ひとくちに頭痛と言っても、偏頭痛、緊張型頭痛など、いくつかのタイプにわかれます。しつこい頭痛に悩まされている人は、まず、自分の頭痛がどのタイプか把握することからはじめましょう!
タイプが分かれば、予防や緩和の対策を取って、うまく付き合っていくことも可能に。脳神経外科医の清水俊彦先生に、頭痛のタイプや薬の飲み方、病気が隠れている可能性のある頭痛などについてうかがいました。
慢性頭痛のタイプを知り、自分に合った対処法を
頭痛には検査をしても特に病変が見つからない「一次頭痛」と、何かの病気の症状として起こる「二次頭痛」がありますが、片頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛といった慢性頭痛はすべて一次頭痛。
「一次頭痛は、適切な方法で痛みをコントロールできれば命にかかわることはありません。」と清水先生。
「とは言え、頭痛がQOL(生活の質)を下げることは、頭痛持ちの人ならすでに経験済みのはず。頭痛のタイプによって予防法や対処法は異なるので、基本的な頭痛の知識を身につけ、自分に合った対処法を取れるようにしましょう」
ズキンズキンと痛む 片頭痛
女性にいちばん多い慢性頭痛。頭の片側(または両側)や後頭部がドクンドクンと脈打つように痛む発作性の頭痛で、吐き気やおう吐を伴う場合も。ストレスや疲労、月経などで脳内物質のセロトニンが急激に減少し、それによって脳血管が拡張、血管周囲の三叉神経を刺激することで起こります。このとき脳は異常な興奮状態にあり、音や光、においなどの刺激に過敏になっているため、それらが悪化の引き金になることも。
どんな痛み?
- ズキンズキン、ドクンドクンと脈打つように痛む
- 吐き気やおう吐、下痢を伴うことがある
- 香りや光、音の刺激に敏感になる
- 体を動かすと痛みが増す
締めつけられる痛み 緊張型頭痛
頭の側面や後頭部、首すじにかけて締めつけられるように痛むのが、緊張型頭痛の特徴。頭や首、肩、背中にかけての筋肉が緊張し、血管が収縮して血流が悪くなると筋肉に老廃物が蓄積。それが筋肉内の神経を刺激して痛みを引き起こします。
筋肉のこわばりが原因のため、体への負担が増す午後から夕方にかけて痛みが出る場合が多く、重く鈍い痛みがダラダラと続きます。めまいや倦怠感、眼精疲労などを併発する人も。
どんな痛み?
- 頭が重い、または締めつけられるように痛む
- 午後から夕方4時頃にかけて症状が出る
- ふわふわするようなめまい、ふらつきがある
- 肩や首、背中に強いコリがある
片頭痛と緊張型の合併型も……
一般的には片頭痛、緊張型頭痛は原因も症状も違い、まったく別物ととらえられていますが、最近では両方が混ざった合併型タイプの人も。
「自分がどちらなのかよくわからない場合は、頭痛の専門医に診てもらって」と清水先生。
どちらの慢性頭痛も程度の差はあるものの、痛みの水面下では脳の異常な興奮が起こっています。
過度なストレスや不規則な睡眠、運動不足による血行不良は、どちらの頭痛にも悪影響。ストレスをためすぎず、生活リズムを整えて脳への刺激を抑えることが合併型の人にとっては有効な予防策なのです。
目の奥に激しい痛み 群発頭痛
片側の目の奥がえぐられるように激しく痛むのが特徴。季節の変わり目など特定の時期に起こります。季節の変わり目で体内時計が乱れ、その情報が三叉神経に伝えられ、その結果、目のすぐ後ろにある内頚動脈という太い血管の壁が炎症を起こして痛みが発生するというメカニズム。近年では、神経に潜在する帯状疱疹ウイルスが発症の引き金になることもあるとも考えられるように。従来は男性に多い頭痛でしたが、近年では女性でも増加中。
どんな痛み?
- 春先や秋口など季節の変わり目に発症する。1~2カ月ほど毎日続く
- 就寝後、1~2時間すると片目の奥がえぐられるように痛む
- 痛いときに動いたり頭を振ると痛みが軽減する
- 鼻水や鼻詰まりなど風邪に似た症状が同時に出る
片頭痛タイプの人は
肩こりや生あくびなどの予兆を感じた時点で!
頭痛の数日前~数時間前に、首や肩が異常にこる、生あくびが出るなどの予兆が。人によっては直前に目の前にチカチカ、ギザギザした光(閃輝暗点)が出ることも。痛みが出てから頭痛薬を飲んでも効果がないので、予兆があったらすぐ服用して。
緊張型頭痛タイプの人は
痛み始めた直後に飲むのがベストタイミング
片頭痛は頭痛の予兆があった時点で飲むのがいいのに対し、緊張型頭痛は痛みが出始めたらすぐに飲むのがベスト。そのタイミングで飲めれば、痛みは比較的すぐに治まります。午後から夕方に痛みが出るので、その時間帯に注意!
