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イッタラ「アアルトベース」誕生90周年の新作発表会をレポート!暮らしの中で息づく名作の物語

  • 佐々木はる菜

2026.02.28

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IITTALA(イッタラ)「アアルトベース」展示会の様子

フィンランドを代表するデザインブランド、イッタラ(IITTALA) 。
その中でも高い人気を誇る「アアルトベース」が、誕生90周年を迎える今年2026年、新作を発表します。

今回、その特別展示会の取材で駐日フィンランド大使館へ行ってきました。
当日は、駐日フィンランド大使をはじめ、来日したイッタラのクリエイティブディレクターも登壇。
新たなコレクションの発表にとどまらず、ブランドが大切にしてきた価値観や、これから見据える未来についても語られる、印象深いひとときとなりました。

気になる新作の最新情報とその魅力、そして会場で感じたイッタラの世界観と共に、ますますこのブランドが好きになった理由をお届けします!

世界に愛される北欧デザインの王道、 イッタラのアアルトベース

日本でも大人気のイッタラは、1881年の創業以来、日常に寄り添う美しい器やインテリアを作り続けてきました。

「シンプルで洗練された美しさと長く使い続けられる実用性を兼ね備えたデザインは世界中で愛されており、生活をより便利で楽しいものにしてくれます。
フィンランドでは、イッタラ製品のない家を探すほうが難しいと言われているほど。まさにフィンランドのライフスタイルそのものです」
(タンヤ・ヤースケライネン駐日フィンランド大使)

イベント冒頭の挨拶で、そんな風に語ったタンヤ・ヤースケライネン駐日フィンランド大使。
会場はなごやかな雰囲気に包まれました。

IITTALA(イッタラ)「アアルトベース」誕生90周年/新作発表会の登壇者
今回のイベントに登壇された皆さん。 右から ペッカ・サルミさん(フィスカース ジャパン株式会社 ジェネラルマネジャー) タンヤ・ヤースケライネンさん(駐日フィンランド大使) ヤンニ・ヴェプサライネンさん(イッタラ クリエイティブディレクター) 椎名エミリーさん(フィスカース ジャパン株式会社 マーチャンダイジングマネジャー)

アアルトベース誕生90周年を記念した新作コレクション

アアルトベースは、言わずと知れた世界で最も有名なガラスベースのひとつ。
近代建築の巨匠アルヴァ・アアルトによって1936年にデザインされ、フィンランドの湖や自然を思わせる有機的なフォルムが特徴です。

その誕生90周年を記念し、イッタラは2026年の年間テーマとして「AALTO 90」を掲げ、新たなコレクションを展開します。

ガラスに命を吹き込み、一つひとつ異なる表情を生む

「Aalto Bubble Vase」

その第1弾として、まず2026年3月4日に発売するのが「Aalto Bubble Vase」。
“ガラスそのものに命を吹き込む新たな姿”を表現したコレクションです。

「Aalto Bubble Vase」
アルヴァ・アアルト コレクション ベース バブル クリア  左から120mm/160mm/201mm

伝統的な吹きガラス技法を用い、溶けたガラスの表面にソーダを施すことで生まれるという、内部の気泡。
近くで眺めると泡の浮かび方はひとつひとつ表情が異なり、静けさと躍動感の両方が感じられて、時間を忘れて見入ってしまう美しさがありました。

「Aalto Bubble Vase」の内部の様子

<商品情報>
商品名:アルヴァ・アアルト コレクション ベース バブル クリア
発売日:2026年3月4日(水)予定
サイズ:120mm/160mm/201mm
価格:¥33000/¥46200/¥41800(すべて税込)
取扱店舗:イッタラストア、イッタラ公式オンラインストア、卸売取扱店


世界6都市の表情をまとうアニバーサリーコレクション

「Aalto City Vase」

そして2026年8月5日に数量限定で発売される「Aalto City Vase」は、世界6都市をテーマにしたコレクションです。
アニバーサリーイヤーのために特別に開発された、虹色にきらめく”ラスター仕上げ”のガラスを採用。それぞれの都市をモチーフにした6種類のカラーが、各都市およびその国・地域に限定して展開されます。

「Aalto City Vase」

日本では、東京をイメージした「ラスターライラック」が登場。
淡い桜の色合いから、夜にきらめくネオンの光まで、伝統と未来が交差する東京の街を表現したそうです。
それぞれのベースの底面には「AALTO 90 TOKYO」という文字とシリアルナンバーが刻印されるという特別感も!
角度や光の加減によって表情が変わり、こちらもまた、ずっと眺めていたくなる魅力がありました。

Aalto City Vaseの中で、東京をイメージしたカラー「ラスターライラック」
アルヴァ・アアルト コレクション Tokyo ベース 160mm ラスターライラック

<商品情報>
商品名:アルヴァ・アアルト コレクション Tokyo ベース 160mm ラスターライラック
発売日:2026年8月5日(水)
価格:¥79200(税込)
カラー:日本国内ではTokyo ベース ラスターライラックのみ展開
取扱店舗:イッタラストアの東京各店。東京以外のイッタラストアでもお取り寄せ可能。
※CAFE AALTO 新丸ビルにて数量限定で販売予定
※2026年9月2日(水)からはイッタラ公式オンラインストアおよびscopeオンラインショップにて数量限定で販売予定


素材から美しさを生む、ヤンニ・ヴェプサライネンの想い

最初は、90周年記念の新作をいち早くこの目で見られることが何よりの楽しみでした。
でもイベントを振り返った時に一番心に残っているのは、イッタラのクリエイティブディレクター、ヤンニ・ヴェプサライネンさんが語った、アアルトベースへの想いです。

