「話し方はテクニック。ポイントさえつかめば、誰でも感じよく話せるようになるんですよ」
そう教えてくださったのは、NHK松山放送局キャスターなどを経て、話し方やコミュニケーション、マナーを指導するKEE’Sを設立された野村絵理奈さん。コツを押さえて練習すれば、どんな人も上手になれるのだとか!
そこで第2回目は、初対面から打ち解けるまでの会話のポイントを伝授。受け答えで困りがちな「話しにくい相手」のタイプ別攻略法も要チェックです!
打ち解けるまでの"会話の内容"のポイント
1 入り口となる話題は表面的なものが吉
「親しくなる前は、お天気のような表層的な話題が無難。相手も警戒することなく、受け答えができます。ママ同士だと子供の話題が出ることもあると思いますが、その際はほめること限定で。ただし、身体的なことは相手が気にしている場合もあるので、『ぽっちゃりしていてかわいい』ではなく、『元気そう』など、言い方に注意を」
OK 天候など、"その場の状況"について
(例:対隣人…近くの店情報や住んでいて便利と感じたことなど職場…自分の仕事の進捗状況や、相手の仕事内容習い事で…自分の目標や課題、相手の練習法など)
NG 政治、宗教、職業、名前の由来、出身地など"個人情報"にまつわるもの。その場のコミュニティと無関係な話題
(例:近所やママ、趣味の場で、仕事の話をいきなりするなど)
2 一問一答ではなくしりとり会話で話題を深める
「趣味は何ですか?」「落語です」「では、好きな食べ物は?」「うなぎです」。そんな一問一答方式では、会話が弾まず、親近感もわきにくいもの。
「ぜひ試してほしいのが、相手の答えの一部や連想されることを次の話題にする"しりとり会話"。お互いをより深く知ることができるうえに、話題が次から次へと広がるため、話が尽きません」
例えば下の会話例。相手が落語に加え食べ歩きも趣味で、うなぎ好きという共通項も発見。この後、お気に入りの店を紹介し合うなどすれば、距離がぐっと縮まります!
会話例
Aさん 「最近落語にはまっていて、月2くらいで寄席に行くんです」
Bさん 「確か浅草に有名な寄席がありますよね。 そちらにも行きますか?」
Aさん 「行きますよ。浅草はおいしいお店が多いので そこに寄るのも楽しみで」
Bさん 「おいしいお店、多そうですね! どんなところに行かれるんですか?」
Aさん 「うなぎ屋さんで気に入っている店があって。 Bさんは、うなぎお好きですか?」
Bさん 「私もうなぎ大好きで。銀座によく行くお店があるんです」
3 「 質問する」&「自分の情報を話す」のバランスを意識して
会話でもうひとつ気をつけたいのが、「質問する」と「答える」のバランス。
「質問攻めにすると、相手は『自分から何か聞き出そうとしているのでは?』と警戒します。もし相手が話し好きで、自分が話す隙がないのなら、『私は落語が好きなのですが、今はまっている趣味はありますか?』のように、先に自分の情報を提示してから質問すると、スムーズに話が進みますよ」
初対面トークどうすればいい?話しにくい相手のタイプ別に攻略!
