜ジオラマも!ここでは一番ゲージではなく、HOゲージが走行しています。
かつての横浜駅(今の桜木町駅)周辺の様子や馬車道、中華街エリアなどの横浜の街並みを再現。線路幅は16.5mm。この横浜ジオラマでも昼→夜→朝へと時間が経過し、朝のラッシュ時の喧騒などがリアルに表現されています。
Nobutaro Hara, a famous railroad model maker & collector…
鉄道模型の神様でありレジェンド、原信太郎氏の「原鉄道模型」
もはや鉄道「模型」の域を超えた「小さな本物」
2012年7月10日に開館した原鉄道模型博物館。ここでは、この博物館が受賞した各賞について紹介されていました。
原信太郎氏の、生涯をかけて鉄道に注がれた愛と情熱…、限りなく本物と同様の技術を搭載して作られた「原鉄道模型」は、模型の域を遙かに超越し、「小さな本物」との呼び声も高いそうです。その精巧で丹念な作り込みは、まさに総合芸術…!「ここまでやるか!?」と、一種狂気に近い鉄道愛と創作物、コレクションの数々に、ぜひ思う存分唸りまくってみてください…!ここまで本物に限りなく近いのに、やっぱり呼び名は「模型」なのか…と既に違和感が…( ̄∇ ̄) もっと別の呼び名はないものか…!?と歯痒さも。そして、原信太郎氏は、ただの鉄道マニアじゃなくもはや作家であり芸術家。ゆえに「鉄道マニア」の呼び名にも違和感…。神がかり的な何かを感じています。原鉄道模型博物館は公式HPにてハイシーズン営業日などの営業日情報などを発信されていますので、気になる方はぜひチェックしてみてくださいね◎(※回し者ではありません)
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TB - はな
主婦 / 神奈川県 / LEE100人隊トップブロガー
41歳/夫・息子(13歳・10歳)・娘(8歳)/手づくり部・料理部・美容部/大雑把な山羊座のO型。好きなものは器、アメリカンヴィンテージ、宝塚歌劇、マンガ、ミナペルホネン、オールドマンズテーラー、GU、ユニクロなど。インテリア・ファッションなどLEEで勉強中。両実家とも遠方で3人の子育てに日々奮闘。ドタバタと過ぎて行く日々の中でも「今」を大切に、小さな幸せを拾い集めながら成長して行きたいです。
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