IITTALAのクリエイティブディレクター、ヤンニ・ヴェプサライネン
イッタラ クリエイティブディレクター ヤンニ・ヴェプサライネンさん

ヤンニさんは、JW AndersonやSimone Rocha、THE ROWなど、名だたるラグジュアリーファッションブランドの第一線で国際的に活躍したのち、2023年にイッタラに加わった人物。
彼女自身も「なぜファッション業界から、歴史あるガラスウェアのブランドへ?と聞かれることも多い」と話す、異色の経歴の持ち主とも言えます。

私はどちらも、マテリアルから自由に美しさを創り出す場だと捉えています(ヤンニさん)

毛糸や生地を選び、手を動かしながら服をつくっていく世界と、溶かしたガラスに息を吹き込み、手で形を整えていくガラスファクトリーの空気。
一見まったく異なるように見えるふたつの場所に、彼女は同じ感動を見出したそうです。
そう語るヤンニさんの表情は生き生きとしていて、当時の工房の光景が、今も鮮やかに心に残っていることが伝わってくるようでした。

自分の使命はデザインを通して感動を与えること。
そして、「本当に美しいものは、時を超え、未来を切り開く力がある」という信念を持っていること。
それらを通してイッタラの新しい時代を作っていきたい、という言葉。

彼女の力強いお話を間近で聞けたことは、心揺さぶられる体験でした。



アアルトベースが乗り越えてきた、時間の重み

アアルトベースは、今では「イッタラの象徴」として世界中で愛されていますが、実はその評価にたどり着くまでに、およそ50年という長い時間がかかったそうです。

1936年、アルヴァ・アアルトがヘルシンキのレストラン「サヴォイ」のためにデザインしたこのベースは、当時主流だった装飾的なデザインとはあまりにも異なり、最初は理解されませんでした。
世界各地で紹介されても反応は厳しく、「美しくない」と酷評される時代が続いたといいます。
それでも作り手たちは、このデザインの価値を信じ続けました。
そして1984年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)での展示をひとつの転機に、ようやくその美しさが広く認められるようになったのです。

1936年当時描かれたという、アアルトベースのラフ画
プレゼンテーションでは、1936年当時描かれたという、アアルトベースのラフ画も見せていただきました

アアルトの世界は”芸術品”ではなく、日常の中で使われ、息づき、呼吸するものです。

 そしてアアルトベースはイノベーションの象徴でもあります。
 歴史は大切にしますが、そこに縛られてはいけない。
 先見性を持ち、勇気をもって前に進むこと。
 時を超えるデザインは、そうした姿勢から生まれるのだと思います。
 
 私自身もこの価値観を大切にしながら、未来へ向けて挑戦を続けて行きたいと考えています
(ヤンニさん)

このお話を聞いて、私の中でアアルトベースの見え方が変わった気がしました。
広く愛されてきた「名作」というだけではなく、評価されなかった時代があり、それでも信じ続けた人たちがいて、ようやく今の姿がある。
実は長い時間、たくさんの挑戦を引き受けながら生き残ってきた存在だったと知り、目の前に並ぶベースから、静かで美しいだけではない、強さが立ち上がってくるように感じました。

展示会に並ぶアアルトベース

手と時間がつくる、美しさと強さ

そしてイベントの最後に、会場の画面にアアルトベースが工房で作られる映像が映し出されました。

フィンランドのイッタラガラス工場の様子を映す動画
現在もフィンランドのイッタラガラス工場で、職人の手による吹きガラス製法で一つひとつ作られており、完成までには、7人の職人が関わり、12の工程、1100°Cの高温、約10時間もの時間が必要なのだとか!

燃え盛る炉から出てくる真っ赤に溶けたガラスが、ぐにゃりと溶けながら、ゆっくりと形を変えていく様子。
それを扱う職人さんたちの、力強く、それでいて驚くほど繊細な腕の動き。
画面越しにも熱と緊張感が伝わってくるようで、まるで短編映画を観たかのように引き込まれました。
今まで完成品として目にしてきた、あの静かで洗練された器の背景に、これほどのエネルギーと手仕事があること。
そして挑戦を恐れず、先進的なデザインが時代に受け止められる日を信じながら、長きにわたり真摯にものづくりと向き合ってきた方たちの存在。
その積み重ねが、今のアアルトベースにつながっていることを実感し、しばらく言葉が出てきませんでした。

90周年という節目は、ただ過去を振り返るための記念ではなく、これから先も、クラフトマンシップと創造性を大切に歩み続けるという、イッタラの静かで力強い意思表明のように感じられました。
そんな姿勢そのものが、時を超えて愛され続ける理由なのだと思います。

同時に、ヤンニさんのお話や映像を通して、私自身も、過去に感謝し今を大切にしながら、未来に向かってしっかり歩んでいきたい、そんな勇気までもらった気がしています。

花が生けられたアアルトベース

北欧デザインの定番として、私たちの暮らしにすっかりなじんでいるアアルトベース。
今回、その歴史と「今」に触れたことで、なぜ世界中で長く愛され続けてきたのか、その理由に少しだけ近づけた気がしました。

「どんな花も受け止め、花を生けなくても美しい」と言われるその佇まい。
慌ただしい日々の中でふと目に入ったとき、どこかに飛び回っていた心が、そっと自分のもとに戻ってくる。
そんな存在として、アアルトベースをまずは自分のために迎えてみたいと思っています。

佐々木はる菜 Halna Sasaki

ライター

1983年東京都生まれ。小学生兄妹の母。夫の海外転勤に伴い2022年からの2年間をブラジル、アルゼンチンで過ごす。暮らし・子育てや通信社での海外ルポなど幅広く執筆中。出産離職や海外転勤など自身の経験から「女性の生き方」にまつわる発信がライフワークで著書にKindle『今こそ!フリーランスママ入門』。

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