話し方のコツがわかったら、次は会話が難しい相手への対処法をマスター。初対面トークに困りがちな、よくいるタイプ別に、実践的な会話の切り返し術を教えます。
会話が続かない無口タイプ
POINT
- 波長が違うなら、ペースを相手に寄せる
- 話す機会を奪わないよう、焦らず相手の言葉を待つ
- 相手の言葉尻をキャッチし、「しりとり会話」を
会話例
(職場の休憩時間、無口そうな年上女性と一緒)
自分 「いつもお昼ごはんはこのあたりで召し上がるんですか?」
相手 「ええ、この近くですね……」
自分 「……そうなんですね。どんなお店ですか?」
相手 「……角のそば屋さんによく行きます」
自分 「おそば、お好きなんですか?」
相手 「そうですね……」
自分 「私もおそば、好きなんです。そのお店では、どのメニューがおすすめですか?」
相手 「私はカレーそばをよく食べます」
自分 「いいですね! おそば屋さんのカレーそばって特別おいしいですよね」
「無口に思える人は、あなたと会話のペースが違うだけかも。相手の話すスピードに合わせ、答えが返ってくるまで待ったり、ゆっくりうなずいたりすることも大切です。また、相手の言葉尻をキャッチし、その言葉を使って質問すると、さらに情報を引き出せます」
噂大好き!詮索タイプ
POINT
- 自分が話したことをよそで言いふらされる危険性があるので、教えたくない情報は抽象的な回答で
- あからさまな拒否はNG。感じよく受け答えを
会話例
(ご近所のおばさまとゴミ捨て場などで会って)
相手 「ご主人、毎朝早くに出勤なさるのね。どんなお仕事されているの?」
自分 「ごく普通のサラリーマンなんです」
相手 「でも、ネクタイされていなかったわね。マスコミか何か?」
自分 「いえいえ、そうではないんです」(感じよく、笑顔で)
相手 「どちらの会社?」
自分 「都内ではなくて、横浜のほうなんですよ」
相手 「……(会話が弾まないことを察して)あらそう。では、またね」
詮索好きな人は、自分が与えた情報をほかの人に言いふらす危険性が大。
「自分の身を守るためにも、教えたくない情報は具体的に回答しないでOK。社名を聞かれたら勤務場所で返すなど、曖昧に答えるのがおすすめです。とはいえ、明らかな拒絶を示したり、『教える必要ないと思うんですけど』などとキレたりすると、それを話題にされてしまう場合も。なので、あくまでも感じよく、笑顔で受け答えするように心がけましょう」
初対面からグイグイ距離感近すぎタイプ
POINT
- 相手のことをよく知らない段階で、個人的な情報を伝えるのは控えるように
- 距離をおきたい相手なら、感じのいいエクスキューズで"予防線"を張っておく
会話例
(児童館の赤ちゃんサークルで)
相手 「この近所に住んでいるの?」
自分 「はい、歩いて10分くらいのところで」
相手 「もしかして、〇丁目あたり? だとしたら一緒~~!」
自分 「うちは〇丁目じゃないんです」
相手 「いずれにしてもすぐそばよね! 子供も同い年だし、一緒に遊ばせたいな~。ご近所ママとよくランチ会をしてて今度誘いたいし、連絡先交換しない?」
自分 「ぜひ。ただ、実はこの子の上に4歳の長男がいて。毎日バタバタしていて、すぐに返信できないかもしれないけど……」
親しくなりたいなら、相手のペースに乗るのも一案。ただし個人情報を伝えるのは慎重に。
「連絡先を交換する場合は、まめにやりとり&参加できない理由を先に伝えておくのがベター。あなたが距離をおいたとしても、相手は不快感を持たず、納得してくれるはず」
上から目線マウンティング タイプ
POINT
- 相手の価値観にのせられず、自分の価値観に引き寄せて会話を進める
- 付き合いを続ける必要がある場合、相手の価値観を受け入れ、ほめ言葉も添えて
会話例
相手 「Aちゃんはどんなお稽古しているの?」
自分 「うちは週に1回スイミングだけ行かせているの」
相手 「スイミングだけなの〜!? うちはスイミングのほかに、ピアノと英会話とバレエも習っているのよ。バレエは〇〇バレエ団で、ピアノは個人レッスン、スイミングも〇〇クラブだから、お月謝が大変で! Aちゃんのところはいくら?」
自分 「近所の〇〇だから、お手頃なのよ。通い始めたばかりだけど、水泳って健康によさそう ね。それにしても、一流の先生に習えるなんてスゴイ!どんなことをしているのか、詳しく聞かせてほしいな」
「相手の価値観にのって競おうとすると、疲れるだろうと思います。それより、自分の価値観に引き寄せ、さりげなく話の方向を変えてしまうのがベター。職場や子供関係など距離をおけない人の場合、相手を認め、時々ほめ言葉を添えつつ、適度に会話に付き合って」
「まずはできるところから始めてみましょう。最初はぎこちなくても、続けているうちに自然と身につくようになります」
次回は、読者アンケートで多かった初対面トークのピンポイント悩みに、Q&Aでお答えします。
撮影/藤澤由加 イラストレーション/カツヤマケイコ 取材・原文/村上早苗
詳しくは2017年4/7発売LEE5月号に掲載しています。 [最新号] 試し読み・定期購読はこちら
この記事へのコメント( 0 )
※ コメントにはメンバー登録が必要です。