東京都美術館開館100周年記念
【吉瀬美智子さん】 アンドリュー・ワイエス展「身近な情景を慈しんだ画家の世界を、寄り添う声でナビゲート」
2026.06.07
Culture Navi
カルチャーナビ : 今月の人・今月の情報
身近な情景を慈しんだ画家の世界を、寄り添う声でナビゲート
吉瀬美智子さん

50代を迎え、今もみずみずしい魅力を放つ俳優・吉瀬美智子さん。開催中の「アンドリュー・ワイエス展」ではナビゲーターを務めます。
「ワイエスの絵画は知れば知るほど深い意味が見えてきます。私自身、音声ガイドのナレーションを通じて彼の人生や絵の奥にあるストーリーに触れ、見方が大きく変わりました」
20代の頃はアートや展覧会が好きで、海外の美術館にも足を運んでいたという吉瀬さんですが、音声ガイドは初めての挑戦。
「実は私自身、昔から音声ガイドを頼りに鑑賞するという経験がなく、思い返せば損をしていた気がします。作品についてよくわからないまま、『見た』ということだけで満足してしまい、アート鑑賞が流れ作業のようになってしまったことがあります。そんな体験から、今回は観る方の妨げにならず寄り添うようなナレーションを心がけました。絵の前に立ち止まり、解説に耳を傾ける数分間で、より作品に入り込み深い部分に触れていただけたらと思います」
奥行きのある声の解説は、作品と親密になれる導き手。それだけでなく、吉瀬さん自身のたたずまいもまた、静謐なワイエスの作品世界と響き合うものを感じさせます。
「ワイエスは、身の回りの日常を描き続けた画家です。大事なものがすぐそばにある、自分を幸せにすることが身近にある。そういう点は、今の私にも共通するところかもしれません。家が大好きですし、自分の美意識に合うもの、好きなものはどんどん取り入れて、暮らしに還元するようにしているんです。趣味のいいショップのインテリアを参考にしたり、おいしいごはん屋さんのメニューを自宅でまねてみたり。そうすると、おうちが好きなものだけに囲まれた、居心地のいい空間に近づいていきます。ただし……」
と、吉瀬さん。いたずらっぽく笑って、言葉を続けました。
「そこに、子どもが驚くようなものを持ち込んでくるのよね! 謎のぬいぐるみを『なぜそこに?』って場所に飾ったりして(笑)」
そんな本音で一瞬にして場を和ませるところも素敵。吉瀬さんは、二人の娘を持つ母でもあります。9年前の本誌インタビューでは、俳優業のかたわら乳幼児を抱え、毎朝のお弁当作りなど完璧に家事をこなす様子が窺えました。
「いやぁ、すごいですね。あの頃の私を褒めてあげたい。多分すごく頑張っていたのだと思います。でもね、そうすることが好きだったから、きっと無理はしていなかったな」
子育て真っ最中だと「自分の時間が持てない」「アートに触れる余裕がない」と、世間に置いてきぼりにされたような悩みを抱えがち。“吉瀬先輩”にそう打ち明けてみると、晴れやかな答えが返ってきました。
「自分時間を持たなきゃ、好きなこともしなきゃと、焦って無理をするのも、かえってよくないように思います。小さなお子さんがいるとき、その瞬間にしかできないことってあるじゃないですか。めいっぱい向き合って、その時期すべきことに一生懸命集中するのも、かけがえのない経験だと思うんです。私も、あの頃頑張っていた自分を後悔していないし、好きなことをしていた!と感じます。アート鑑賞など自分の好きな趣味を楽しめるタイミングはいつだって訪れるし、自分次第だと思いますよ」
PROFILE
きちせ・みちこ●1975年2月17日、福岡県生まれ。モデルとして雑誌・CM等で活躍後、2007年に俳優に転身。ドラマ『LIAR GAME』『ブラッディ・マンデイ』などで注目される。近年の出演作に、映画『平場の月』、ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』など。現在、日曜劇場『GIFT』(TBS系)に出演中。
Instagram:michikokichise
X:kagayakurecipe
公式サイト:https://www.flamme.co.jp/actress/michiko_kichise/
『東京都美術館開館100周年記念 アンドリュー・ワイエス展』

20世紀アメリカの国民的画家、アンドリュー・ワイエス(1917〜2009年)の没後日本初となる回顧展。身近な人々と風景を緻密な筆致で描き続けた彼の作品を、窓や扉など“境界”を示すモチーフに着目して紹介。《クリスティーナ・オルソン》(1947年)など、静謐な画面からワイエスの精神世界と詩情が滲み出す作品に浸って。7月5日まで東京・上野の東京都美術館にて開催。
『東京都美術館開館100周年記念 アンドリュー・ワイエス展』の公式サイト
Staff Credit
撮影/木村 敦(Ajoite) ヘア&メイク/山下景子 スタイリスト/道端亜未 取材・文/久保田梓美
こちらは2026年LEE7月号(6/5発売)「カルチャーナビ」に掲載の記事です。
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