とはいえ・・・頼りになる鎮痛剤ですが、服用には注意も必要。
「鎮痛剤を多用しすぎると、脳が痛みに対してだんだんと敏感に。薬が効いている間は痛みが治まるものの、切れると少しの刺激でもすぐ痛みを感じる『薬物乱用頭痛』になってしまうケースも。いわば鎮痛剤の飲みすぎによる薬物依存状態で、月に10回以上鎮痛剤を飲むようになったら危険。慢性頭痛は表面上の痛みを取ってやり過ごすのではなく、その性質をきちんと見極めて、根本から治していかないとダメなのです」(清水先生)
片頭痛タイプの人は
カフェイン入り飲料で脳血管のむくみをオフ
片頭痛になると脳血管が拡張し、血管壁の隙間から水分が漏れ出してむくみや倦怠感を併発。コーヒーや紅茶など利尿作用のあるカフェイン入りの飲料に砂糖を少し入れて飲むと、脳血管壁が収縮し、漏れ出していた水分が血管内に戻り、尿として排出されるため、むくみも取れ症状が軽くなります。
緊張型頭痛タイプの人は
椅子に浅く座りいい姿勢を維持
前かがみの猫背姿勢は首、肩、背中の筋肉に負担大。筋肉がこわばって血流が悪くなったり、この負担が頚部の神経を介して脳の三叉神経を刺激し、頭痛の引き金になることも。仕事中など長時間座る際は、椅子に浅く座り、背中の自然なS字カーブ(良姿位)を保って。
片頭痛タイプの人は
動くと痛みが増すので安静に
脳の血管が拡張すると痛みが増すので、動いたり温めたりせず、こめかみを冷やすと痛みがやわらぎます。また、そのまま寝てしまうと、一気に副交感神経が優位になって血管がますます広がるので×。空腹で血糖値が下がると血管は広がるので、何かひとくちでも食べて、血糖値を上げてから頭痛薬を飲み、休んで。
緊張型頭痛タイプの人は
胸鎖乳突筋をほぐしてリラックス
首を支えているのは、耳のすぐ後ろの出っ張りから伸びる筋肉「胸鎖乳突筋」。ここが緊張して血行が悪くなると緊張型頭痛の原因に。指を軽くすべらせるようにやさしくマッサージすると痛みの緩和に。痛む前にやっておけば予防にも。また、筋肉の緊張をほぐすため、温めるのも○。
病気が隠れているかもしれない頭痛はすぐ病院へ!
二次頭痛は器質性頭痛とも呼ばれくも膜下出血や脳腫瘍など、命にかかわる病気のサインである場合も。
いつもの頭痛と様子が違うと感じたらためらわず脳神経科を受診して。
脳腫瘍
寝起きに頭痛や吐き気を感じても体を動かすうちにラクになる、頭全体が重い、また、吐き気や手足のまひ、ろれつが回りにくいなどの症状を伴うときは、脳腫瘍の疑いが。
ホルモンの中枢である脳下垂体にでき、乳汁分泌を伴い、不妊の原因にもなる「プロラクチン産生腫瘍」という良性の脳腫瘍では、群発頭痛に似た痛みが起こる場合も。
くも膜下出血
脳血管が分岐する部分に動脈瘤ができ、だんだん大きくなって破裂する病気。後頭部をバットで殴られたような突然の激烈な痛みで、吐き気やおう吐を伴うことも。
大出血の前触れとして少し出血する際に軽い頭痛があり、風邪や片頭痛と誤認されることも。1週間以上、寝ても覚めても頭が痛く、血圧も高めに。
髄膜炎脳炎
風邪などの感染症を患った際、脳表面や深部にウイルスが侵入し、炎症を起こす病気。脳全体が腫れて脳圧が上がることで頭痛や後ろの頚部痛が発生。
せきをしたり、はなをかんだだけで、脳全体がグンと下に引っ張られるように激しく痛むのが特徴。
知っておきたいキーワード 脳過敏性症候群
一般的に、年齢を重ねると頭痛は起こりにくくなっていきます。
ところが、頭痛は治まっても耳鳴りやめまい、不眠、不安感やイライラといった原因不明の心身の不調に悩まされるようになる人も多く、これには過去の慢性頭痛が影響しています。
頭痛で興奮した脳に対し、その都度興奮を鎮める対処をせずそのままにしておいた結果、少しの刺激にも過剰に反応する脳に変わってしまったのです。頭痛自体は治まっても、これは生活しづらくなるのは必至。将来のためにも頭痛は放置せず、しっかり治しておくべき!
次回は「天気痛」について解説!気圧の変化で体調が悪化する人は要チェックです。
イラストレーション/松元まり子 取材・原文/遊佐信子
※商品の価格は本体価格(税抜き:2017年9/7発売LEE10月号現在)で表示しています。
詳しくは2017年9/7発売LEE10月号に掲載しています。
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